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外れスキル《木の実マスター》 〜スキルの実(食べたら死ぬ)を無限に食べられるようになった件について〜 作者:はにゅう@『死者蘇生』発売中!

第一章

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一対一


「やっぱりアイツか……それにあのモンスター」

「ラ、ライトさん、あれはオーガです。本来ならこんなとこにはいないはずですけど……」


 ライトは剣を握る。

 ギルドで喧嘩を売ってきたジーンを助けることに抵抗はあったが、あのオーガを放置しておくわけにはいかない。

 オーガの進行方向を地図と照らし合わせると、このままでは人の住む村へ衝突することになる。

 今からライトがギルドに戻ってこの情報を伝えたところで、手遅れになる可能性の方が圧倒的に高かった。


「た、戦うんですか?」

「うん――というか逃げられない。目が合ったし」


 心配そうに隣でライトを見つめるアイラ。

 アイラを連れて逃げる選択肢もあったが――時すでに遅し。

 オーガと目が合ってしまい、完全に敵として認識された後だ。


 素の身体能力では、オーガの方が何十倍も上である。

 走って逃げたところで、簡単に追いつかれてしまうだろう。

 ならば背中を見せる理由はない。


 《剣神》に絶対的な信頼を寄せているわけではないが、不思議と負ける未来が見えなかった。


「行ってくる」


 ライトはアイラを残して動き出す。

 攻撃を仕掛けるならジーンたちがいる今がチャンスだ。

 いくらジーンのような男であれど、ここでライトに敵対するようなことはしないはずである。

 囮程度にはなってくれるかもしれない。


 オーガはヒョイとジーンをどかして、向かってくるライトをじっと見つめる。


(……っ、やっぱり隙が無いな。どうする……?)


 ライトはオーガの間合いの一歩手前で足を止める。

 スライムとは違って、オーガ相手では不用意に踏み込むことはできなかった。

 アイラの説明によると、《剣神》は物理的な防御力が上がるわけではない。

 つまり、オーガの一撃を食らえば即死する可能性だってあるのだ。


 お互いに睨み合う時が流れる。


「――おい、お前! 何やってんだ! 早く助けろ!」


 その沈黙の空間を破壊したのは、オーガの後ろで腰を抜かしているジーンだった。

 助けてもらう側とは到底思えないようなセリフを吐き、ライトに怒鳴るようにして声を上げている。


 しかし、今回はそれが功を奏したらしい。


 ずっとライトを見つめていたオーガが、チラリと反応するようにジーンの方へ目を向けた。

 野生の本能なのか――それは分からないが、想像以上のサポートだ。


 ふざけるなと言い返したくなる気持ちを抑えて、ライトは一歩目を踏み込む。


 オーガが慌てて殴りかかる頃にはもう遅い。


 その硬い皮膚をまるで豆腐のように切り裂き、そのまま首を跳ね飛ばした。


(凄いな……まるで自分じゃないみたいだ)


 ライトの手に残る手応え。

 《剣神》のスキルによって、自分のイメージ通りに体が動く。

 本来なら絶対にできないような芸当も、剣を持てばそれが可能だった。


「ラ、ライトさん……! 大丈夫でしたか?」

「うん。このスキルは本物だったよ」


 戦いの決着を見て、アイラはトテトテと近付いてくる。

 その表情にはもう不安そうな気持ちはない。

 ライトの無事を確認すると、迷いなくオーガの首から耳を切り取った。


「この耳をギルドに持っていけば換金してもらえるでしょうか?」

「う、うん……多分」


 アイラはその耳をライトに見せつけてニコニコと笑う。

 自分はできるパートナーだということをアピールしているようだ。


 少しだけアピールの仕方を間違えている気がしないでもないが、今アイラの厚意を無下にするのも残酷である。

 ライトは引きつった笑みを浮かべながら、その耳を受け取ることになった。




「な、なあ……今の奴ら、ギルドで会ったことあるよな」

「ジーンがちょっかい出した奴らだろ……」

「あの野郎、オーガを倒しやがったぞ」

「お前、やべえ奴に顔覚えられたんじゃねえの?」


 ジーンとその仲間たちは。

 ライトに声をかけることもできず、ただ離れていく後ろ姿を見ていることしかできなかった。




ハイファンタジー5位本当にありがとうございます!


この話で一章は区切りとなりそうです!

これからストーリーが進み始めますので、ぜひぜひお楽しみに!


『面白そう』『次も読みたい』


と少しでも思って頂けたら励みとなりますのでブックマーク登録や評価、感想をいただけると嬉しいです!


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