新設された新型コロナウイルス感染症対策分科会の初会合(6日、東京・永田町)
東京都で6日、新型コロナウイルスの感染者が新たに102人確認され、新規感染者数が5日連続で100人を超えた。同水準だった4月上旬と比べPCR検査が大幅に拡大し、表面化する経路不明の感染も増えている。現状では重症者が少なく病床に余裕もあるが、市中感染の拡大を防ぐ一層の体制整備が求められている。
都によると、6日時点の都のPCR検査能力は1日当たり約6千件で、実施件数が2800件を超える日もある。「夜の繁華街」での感染拡大を抑えるため、都や新宿、豊島区は接客を伴う飲食店の従業員に対し、症状や感染者との接触歴がなくても検査を受けるように促している。
政府が7都府県に緊急事態宣言を出した4月上旬の段階では、都の検査能力は1日約340件にとどまっていた。都によると非常時の対応として能力を上回る件数を実施した日もあったが、急拡大する感染の状況を追うには不十分だった。
積極的な検査が行われるなか、経路不明の感染者が浮かび上がっている。7月5日は新規感染者111人のうち経路不明が53人、6日は102人のうち42人。6日時点で直近1週間の1日平均は39.1人となり、前週の約1.5倍に増えた。
緊急事態宣言解除後の最多となる131人の感染が確認された7月4日時点で、都内の入院患者は346人、うち重症者は9人にとどまる。新規感染は20~30代の若い世代が多く、重症化リスクが高いとされる高齢者の割合は低い。
都は現在コロナ対応の病床を1千床確保し、感染者の増大に応じて最大4千床を確保できる体制を整えている。感染者の8割を占める軽症・無症状者についてはホテルなど宿泊施設や自宅での療養に切り替えており、医療体制には余力がある。
141人の感染が確認された4月5日時点の数字を見ると入院患者は951人、うち重症者は24人。確保病床は1千床にとどまり、感染者の急増を受けて医療体制は逼迫した状況となっていた。
7月6日、政府が新型コロナ対策の専門家会議に代えて新設した分科会の初会合が開かれ、会合後に記者会見した西村康稔経済財政・再生相も「4月上旬とは状況が異なるとの共通認識だった」と説明した。会合では、コンサートやプロスポーツなどのイベント開催の人数制限について予定通り10日に緩和することが了承された。
しかし楽観はできない。都は7月1日時点の試算で、今のペースで経路不明の感染者が増えれば4週間後には1日当たり160人に膨らむとした。「感染が50、60代以上に広がってくると重症化率が高くなり、入院の需要が増してくる」と東京都医師会の猪口正孝副会長は警戒する。
政府の分科会会長の尾身茂氏は、これまでにクラスター(感染者集団)が発生した病院や高齢者施設、接待を伴う飲食店などについては無症状でも「PCR検査を徹底的に行うべきだ」との基本戦略を公表した。
全国の感染状況をリアルタイムで把握するため、厚生労働省は5月末に情報を一元管理するシステムを立ち上げたが、都内などで運用開始が遅れている。感染者周辺の追跡調査などに当たる保健所の体制強化も進んでいない。尾身氏は「こうした課題は数カ月前から認識されていたが解決に至っていない」と政府に対応を求めている。