「東京裁判史観(自虐史観)を廃して本来の日本を取り戻そう!」
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する。
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《 いま注目の論点 》
★ボルトン氏「政権内幕本」の波紋――産経新聞
★日本の正体は ひ弱な花――櫻井よしこさん
★リニア新幹線 反対だけが知事の仕事か――産経新聞
★教科書調査官「無謬神話」の愚かさ――藤岡信勝さん
★欧州へ秋波…習主席の片思い――石平さん
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日本は東京裁判を受諾したことは一度もない。日本がサンフランシスコ講和条約で受諾したのは、東京裁判の諸判決である。そして、このことを取り決めた第11条に従って関係国過半数の同意を取りつけ、A級戦犯はなかったという手続きをとり、国際社会もそれを認めたのだ。
◆日本は東京裁判の諸判決を受諾したのだ
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「致知」2006年11月号【特集・言葉の力】
【歴史の教訓】●連載●第132回
「東京裁判史観から東條・マッカーサー史観へ その転換を図るのはいまだ」
上智大学名誉教授・渡部昇一
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小泉首相の靖国参拝に対する中国の非難は、
宗教干渉以外のなにものでもない。
これは、日本文明の根源を突き崩そうとうする遠謀だとも言える。
これに対するために、日本人は無知であってはならない。
国を損なう東京裁判史観に引導を渡す時はきているのだ。
………………………………………………………………………………
【日本にとって有害な無知は看過できない】
いささか旧聞にぞくするものになったが、8月15日、小泉首相が靖国神社を参拝した。
考えてみれば、8月15日の靖国参拝は小泉首相の公約だったのである。最初からこの公約を実行していればすっきりして、かえって煩わしい騒ぎになることはなかったかもしれない。
これは信頼できる筋から聞いたことだが、当時の福田康夫内閣官房長官が、どこから仕入れた情報によったのか、8月15日を外して参拝すれば中国も韓国も問題にすることはないと進言、小泉首相はそれを採用したのだという。ところが、案に相違して中国と韓国は大騒ぎした。これには小泉首相も福田情報に不信を抱き、内閣官房長官から外す一因になったと聞いている。
それはともかく、小泉首相はその後も中国や韓国がどんなに騒ごうと靖国参拝を続け、最後には8月15日参拝の公約を実行して、有終の美を飾ることになった。中国がこれを大問題であるかのように騒ぐのは、向こうにそうしなければならない国内事情があるからであり、騒ぎたければ騒ぐがいい、という確信があったからだろう。向こうの都合に合わせて尻尾(しっぽ)を振ったりはしない、と毅然(きぜん)としたところを示したわけである。ここしばらく続いた歴代首相の腑(ふ)抜けぶりとは一線を画した小泉首相の態度を、高く評価したい。
実際、マスコミなどでは小泉首相の靖国参拝がアジア外交の障害になるとかなんとか騒ぎ立てたが、そんなことはまったくない。政府首脳が直接会わないというだけで、日中、日韓の貿易は順調で、なんの支障も出ていない。そもそも日本を排除して、中国や韓国の経済が回転するはずはないのだ。突っ張れば困るのは向こうなのだから、勝手に突っ張らせておけばいいのである。そういう事実も小泉首相の靖国参拝は明らかにした、と言える。まさに有終の美である。
そして政局はポスト小泉に移ったわけだが、政局の話はさておくとして、小泉首相が靖国に参拝したその8月15日に、NHKテレビで政治討論番組があり、私もそれを視聴したのだが、外務大臣麻生太郎氏の発言にはびっくりした。麻生氏は自信たっぷりに、「日本はサンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れ、そこから出発して今日の繁栄を築いた」という趣旨の発言をしたのである。なんたる無知、と言わなければならない。
実はこの問題は前にも本欄で論じたことがある。それをお読みの方には申し訳ないが、これは極めて重要な問題であり、まして麻生氏のような重要な立場にある人物の認識に誤りがあってはとても看過することができないので、改めて述べることにする。
【日本は東京裁判の諸判決を受諾したのだ】
最初にはっきり申し上げておく。日本が東京裁判を受諾したことは一度もない。サンフランシスコ講和条約はもちろん、その他のどのような機会にも、である。
麻生氏は、サンフランシスコ講和条約の第11条のことを言っているのだが、確かに当時の外務省が翻訳したものでは、日本は極東国際軍事裁判所つまり東京裁判を受諾する、となっている。だが、これは誤訳である。英語の原文では、日本は東京裁判の「諸判決(The judgements)を受諾し」、拘禁されている者の刑を執行する、となっているのだ。日本が受諾したのは東京裁判そのものではなく、東京裁判が下した諸判決なのである。
これはどういうことか。世間一般の常識として、よくこういうことがあるではないか。裁判には不服で、とても承諾できない。しかし、いつまでゴタゴタしていてもきりがないので、裁判所の言う罰金を支払ってケリをつける。だが、これは裁判を認めたということでは決してない……。
まして東京裁判で死刑の判決を受けた7人に対しては、すでに刑が執行されてしまっているのだ。これに文句をつけたいのはやまやまだが、それを言ってはケリがつかないから、東京裁判は受け入れないが、東京裁判が下した諸判決を涙を呑(の)んで受諾したのだ。
アメリカをはじめとする連合国側も、このことはよく承知していた。だから、講和条約の第11条はこれで終わりではなく、次のような後段がつけられている。それは、日本が勧告し、東京裁判に代表を出した国の過半数が同意すれば、A級戦犯とされ、禁固刑など刑に服している人たちを赦免できる、というのである。それによってA級戦犯などはなかったということにしましょう、というわけである。
先に私は、講和条約第11条の外務省訳は誤訳だと言ったが、誤訳はしても当時の外務省は第11条の趣旨を正確に把握していた。だから、日本は早速関係国に、服役中のA級戦犯とされた人たちの赦免を働きかけている。そして、これに過半数の国が同意した。そこで日本は戦犯はなかったという手続きをとり、A級戦犯とされた人たちを赦免した。
ここが肝心のところである。これによって、A級戦犯なるものはなかったことになったのだ。国内的にはもちろん、国際的にも、である。東京裁判に代表を出した国の過半数が赦免に同意したという意味は、A級戦犯はないことを認めた、ということなのである。このことを日本人はしっかり認識しなければならない。
しかし、すでに死刑に処せられた人がいる。獄中で病死した人もいる。A級戦犯はないことになったからといって、これはどうしてくれるのだ、という感情は残る。謝罪と賠償を要求しても足りるものではない。しかし、日本はこの理不尽を甘受して、東京裁判判決は受諾した。なぜか。戦争に負けたからである。戦争に負けるというのはこういうことなのである。
こうして、A級戦犯はなかったことになり、国際社会もそれは認めた。その証拠に、戦時中の東條内閣で大蔵省を務め、A級戦犯として終身刑の判決を受けた賀屋興宣(かや・おきのり)氏は政界に復帰、池田内閣で法務大臣を務めた。同じく東條内閣で外務大臣を務め、禁固7年の判決を受けた重光葵(しげみつ・まもる)氏は鳩山内閣の副総理兼外務大臣になり、日本が国連に加盟した時は日本を代表して国連総会の場で、「日本は東西の架け橋になる」と演説して満場の喝采(かっさい)を浴びている。彼らがA級戦犯であるならば、このようなことが起こるはずがないし、国際社会が容認するわけがない。だが、どの国からもまったく文句は出なかった。A級戦犯はなかったということを認めたからにほかならない。
国際社会が認めたこの事件を、日本人が認めなくてどうするのか。
重ねて言う。日本は東京裁判を受諾したことは一度もない。日本がサンフランシスコ講和条約で受諾したのは、東京裁判の諸判決である。そして、このことを取り決めた第11条に従って関係国過半数の同意を取りつけ、A級戦犯はなかったという手続きをとり、国際社会もそれを認めたのだ。
ではA級戦犯とされ、死刑に処せられた人、獄中で死亡した人はどうなるのか。これは、いわば敵の手に落ちて命を絶たれたのである。だから、昭和殉教者として戦死に準じて扱い、靖国神社への合祀の手続きをとった当時の政府の見解は、まことに適切であった、と言わなければならない。
日本人がこの事実に無知であって、どうするのか。だから、小泉首相の靖国参拝に中国から理不尽な非難攻撃を受けるような事態になるのである。中国は靖国神社にA級戦犯が合祀されていることを非難の理由にしているが、A級戦犯がなかったということは国際的にも認められ、当時の中国政府もなんの異議も唱えなかったのだから、まったくいわれのない、無茶苦茶(むちゃくちゃ)な非難であることは、事実を知れば一目瞭然(りょうぜん)である。
(後略)
………………………………………………………………………………
渡部昇一(わたなべ・しょういち)
昭和5年山形県生まれ。30年上智大学文学部大学院修士課程修了。
ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。
Dr.phil., Dr.phil.h.c. 平成13年から上智大学名誉教授。幅広い評
論活動を展開する。著者は専門書のほかに『歴史に学ぶリーダーシ
ップ』『日本を変えよう』『幸田露伴に学ぶ自己修養法』など多数。
近著に『パスカル「冥想録」に学ぶ生き方の研究』『この国の「義」
を思う』。
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◆日本は東京裁判の諸判決を受諾したのだ
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「致知」2006年11月号【特集・言葉の力】
【歴史の教訓】●連載●第132回
「東京裁判史観から東條・マッカーサー史観へ その転換を図るのはいまだ」
上智大学名誉教授・渡部昇一
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小泉首相の靖国参拝に対する中国の非難は、
宗教干渉以外のなにものでもない。
これは、日本文明の根源を突き崩そうとうする遠謀だとも言える。
これに対するために、日本人は無知であってはならない。
国を損なう東京裁判史観に引導を渡す時はきているのだ。
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【日本にとって有害な無知は看過できない】
いささか旧聞にぞくするものになったが、8月15日、小泉首相が靖国神社を参拝した。
考えてみれば、8月15日の靖国参拝は小泉首相の公約だったのである。最初からこの公約を実行していればすっきりして、かえって煩わしい騒ぎになることはなかったかもしれない。
これは信頼できる筋から聞いたことだが、当時の福田康夫内閣官房長官が、どこから仕入れた情報によったのか、8月15日を外して参拝すれば中国も韓国も問題にすることはないと進言、小泉首相はそれを採用したのだという。ところが、案に相違して中国と韓国は大騒ぎした。これには小泉首相も福田情報に不信を抱き、内閣官房長官から外す一因になったと聞いている。
それはともかく、小泉首相はその後も中国や韓国がどんなに騒ごうと靖国参拝を続け、最後には8月15日参拝の公約を実行して、有終の美を飾ることになった。中国がこれを大問題であるかのように騒ぐのは、向こうにそうしなければならない国内事情があるからであり、騒ぎたければ騒ぐがいい、という確信があったからだろう。向こうの都合に合わせて尻尾(しっぽ)を振ったりはしない、と毅然(きぜん)としたところを示したわけである。ここしばらく続いた歴代首相の腑(ふ)抜けぶりとは一線を画した小泉首相の態度を、高く評価したい。
実際、マスコミなどでは小泉首相の靖国参拝がアジア外交の障害になるとかなんとか騒ぎ立てたが、そんなことはまったくない。政府首脳が直接会わないというだけで、日中、日韓の貿易は順調で、なんの支障も出ていない。そもそも日本を排除して、中国や韓国の経済が回転するはずはないのだ。突っ張れば困るのは向こうなのだから、勝手に突っ張らせておけばいいのである。そういう事実も小泉首相の靖国参拝は明らかにした、と言える。まさに有終の美である。
そして政局はポスト小泉に移ったわけだが、政局の話はさておくとして、小泉首相が靖国に参拝したその8月15日に、NHKテレビで政治討論番組があり、私もそれを視聴したのだが、外務大臣麻生太郎氏の発言にはびっくりした。麻生氏は自信たっぷりに、「日本はサンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れ、そこから出発して今日の繁栄を築いた」という趣旨の発言をしたのである。なんたる無知、と言わなければならない。
実はこの問題は前にも本欄で論じたことがある。それをお読みの方には申し訳ないが、これは極めて重要な問題であり、まして麻生氏のような重要な立場にある人物の認識に誤りがあってはとても看過することができないので、改めて述べることにする。
【日本は東京裁判の諸判決を受諾したのだ】
最初にはっきり申し上げておく。日本が東京裁判を受諾したことは一度もない。サンフランシスコ講和条約はもちろん、その他のどのような機会にも、である。
麻生氏は、サンフランシスコ講和条約の第11条のことを言っているのだが、確かに当時の外務省が翻訳したものでは、日本は極東国際軍事裁判所つまり東京裁判を受諾する、となっている。だが、これは誤訳である。英語の原文では、日本は東京裁判の「諸判決(The judgements)を受諾し」、拘禁されている者の刑を執行する、となっているのだ。日本が受諾したのは東京裁判そのものではなく、東京裁判が下した諸判決なのである。
これはどういうことか。世間一般の常識として、よくこういうことがあるではないか。裁判には不服で、とても承諾できない。しかし、いつまでゴタゴタしていてもきりがないので、裁判所の言う罰金を支払ってケリをつける。だが、これは裁判を認めたということでは決してない……。
まして東京裁判で死刑の判決を受けた7人に対しては、すでに刑が執行されてしまっているのだ。これに文句をつけたいのはやまやまだが、それを言ってはケリがつかないから、東京裁判は受け入れないが、東京裁判が下した諸判決を涙を呑(の)んで受諾したのだ。
アメリカをはじめとする連合国側も、このことはよく承知していた。だから、講和条約の第11条はこれで終わりではなく、次のような後段がつけられている。それは、日本が勧告し、東京裁判に代表を出した国の過半数が同意すれば、A級戦犯とされ、禁固刑など刑に服している人たちを赦免できる、というのである。それによってA級戦犯などはなかったということにしましょう、というわけである。
先に私は、講和条約第11条の外務省訳は誤訳だと言ったが、誤訳はしても当時の外務省は第11条の趣旨を正確に把握していた。だから、日本は早速関係国に、服役中のA級戦犯とされた人たちの赦免を働きかけている。そして、これに過半数の国が同意した。そこで日本は戦犯はなかったという手続きをとり、A級戦犯とされた人たちを赦免した。
ここが肝心のところである。これによって、A級戦犯なるものはなかったことになったのだ。国内的にはもちろん、国際的にも、である。東京裁判に代表を出した国の過半数が赦免に同意したという意味は、A級戦犯はないことを認めた、ということなのである。このことを日本人はしっかり認識しなければならない。
しかし、すでに死刑に処せられた人がいる。獄中で病死した人もいる。A級戦犯はないことになったからといって、これはどうしてくれるのだ、という感情は残る。謝罪と賠償を要求しても足りるものではない。しかし、日本はこの理不尽を甘受して、東京裁判判決は受諾した。なぜか。戦争に負けたからである。戦争に負けるというのはこういうことなのである。
こうして、A級戦犯はなかったことになり、国際社会もそれは認めた。その証拠に、戦時中の東條内閣で大蔵省を務め、A級戦犯として終身刑の判決を受けた賀屋興宣(かや・おきのり)氏は政界に復帰、池田内閣で法務大臣を務めた。同じく東條内閣で外務大臣を務め、禁固7年の判決を受けた重光葵(しげみつ・まもる)氏は鳩山内閣の副総理兼外務大臣になり、日本が国連に加盟した時は日本を代表して国連総会の場で、「日本は東西の架け橋になる」と演説して満場の喝采(かっさい)を浴びている。彼らがA級戦犯であるならば、このようなことが起こるはずがないし、国際社会が容認するわけがない。だが、どの国からもまったく文句は出なかった。A級戦犯はなかったということを認めたからにほかならない。
国際社会が認めたこの事件を、日本人が認めなくてどうするのか。
重ねて言う。日本は東京裁判を受諾したことは一度もない。日本がサンフランシスコ講和条約で受諾したのは、東京裁判の諸判決である。そして、このことを取り決めた第11条に従って関係国過半数の同意を取りつけ、A級戦犯はなかったという手続きをとり、国際社会もそれを認めたのだ。
ではA級戦犯とされ、死刑に処せられた人、獄中で死亡した人はどうなるのか。これは、いわば敵の手に落ちて命を絶たれたのである。だから、昭和殉教者として戦死に準じて扱い、靖国神社への合祀の手続きをとった当時の政府の見解は、まことに適切であった、と言わなければならない。
日本人がこの事実に無知であって、どうするのか。だから、小泉首相の靖国参拝に中国から理不尽な非難攻撃を受けるような事態になるのである。中国は靖国神社にA級戦犯が合祀されていることを非難の理由にしているが、A級戦犯がなかったということは国際的にも認められ、当時の中国政府もなんの異議も唱えなかったのだから、まったくいわれのない、無茶苦茶(むちゃくちゃ)な非難であることは、事実を知れば一目瞭然(りょうぜん)である。
(後略)
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渡部昇一(わたなべ・しょういち)
昭和5年山形県生まれ。30年上智大学文学部大学院修士課程修了。
ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。
Dr.phil., Dr.phil.h.c. 平成13年から上智大学名誉教授。幅広い評
論活動を展開する。著者は専門書のほかに『歴史に学ぶリーダーシ
ップ』『日本を変えよう』『幸田露伴に学ぶ自己修養法』など多数。
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を思う』。
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