2005年9月24日(土)「しんぶん赤旗」
主張
川辺川ダム
推進は“ムダ削減”に逆行する
根拠のなさが明白になった熊本県の川辺川ダム建設計画。それでも北側国土交通相(公明党)は、「一日も早く完成する必要がある」といい続けています。
十五日、国土交通省が、熊本県収用委員会に提出していた土地と漁業権の強制収用のための申請を取り下げる決定を行いました。これで川辺川ダム建設の計画は振り出しに戻ったのに、北側国土交通相は、ダム建設を推進するというのです。
■ダムに頼らない治水を
川辺川ダム建設計画は、事業費が少なく見積もっても三千三百億円という巨大公共事業です。これまで二千億円が使われています。“ムダを徹底してなくす”といいながら、白紙に戻った事業に今後も、税金を湯水のように使うというのですから、あきれます。
川辺川ダムは、一九六六年に建設省(現国土交通省)が計画を発表し、約四十年がたつものの、ダム本体の建設は着工していません。国があげるダムの必要性について、住民の納得が得られないからです。
利水については、農家の半数が、「ダムの水はいらない」と訴えた裁判で二〇〇三年五月、国が敗訴しました。これを受けて、国土交通省はダム計画の見直しを迫られましたが、新たな計画をつくる作業が進まないため、収用委員会から勧告を受けて、申請の取り下げに至りました。
それにもかかわらず、小泉内閣は、「利水の必要性は低くなっているが、治水の必要性はむしろ高まっている」(国交相)と、ダム計画に固執しています。
しかし、計画から約四十年、ダムの必要性より、ダムに頼らない治水対策の必要性こそ高まっています。流域一帯では、昨年は台風16号、今年は台風14号と、大雨による災害に見舞われましたが、必要だったのは、堤防の強化や、川底のたまった土砂の撤去などいずれもダムに頼らない治水対策でした。
地球温暖化の影響もあり、気候の変動は当初の想定を超える場合がしばしばです。河川改修や森林の保水力も変わります。走り出したら止まらない大型公共事業はこれらの変化にも対応できない重大な欠陥があります。
小泉内閣は、目的を失った川辺川ダムの建設計画をきっぱり断念すべきです。
その点で、川辺川ダム建設をめぐる政・官・業の癒着をたちきることは、大きな課題です。政治家と企業との癒着について、日本共産党は、事業の受注企業(八十三社)が、自民党熊本県連に一九八六年から二〇〇〇年まで約四億五千万円にのぼる政治献金を行っていることを明らかにしてきました(〇二年六月)。
■政官業の癒着にメスを
官僚と企業の関係について、この十五日、熊本県議会で、日本共産党の松岡徹県議が明らかにしました。二〇〇〇年から〇五年六月まで環境、設計、測量などの調査を受注した企業の七割までが国土交通省九州地方整備局の元官僚を受け入れています。企業が受け取った調査費は単年度十三億―二十五億円と、球磨川の河川改修事業費に匹敵します。国土交通省が、ダム本体の予算を見送った二〇〇四年度も十三億円もの発注がされています。元官僚が理事長を務める財団法人の六年間で三十一件、十五億円の受注は、すべて競争なしの契約です。
税金のムダ遣いをなくすうえでもこのような政官業の癒着にメスを入れるべきです。