依頼
「おはよー! 朝だよ! すごい朝だよ――って、もう起きてる!?」
「おはよう、レーナ」
「おはようございます。レーナさん」
ドカンと扉を勢いよく開けて飛び込んできたレーナを、ライトとアイラは何事もなかったかのように迎え入れる。
レーナとしては寝起きにサプライズを仕掛けたかったのだろうが、その計画は簡単に崩れ去ってしまった。
元農民であるライトとアイラの朝は早い。
数十分前には既に起床しており、今は外の景色を眺めている。
「二人とも早起きなんだね……」
「まあな。ずっとこういう生活だったし」
朝から出鼻をくじかれたレーナは、少々気を落としながらライトの隣に立つ。
「それより凄いな、この家。いくらくらいしたんだ?」
「うーん……あんまり覚えてない。普段は忙しくてお金を使う機会がないから、家を買うくらいしか思い当たらなかったんだー」
「そうなのか。まあ暇な時間なんてあんまりなさそうだからな……」
「そうそう! 今日だってまた一つ依頼が入ってるし――あ!」
ライトに愚痴をこぼしている最中。
レーナは何かを思い付いたように声を上げる。
嫌な予感というわけではないが、そこでライトにも謎の緊張感が走った。
一体何を言われるのだろうか。
ライトはレーナから出てくる言葉を待つ。
「ねえ、ライト。私たち仲間になったんだよね?」
「一応……そうだな」
「なら、依頼に付いてきてくれると嬉しいなー……なんて」
そう言い切ると、レーナはチラリとライトの顔色を確認した。
仲間になってから一日未満。
それも、あと数時間後には出発しなくてはならないという依頼。
かなり急な頼み事であるため、ライトが頷く可能性は低い。
やっぱり言わなかった方が良かったかも――と考えていると。
「なんだそんなことか。仲間なんだしもちろん付いて行くよ」
「――っ! 流石ライトだよ! 前の仲間なんて全然付いてきてくれなかったのに!」
ライトは当然と言わんばかりに了承の意を伝える。
むしろ仲間であれば断る方が難しいと思えたが、妙に喜んでいるレーナを見るとそうでもないらしい。
少なくとも、前の仲間は付いて行かなかったようだ。
冒険者という職業の闇が見えたような気がした。
「肝心の依頼内容は?」
「えっと……廃館に発生したアンデッドの処理だって。数はそこそこ多いみたい」
「アンデッドか……アイラは危ないかもな」
依頼の内容は特に無理難題というわけではない。
しかし、ここで問題となったのはアイラをどうするかだ。
大勢のアンデッドを相手に、はたしてアイラを守り切れるのか。
今回はレーナがいるため、確率としては守れる確率の方が高いだろう。
それでも百パーセント大丈夫かと言われたら素直に頷けなかった。
そう考えると、アイラはここで待機してもらっていた方がいいかもしれない。
「アイラ、お前は――」
「ラ、ライトさん! 私は大丈夫です!」
かなり食い気味のタイミングでアイラから返ってきた拒否反応。
この前と同じような反応だ。
アンデッドの中に行くよりも、一人で残ることの方がアイラにとって嫌らしい。
ライトは頭を悩ませる。
「ねえ、ライト。アイラちゃんも連れて行ったらダメ?」
「ダメというか……危険じゃないか?」
「私が責任持って守るから、ね?」
「はい。だから心配しないでください、ライトさん」
レーナは一歩アイラに近付き、アイラはギュッとレーナのスカートを掴む。
一瞬で二対一の構図ができてしまった。
こうなればライトがもう何も言うことはない。
「……レーナが言うなら従うよ。一応レーナがリーダーのはずだし」
「え? 私、リーダーだったの?」
レーナはアイラに顔を向ける。
当然アイラも異論なしと頷いていた。
多少困惑はしたものの、レーナは喜んでそれを受け入れる。
それじゃあ――と、気を取り直して。
三人は廃館に出向くことになった。
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