邪龍
「クソッ、数が多いな……」
大きな階段を上り、二階に辿り着いたライトたちを待ち受けていたのは。
一階とは比べ物にならないほどの大量のアンデッド。
流石にこれほどの量をレーナ一人で相手にするのは手に余る。
レーナは相変わらず次々に処理しているが、それでも取りこぼしが発生していた。
ライトの仕事は、その取りこぼしたアンデッドの片付けだ。
アンデッドの倒し方はレーナの動きを見て大体覚えている。
完璧に再現できるというわけではないものの、残ったアンデッドが相手なら問題はない。
「すみません、ライトさん。何もできなくて……」
「そんなこと気にするな。何もできてないのは俺も同じだ」
ライトは目の前のスケルトンを両断すると、不意にレーナの方を見る。
やはり速く、強く、上手い。
レーナの前では、数の差は問題ではないらしい。
時間が経つに連れて、確実に数は減ってきていた。
「――うっ!?」
「ど、どうした?」
すると、レーナは何かを感じ取ったのか、大きく後ろにジャンプしてライトの隣に戻ってくる。
多くの戦闘経験からくる直感か――ライトは特に何も感じ取れていない。
ただレーナから出る言葉を待つしかなかった。
「ヤバい……逃げた方がいいかも」
「え? いやどういうことだ?」
「あのアンデッド……確かに何かを呼んだ。先にアイツを倒しておくべきだった」
「? 話が見えてこな――」
ライトが聞き返そうとしたところで、目の前が大きく爆発する。
「な、なんだ!?」
否。
正確には爆発したというわけではない。
巨大な何かが廃館に体当たりしたことによって、壁が破壊されたのだ。
瓦礫から煙が上がり、眩しい太陽の光がライトたちを照らす。
「ライトさん! あれは邪龍です! アンデッドが呼び出しました!」
アイラは今までに出したことのないような大声で現状を伝える。
邪龍――それが本当なら、アンデッドなど比ではないほどの相手だ。
アイラの必死さから、同時にその恐ろしさが伺えた。
「ライト、どうする? 多分もう逃げられないけど」
「やるしかないのか……?」
「ぜ、絶対にそれはダメです……! 間違いなく殺されますよ!」
邪龍は自らを呼び出したアンデッドを踏みつぶし、ジロリとライトたちを睨みつけている。
これではレーナの言う通り逃げられない。
しかし、邪龍の強さが見えているアイラは、戦うことを避けるように言ってくる。
「あの邪龍は斬撃耐性を持っています! 硬い鱗によって、剣の攻撃はほとんど通りません!」
「なっ……ど、どうする、レーナ?」
「このままだと本当にヤバいかも……」
レーナはゴクリと唾を飲み込む。
アイラの言う通り、あの硬い鱗はかなり厄介だ。
ダメージが与えられないということはないだろうが、致命傷を与えることは不可能だろう。
剣を主体に戦うレーナたちからすれば、最も戦いたくない相手だと考えてもいい。
「でも、背中を見せたらその瞬間にアウトだよな」
「一か八か――やるしかないよね」
「ま、待ってください!」
グッと剣を握った二人を、アイラはもう一度呼び止める。
「ライトさん! これを――!」
そう言ってアイラが袋から取り出したのは。
忘れもしない――スキルの実だった。
応援、本当にありがとうございます!
スキルの実……再び登場しました!
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