ギルド規約
朝。
冒険者たちがあまりいない時間帯に、三人はギルドへと足を踏み入れた。
これならレーナが同伴していたとしても、馬鹿騒ぎになることはなくスムーズに事が進むはずだ。
冒険者登録にパーティー申請だけならば、そこまで時間は必要としない。
できるだけ早く済ませるため、三人は一直線で受付嬢の元へ向かう。
「すみません、この二人の冒険者登録をしたいんですけど……」
「はい、ではあちらに――こ、これはレーナ様! おはようございます!」
受付嬢はつい持っていた紙を落とす。
目の前にいるのはSランク冒険者のレーナ。
並の冒険者たちのように、適当に扱っていいような存在ではない。
レーナの隣には、見覚えのある男。
確か、スライム討伐の依頼に追加でオーガを狩った男だ。
かなり珍しい事例であったため、今でも記憶に残っている。
「冒険者登録というのは……そちらの御方で大丈夫ですか?」
「あ、この子もお願いします」
「え? しかし、この子はまだ子どもだと思われるのですが……」
「冒険者登録に年齢制限はなかったはずですけど」
「す、すみません! その通りです! こちらの書類に名前をお願いします」
受付嬢は、すぐに引き出しの中から二枚の紙を取り出す。
あまりに信じられない話であったため、反射的に聞き返すようなことをしてしまった。
レーナの様子を見ると、どこか急いでいるように感じられる。
規約的には何も問題ない行為であるため、受付嬢も急いで書類を手渡した。
「アイラちゃん、書き方は分かる?」
「はい、えっと、親の名前はどうしたら……」
「そこは任意だから大丈夫だと思うよ」
「そ、そうですか……よかった」
アイラは安心したようにペンを動かすと、一分程度で全て書き終わらせる。
ライトもほとんど同時に終わらせたらしい。
受付嬢は二枚の書類を確認すると、すぐにバッチを机の上に置いた。
「これでライト様とアイラ様の冒険者登録が完了いたしました。こちらはFランク冒険者の証になります。ランク昇格依頼をこなせば、文字通り昇格が可能になりますので頑張ってください」
「よかったね、二人とも! これでパーティーが組めるよ!」
「ああ。意外と簡単にパーティーって組めるんだな」
「レ、レーナ様、今何とおっしゃいました……?」
「え?」
またもや反射的にかける声。
余計なことを言わないようにしていた受付嬢も、その会話だけは聞き逃すことができなかった。
レーナはSランク冒険者、ライトたちはFランク冒険者。
自分の耳が間違っていなければ、この三人でパーティーを組もうとしているのだ。
「パ、パーティーは私の自由だと思います。用意された仲間と組むのはもう嫌なんです!」
「レーナ……そこまで」
「うん。私はライトとアイラちゃん以外とは組む気ないよ」
レーナは自分の決意の固さを表すように言い切る。
それは誰に言われようと変えられるものではない。
たとえ聖女に言われたとしても――だ。
しかし。
「……残念ですが、ギルドの規約として、三つ以上ランクが離れている冒険者とパーティーを組むことができないのです」
と、申し訳なさそうな返事が返ってきたのだった。
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