【天皇賞・秋(日曜=28日、東京芝2000メートル)】豪華メンバーの第158回天皇賞・秋が目前に迫った。ワグネリアンの回避で3世代ダービー馬対決はお預けになったが、それでも最大の注目は昨年のダービー馬レイデオロになるだろう。管理するのは秋盾を5度獲得している藤沢和雄調教師(67)。1週前追い切りの“不安”を霧散させた名伯楽は、心身ともに充実の4歳秋を強調して大一番に臨む。
先週の火曜(16日)にワグネリアン回避の報が東西トレセンを駆け巡ったのもつかの間、翌17日の美浦トレセンでは、1つ年上のダービー馬レイデオロに“黄信号”がともった。南ウッドコースでの1週前追い切り。スムーズな加速で直線に向いたレイデオロに騎乗していた五十嵐(雄祐=騎手)が突如として手綱を押さえて減速し、帰り際の向正面出口付近では下馬して引き揚げるシーンがあった。
騒然となる調教スタンド。その後、歩様の確認と診療所でのレントゲン検査を経て無事が判明し、改めて「出走に問題ない」ことが藤沢和調教師から発表されたが…。情報が錯綜したその間には、栗東トレセンで話を伝え聞いたルメールが天皇賞に向けたテレビインタビューを断るなど、“やはり回避か?”と様々な臆測が飛び交った。
それもこれもレイデオロのネームバリューと注目度の高さゆえ。ドバイ遠征(GIシーマクラシック=4着)後の休養を挟んだ秋初戦のGIIオールカマーを快勝した同馬の立ち位置は、まさに古馬戦線の主役だからだ。
問題のあった17日午後、藤沢和厩舎ではレイデオロに再度慎重な歩様チェックが行われたほか、追い切りのVTRを騎乗した五十嵐ら数人のスタッフがコマ送りで凝視して「ミスステップでバランスを崩したもの」(五十嵐)とノープロブレムを再確認。翌18日朝には坂路を4ハロン63・5―15・0秒と元気に駆け上がった。
「馬場が悪くてバランスを崩し、違和感を感じて(五十嵐が)止めたんだろうけど、大事には至らなくて本当に良かった。その分(翌日に)坂路でも速めを乗ったしね。最終追い切り(24日予定)はルメールでしっかりやりますよ」と同師。
「春はもうひとつ結果が出なかったが、前走がいい競馬。ドバイは流れが遅くてかかったけど、夏を越してずいぶんと落ち着きが出て競馬が上手になっている。疲れもなくレース後の回復が早いし、2000メートルだってまったく問題ない」と、GII神戸新聞杯(1着)からGIジャパンC(2着)に直行した昨年とは違う“盾取り”に照準を定めた経緯を説明した。
14日のGI秋華賞で牝馬3冠を達成したアーモンドアイも、レース当週は追い切りコースを当日朝になって急きょ、南ウッドから坂路に変更。翌日以降は一日も馬場入りせず、一部で“不安説”すら流れたが、それも杞憂に終わったばかり。今度はレイデオロが調整の誤算を吹き飛ばし、本物の強さを見せつける番なのかもしれない。
※藤沢和厩舎6度目の制覇へ=今でこそ主流のひとつになった3歳馬の秋の天皇賞挑戦がかつて異色だった時代に、バブルガムフェローで見事、金字塔を打ち立てたのが1996年(現行の天皇賞・秋での3歳制覇は史上初)。その後も2002~04年の3連覇(シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ)、14年スピルバーグと藤沢和雄厩舎は天皇賞・秋を5勝。他の追随を許さない。ちなみに同厩舎はJRA通算1420勝(21日終了時点)で尾形藤吉元調教師(1670勝)に次ぐ史上2位。現役2位は山内研二厩舎の846勝だから、厩舎の力がいかに飛び抜けているかがわかる。