初めまして
ギルドから百メートルほど離れた喫茶店。
そこに連れてこられたライトとアイラは、気が付くとレーナの正面に座らされていた。
街中であるにもかかわらず、かなり静かな喫茶店だ。
客もライトたち以外は見当たらず、落ち着いた雰囲気でかなり居心地がいい。
「結構いい店でしょ? 何だか故郷と似ててずっと通ってるんだよねー」
「そうだな――っていうか、そんなことより」
「まあまあ。私も話したいことがいっぱいあるんだから」
話を急ごうとするライトを止めて、レーナは用意されたジュースに口を付ける。
生活が変わったとしても、味の好みは変わっていないらしい。
メニューの中で一番安いジュースを頼んでいた。
「それで、ライトはなんでギルドにいたの? もしかして冒険者になってくれたりとか……」
「それは……何というか、深い事情があってだな。話すと結構長くなるんだけど」
「そうなんだ。なら後でゆっくり聞こうかな」
それで――と、レーナはライトの隣に目を向ける。
「この子は誰? 初めまして……だよね?」
「は、はい……初めまして」
やはりレーナもアイラのことが気になっていたようだ。
むしろ、触れない方が不自然なのかもしれない。
アイラは恥ずかしそうに髪をクルクルといじっている。
ライトはゴクリと水を飲んで話始めることになった。
「この子はアイラ。今は俺と一緒に村で暮らしてるんだ」
「い、一緒に!? な、なにそれ!」
レーナは前のめりになって顔を近付ける。
この面白いリアクションを見るのも久しぶりだ。
そんな昔のレーナを知らないアイラは、びくりと体を反応させていた。
まだまだ話の序盤であるが、すぐに会話が止められてしまう。
「別におかしいことじゃないぞ。農民をやってると、ほとんどの人が相方と暮らしてるし」
「そ、そっか……そうなんだ。へえー……」
レーナはチラチラとアイラを確認する。
そしてアイラもまた、チラチラとレーナの様子を伺っていた。
レーナはともかく、アイラは初対面の人間に警戒しているらしい。
確かライトと初めて出会った時も、このような反応だったはずだ。
「アイラ、この人は俺の幼馴染なんだ。怖い人じゃないから安心していいぞ」
「わ、分かりました。ライトさん……」
「うん! よろしくね、アイラちゃん!」
「よろしくお願いします、レーナさん」
レーナはニッコリと笑い、アイラはペコリと頭を下げる。
お互いの性格が分かりやすく出た挨拶だった。
ひとまず打ち解けられたということに、ライトはホッと安堵しておく。
「じゃあライトは農民さんになったんだ」
「まあな。レーナはもう冒険者のトップだろ? 羨ましいよ」
「……そんなにいいものじゃないけどね。大変だし」
レーナはため息をこぼす。
一瞬だけ見えたその表情には、確かな疲れが見えた。
「この一か月で何人か仲間を紹介されたんだけど、やっぱり知らない人とは合わなかったんだよねー」
「そっちも大変なんだな」
「うん――ってごめん、変な話になっちゃったね」
レーナはアハハとまた笑って話を変える。
「今から村に帰ったんじゃ暗くなっちゃうよね? 今日はこの街に泊まっていかない?」
「それもそうだな。アイラはそれでいいか?」
「はい。大丈夫です、ライトさん」
ライトがそう決めると、レーナは嬉しそうに立ち上がる。
外を見たらもう日が沈みそうだ。
これ以上の移動はアイラにも酷だろう。
レーナはそれを察してくれたのかもしれない。
そろそろ換金作業が終わっていてもおかしくない時間であるため、間に合うようにギルドに戻る必要もあった。
「レーナ、一回ギルドに戻ってもいいか?」
「もちろん!」
こうして、三人は喫茶店を出ることになる。
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