「FXで儲けている人は1割もいない」
「FXはゼロサムゲーム」
FX経験者なら一度は見聞きしたことがある言葉だと思います。当方もFX経験者ですが、至る所でこの言葉を目にしました。ただ、結局のところ、定性的な発言だけで定量的なデータがないため、いまいち実態が掴めませんでした。そこで本日は、YAHOO!のファイナンススタジアムで公開されている5216人のランキング情報からデータを取得して、FXの取引実態に迫ってみます。
<目次>
■大損した人の金額TOP10
■儲けた人と損した人の割合
■儲けた人の総額と損した人の総額比較
■利益の集中度合
■資産額と収益率の関係
■所感
■大損した人の金額TOP10
ファイナンススタジアム参加者内で、先月1ヵ月で損失額が大きかった人TOP10を調べると次の通りです。
損失額順位 | 損失額 |
10位 | -16,709,112円 |
9位 | -17,288,400円 |
8位 | -17,966,940円 |
7位 | -22,655,261円 |
6位 | -23,062,664円 |
5位 | -27,024,000円 |
4位 | -36,423,395円 |
3位 | -36,973,382円 |
2位 | -59,190,453円 |
1位 | -60,625,728円 |
先月FXで最も損をしてしまった方は6000万円を超える金額を失っています。当方には一生無理な取引規模です。上記10名のデータだけで損失額の合計は3億1800万円に上ります。
参考までに利益を出した人の上位10件も掲載しておきます。
利益額順位 | 利益額 |
10位 | 4,451,142円 |
9位 | 4,491,726円 |
8位 | 5,010,662円 |
7位 | 5,240,273円 |
6位 | 5,408,265円 |
5位 | 5,692,231円 |
4位 | 6,296,057円 |
3位 | 8,243,135円 |
2位 | 8,313,811円 |
1位 | 11,699,410円 |
わずか1ヵ月間で数百万円~1200万円弱の利益を得ており、とても夢がある数字が並んでいます。ただし、10件の合計値は6500万円であり、先ほどの損失額の上位10件を比較すると、利益額の方が圧倒的に小さな数字であることは認識しておくべきです。
■儲けた人と損した人の割合
5216人分のデータを全件分析して、利益を出した人と損した人の割合を抽出してみます。下のグラフは、5216人が1ヵ月間で得た収益額を大きい人から順にプロットした結果です。
・利益を獲得できた人:2,531名(48.5%)
・損失を出してしまった人:2,685名(51.5%)
FXで利益を出せている人は48.5%です。意外と多いですね。次に利益額と損失額を比較してみます。
■儲けた人の総額と損した人の総額比較
儲けた人と損した人の数はほぼ同数でしたが、これを金額に換算すると様相は一変します。利益額の総額は337,833,429円であるのに対して、損失額の総額は1,327,455,753円であり、損失総額は利益総額の3.9倍に達しています。
利益獲得者と損失計上者は半々ですから、この結果は、日本人の多くが小さく儲けて大きく損する取引を行っていることを如実に反映していると考えます。
■利益の集中
FXでの利益がどの程度集中しているかを調べます。
利益獲得額上位者 | 利益合計額 | 全利益に占める割合 |
10人 | 6,485万円 | 19% |
50人 | 15,519万円 | 46% |
100人 | 19,797万円 | 59% |
200人 | 24,430万円 | 72% |
前述のデータでは、5216名が参加したFX取引で利益を獲得した人は2,531名で、その合計は3億3783万円でした。これに上表の結果を照らし合わせると、利益獲得者上位0.4%(10人)に獲得利益の19%が集中していることが分かります。大きく儲けられる人は、ほんの一握りのようです。
■総資産額と収益率の関係
総資産額の高い人はそれなりに、FXで成功している人たちの可能性が高いという仮説のもと、総資産額の多寡によるFXの収益率違いを調べてみます。
下のグラフは、総資産と収益率を軸にとり5216件のデータをプロットした結果です。
グラフを見ると総資産が億を超えている人たちでも、収益率がマイナスとなっており、FXで勝つことの難しさが伺えます。ただ、グラフが示している重要な事実はこの点ではありません。
注目すべきは、総資産が増えるにつれて収益率のバラツキが0付近に収束している点です。いずれの人も収益率の振れ幅は、数%にとどまっています。これは、総資産が多い人の大半が低レバレッジで運用しているか、損切りを徹底しているか、または双方を実施しているためだと推測できます。
50%を超えるような超高収益(赤点線の部分)は、総資産の少ない領域でしか存在しないのです。
※総資産:前月最終営業日終了時点での預かり金額+ポジション評価額
※収益率:{ (前月末の総資産+前月の出金額) - (前月初の総資産+前月の入金額)} / (前月初の総資産+前月の入金額)
※損切り:損失が拡大しないように、予め決めた水準に達したら取引清算する手法
■所感
今回の調査では以下のことが判明しました。
・人の数でみるとFXで儲けている人と損している人は半々
・金額でみるとFXで損する額は儲ける額の3.9倍
・獲得利益はわずかな人に集中している
・多額の資産を持つ人ほど堅実な取引を実践しており収益率の振れ幅は数%
最後に、これらの情報をもとにFXで勝つための条件を考察してみます。
FXで継続的に利益を得るには、損切りが必須であると言われます。今回の調査では、まさしく “損切り”の大切さが明らかになったと考えます。
多額の資産を持っている人は例外なく、収益率の振れ幅を低く抑えており損切りを徹底していることが分かます。反対に資産の少ない人たちは、ハイレバレッジで高い収益率を狙い、損切りも甘いため、収益率が-100%に達してしまっています。このような取引に陥ってしまうのは、FXの本質を見間違っているためだと推測できます。
FXは高い勝率を確保して短期間に大きく稼ぐ投資ではなく、損切りにより負けたときの損失を最小化して長期間かけて数%ずつ資産を増やす投資なのです。極論すれば、利益を獲得できた時以上に、自身の読みが外れた際にその損失を最小限にくい止められた時に、喜びを感じられるようでなければ勝ち続けるのは難しいと思います。“小さく損して大きく儲ける”が大原則となります。
FXに寄らずどんな投資でもそうなのかも知れませんが、夢だけを追って限度を超えたリスクを取るのではなく、厳格なリスク管理のもと堅実に少しずつ資産を増やしていくことが肝要だと思います。
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