【コラム】コロナ禍の影響が土地価格にも!? 国が公表する「公示地価」「路線価」「基準地価」って何が違うの・・・
新型コロナウイルス感染拡大の影響が、住宅市場にも影響がおよびはじめている。新築マンションを中心に下落するのではないかと予想されているが、7月1日に国税庁から公表された2020年路線価は、下がるどころか高くなっている。また、今年3月18日に国道交通省が発表した公示地価も昨年より高い。不動産の購入を考えていた人にとっては、「一体、何を目安に買えばよいのか」と迷うところだが、路線価?公示地価?・・・土地価格に違いはあるのか?
都市部ではこれまで、住宅価格は新築マンションがけん引するかたちで、中古マンション、戸建住宅の価格を上昇させてきた。ところが今年は、コロナ禍の影響で消費者の買い控えが広がりつつあり、新築マンションを中心に高騰してきた住宅価格は一時の勢いはなくなっている。住宅価格が下がれば、これから買う人にとってうれしい話だが、国税庁が7月1日に公表した路線価は5年連続上昇傾向だ。また、3月18日に国土交通省から発表された公示地価も昨年より上がっている。
今買った方が得なのか、もう少し待った方が得なのか、住宅購入を考えていた人にとっては思案のしどころだが、路線価、公示地価など、住宅購入を考える人は何を参考にしたら良いのだろうか。そもそも、路線価、公示地価の違いは何だろうか。
実は、国内の土地評価の指標には、公示地価、路線価の他にも基準地価がある。さらに、民間の不動産取引においては、実勢価格という指標もある。何がどう違うのか、説明できる人も少ない。
売買は公示価格、相続税は路線価で判断
違いを簡単に説明すると、公表する役所と時期、何のために発表しているかを押さえておくことだ。
【公示地価】(3月中旬 国土交通省)
国土交通省が3月中旬に発表するのが「地価公示」。地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会によって決められ、公共用地の取得、金融機関の担保評価、企業が保有する土地の時価評価の基準・指標としても活用される。令和2年は、2万6千地点で実施されている。
「地価公示」は、「公示地価」ともいわれるが、大きな違いはなく、簡単に言ってしまえば、国から公表された土地価格。毎年1月1日時点の土地評価で、国土交通省の土地鑑定委員会によって決められ、公共用地の取得、金融機関の担保評価、企業が保有する土地の時価評価の基準・指標としても活用される。
評価方法は、都市計画区域のある標準的な土地について、不動産鑑定士2名がそれぞれ標準地を鑑定し、最新の取引事例やその土地を取引した際に想定される収益などを分析して評価する。その上で算出された数値を調整し、公示地価を決定する。なお、公示地価は、建物の価値などに左右されないよう更地として評価、土地の用途を「住宅地」「商業地」「工業地」などに分類して発表する。
【路線価】(7月1日 国税庁)
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」(一つひとつの土地の固定資産税評価額を決める際の基準となる価格)との2種類がある。しかし、一般的に路線価といえば「相続税路線価」を指し、7月1日に国税庁が公表したものを指す。路線価も公示地価と同様に1月1日時点の土地評価になるが、計測する地点が公示地価より多いため、集計に時間がかかり7月になる。主に相続税や贈与税などの算定基準となる指標だ。
路線価は「この道路に接している土地は1㎡いくら」と、道路ごとに細かく指定してある。ただ、路線価は市場でやりとりをされる金額の8割程度の金額となっており、一般の土地取引価格よりも路線価で評価した土地の価値は目減りする。
具体的には、宅地が面している道路の路線価を確認し、その値をもとに宅地の相続税評価額を計算する。たとえば、宅地の面積が100㎡で、この宅地が面している道路が一つだけだったとすると、その道路の路線価は100万円だった(路線価は1㎡あたりの価額で、単価は「千円」で記載されている)。
つまり、この宅地の評価額は100万円×100㎡=1億円
相続シーンなら、評価額1億円の宅地を相続したということになる。
路線価には、固定資産税や都市計画税・不動産取得税・登録免許税の基となる固定資産税路線価と、相続税や贈与税の基となる相続税路線価がある。単に路線価と言った場合、相続税路線価を指すことが多い。
【基準地価】(9月中旬 国土交通省)
9月中旬に国土交通省が発表するのが「基準地価」。公示地価とほぼ同じような意味合いだが、調査主体は地方自治体。7月1日時点の全国2万か所以上の基準地を対象に、1カ所につき1人以上の不動産鑑定士が評価する。さらに、公示地価が都市計画区域内を主な対象とするのに対して、基準地価は都市計画区域外の住宅地、商業地、工業地、宅地ではない林地なども含んでいる。
【実勢価格】
実勢価格は、実際に不動産取引が成立したときの価格だ。行政機関が決める価格ではなく、売り手側や買い手側の希望価格があり、最終的に取引が行われた金額が実勢価格となる。実勢価格という言葉は、不動産に限ったものではない。原油などもでも使う。
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著者: 宮口貴志
KaikeiZine編集長
税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
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