反抗
「ただいまー!」
家の中でレーナの声が大きく反響する。
部屋がいくつもある巨大な家だが、それでも全体に広がるほどの大声だった。
当然それはライトの耳にも届いている。
そして、ライトが出迎えようと部屋の扉を開けたところで。
ゴツンと、飛び込んできたレーナの頭にぶつかった。
「いってて……」
「いたた……」
おでこを押さえてその場にうずくまるライトとレーナ。
レーナはともかく、ライトはすぐに起き上がれそうにない。
その様子を、アイラが心配そうに眺めている。
「だ、大丈夫ですか……お二人とも」
「わ、私は大丈夫」
「俺も大丈夫……のはず」
ライトは何とか立ち上がると、困った顔で袋を持っているアイラを見た。
「アイラ、その袋は?」
「あ、そうでした。これ、良かったら貰ってください」
「え? 俺に?」
アイラから受け取った袋の中を見ると。
そこには一つの大きな木の実。
赤く、そして丸い。
初めて見る種類である。
「珍しい木の実だな。まさか俺のために買ってきてくれたのか?」
「そうだよー。多分そのまま食べれると思う」
「……ありがとう。嬉しいよ」
ライトは、二人に感謝の気持ちを伝える。
プレゼントなんて貰ったのは久しぶりだ。
それがただ単純に嬉しい。
おでこに感じている痛みなどすぐに消えてしまうほどである。
「そういえば、ライト。調子はもう良くなったの?」
「うん。ちょっと休んだらまあまあ良くなったよ。明日には治ってるくらいかな」
「よ、よかったー……心配してたんだからね?」
「ごめんごめん」
レーナとアイラはホッと胸をなでおろす。
ライトの体に関しては、到底自分たちだけで解決できる問題ではない。
恐らく医者でも太刀打ちできないほどだろう。
もし治りそうになかったらと考えていたが、どうやら杞憂に終わったようだ。
「できれば明日にでも済ませておきたいことがあるんだけど、ライトは明日動けそう?」
「ん? 多分大丈夫だと思うけど……何かあるのか?」
「レ、レーナさん。もしかして……」
「うん。これ以上聖女さんに文句を言われる前にやっとかないと、チャンスがなくなっちゃいそうだから」
察しの良いアイラに伝えたあと。
コホンと、レーナはライトの方に向き直す。
「二人が冒険者登録してくれたら、正式にパーティーとして申請できるはず」
レーナはここで初めて。
聖女に対して反抗することになる。
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