再会
「え? スライムではなくオーガを倒したのですか?」
「はい。一応耳は持ってきました。これって換金できますかね……?」
「え、ええっと……少々お待ちください」
受付嬢はオーガの耳を受け取ると、慌てて上司の元へ相談に向かう。
幸いなことに、今の時間帯は冒険者たちが少なめであるため、時間をかけてゆっくりと相談することができるはずだ。
受付嬢として何年もこのギルドで働いてきたが、このような事態は経験したことがない。
スライムを倒しに行ったのにもかかわらず、オーガを狩ってくるなど冗談としか思えなかった。
それも冒険者かどうかすら怪しいような新人が。
しかし、現実では本物のオーガの耳が手渡されている。
冒険者が多い時間帯であれば、話を聞く前にただのイタズラとして適当に流していただろう。
それほどまでに、通常では有り得ないことなのだ。
「大丈夫かな……換金できないって言われたらどうしよう」
「そ、その時は仕方ありません……私がご飯を我慢すればいいだけです」
「いや、流石にそこまではさせられないよ」
そんなことを知らないライトたちは、慌てる受付嬢を眺めながら今日の晩御飯を心配していた。
少しだけ不穏な空気。
物分かりの良いアイラは、無理にごちそうを用意しなくても大丈夫だと提案しているが、それに応じるほどライトに甲斐性がないわけではない。
帰り道のご機嫌そうなアイラの顔を今でも覚えている。
もし今日駄目だったら、当分あの表情を見ることはできないであろう。
「お、お待たせいたしました……! オーガ討伐に関しましては、追加報酬ということになります。本来オーガを討伐する依頼よりは報酬は少なくなりますが、しっかりと支払われますのでご安心ください」
「よ、良かったですね、ライトさん!」
「うん。安心したよ」
戻ってきた受付嬢の言葉を聞いて、もう一段階アイラの表情が明るくなる。
一か月ほどアイラと暮らしてきた中で、ここまで笑顔を見せるのは初めてだ。
やはりこの依頼を受けて正解だったのかもしれない。
ライトの心の中も満足感でいっぱいだった。
「それでは、換金の作業に入りますので一時間ほどお待ちください」
「はい」
そう言うと、受付嬢はそそくさと奥の方へと帰っていく。
換金はかなり時間のかかる作業らしい。
どうにか一時間ほど時間を潰す必要があるようだ。
そんなことを考えていると、チョンチョンとアイラが椅子を指さす。
「ライトさん、あそこで待ちませんか?」
「……そうしようか。ありがとう」
ライトは、疲れを吐き出すようにアイラが見つけてくれた椅子に座った。
そして、その隣へアイラもちょこんと座る。
「一時間後が楽しみですね」
「そうだな――ん?」
ライトが話を止める。
それどころか、このギルドにいる全員が黙ったと言っても過言ではない。
しかし。
少しだけ沈黙の時間が流れたかと思うと、今度はザワザワと困惑するような声が広がりだす。
一体何があったというのか。
ライトは立ち上がり、背伸びをしながら冒険者たちの視線の先にあるものを確認しようとした。
背の高い男たちによって阻まれながらも、何とかチラリと確認できたのは美しい金髪。
どこか懐かしい雰囲気。
その直感的な何かは、見事に当たっていたようだ。
間違いない。
そこにいたのは、忘れもしない幼馴染。
――レーナだった。
ハイファンタジー2位ありがとうございます!
ついにレーナが登場します!
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