「痛ましい出来事」、「慙愧の念に堪えません」、「ご批判は我々が受けるべきもの」―。そこにつづられた言葉には、確かに遠藤社長の木村さんへの思い、番組づくりへの反省、今後の検証への決意がこもっていた。しかし、じっくり読んだ私の思いは一つ。この言葉はタイピングされた文字でなく、どうしても遠藤社長の口から、その生の声で聞きたかった。
緊急事態宣言が解除されたばかりの現状で毎回、50人以上の記者が詰めかける社長会見を開くことが適切でないことは理解している。自粛前最後の会見となった3月27日も同局が1階玄関で記者の検温と手の消毒を徹底。会議室でも記者と記者の間を空けるように広報部員が懸命に声がけしていたことも覚えている。
それでも「女子プロレス界の希望」とまで言われた22歳が亡くなった今回の件だけは、遠藤社長が出席しての生のやり取りでの説明が必要だったと、私は思う。
Netflix(ネットフリックス)での先行配信時にすでに木村さんの言動に多くの批判が集まっていた問題の「第38話」を地上波でも放送した上、番組の公式YouTubeでも木村さんが男性メンバーに激怒した「コスチューム事件」を取り上げた動画をアップ。火に油を注いだ形の同局の姿勢には問題があったし、番組の公式ツイッターには木村さんの名誉のため、いわゆる“やらせ”に似た演出上の問題がなかったかの公表を求めるコメントまで集まっている。
さらに言えば、誰が見ても番組のせいで、一気にヒールとなってしまった彼女の個人SNSが炎上する可能性もフジが十分、考慮し、監視されるべきだったと思うし、米国では自殺者も相次いでいるリアリティー番組出演者への配慮に決定的に欠けていたのは事実だと思う。だからこそ、遠藤社長の思いを聞きたかった。
ここまで、同局は入局10年目の一人の女性アナウンサーに木村さんへの思いを代弁させてきた。
悲劇から2日たった25日深夜のニュース番組「Live News α」。キャスターの三田友梨佳アナウンサー(33)は一切、原稿を読まず、カメラを見つめて語りかけた。「テレビに出る人にも心があります。ですが、SNSだけに全ての原因があるとは言えないと思います。私自身、テレビをつくる身として、どうしたら防げたのか、どれだけ辛い思いをされていたのか、番組とはどうあるべきなのか、しっかり考えていきたいと思います。心よりお悔やみ申し上げます」―。
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