2004年04月29日

講座:ゲイ・中世日本

0077f9d6.jpgほ、ほ、ほもですわ。

昔、偉いお坊さんは、「お稚児さん」を抱えていました。表向きは小姓だけれど実体はしばしば愛人である少年のことです。
当時の僧侶は女色を禁じられていたので、男色が盛んだったのです。

醍醐寺の秘宝、『稚児之草紙』。僧侶のためのポルノ短篇絵巻です。作者未詳、1321年。
情報が少なすぎるので、『夜想』15号・少年特集の記事の受け売りをいたします。
(ちなみに画像の原画は昭和52年に“忠実な模写”をした模本から採ったとかで、本物は門外不出。三島由紀夫は本物を目にした幸運な人で、小説『禁色』において「ほほゑましい稚拙な肉感を湛へ.....」とほめております。)

***画の横の文句***
(稚児が僧侶によりよく仕えるために、下男を相手に性的な訓練をしています。愛欲に萌えながら交わることを許されない下男は、たまったものではありません。)
稚児 「では、もう一寸深く突き入れてごらん。さあ、どうだね。」
下男 「何とまあ仕方のない事でしょうか。世間並の御奉公もあるというのに、私の一物が勃起して我慢出来なくなるので、毎夜せんづりをかくので、男根の腰が弱くなり、女房に憎まれておるような次第です。」


男色ネタの中では、まっ先に『稚児之草紙』を取り上げたいと思いました。
後世に流行した武士的な男色とはちょっとちがう感じがするからです。

どの短篇もあらすじは、「ステディ(死語)な僧侶がいる稚児と、彼に横恋慕する下男や修行僧が、一時的に戯れる」という話のようです。
前文では、稚児が僧侶に仕えるときの忠実な心ばえが重視されています。また稚児は、下男や修行僧と戯れる際には、僧侶に隠れて戯れている。
一応、浮気=罪ではあったのでしょう。
でも、お馬鹿で陽気なのですわ。
『夜想』解説から一部抜き書き。
「主題は『主ある稚児』の姦通?物語りである。しかしこれを『不道徳』とせず、仏の衆生への愛の如く、あまねく『施す』徳を賞賛しており、その点おおらかな好色譚である。」

江戸時代になると、主ある稚児が他の男と情を交わすことは、罪とされてしまうのだそうです。あたかも結婚のような独占契約になります。
それはそうでしょうね。何かを独占したがるというのは、攻撃性や支配力を重んじる男性上位社会の特色ですから。武士が支配した時代はまさにそれです。
独占的な価値観に染まった男色は、暗いのです。精神的に尽くす愛を重んじます。武士に殉じる少年小姓と、少年のはかなさを愛でる武士のイメージ。
暗さがかえって倒錯的です。

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***画の横の文句***
(若い僧が、貴い僧に仕える稚児に横恋慕しました。やがて首尾よく思いを遂げ、こっそり通って戯れるようになりました。)
若い僧 「生まれて以来、見ながら行った事は初めて。良いやり方だと思います。おお何と良い形でおいでか。」
稚児 「そんなに明るくして(燈火をかざすので)何て騒がしい。何をおっしゃる。」

あたくしは『稚児之草紙』の性を絶賛するつもりはありません。
だって聖職者の児童買春でしょう。かなり鬼畜ですわ。
身売りや略取によって無理やり稚児にされた少年は多かったはず。今日貧しい国々で起きている少年少女搾取と同じです。
それでも、すばらしい草紙ですわ。この何ともいえない可愛い色香。
日本の性風俗史を知る上でも貴重な文献と思います。

国は国宝に指定して、上野公園の国立博物館で展示するべきです。
西郷どんも喜びますわ。 (薩摩は男色で有名でした。)

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 万里アンナさんのブログ「官能の大海/エロ民俗」で紹介された、『稚児之草紙』を見て感激。そして色々検索して見つけた「浮世絵春画と男色」という本を購入しました。  これらの絵を見てこれまで引っ掛かっていたものがちょっとすっきり。と、言うのは、室町から江戸時代
『稚児之草紙』と月代、そして「契り」【サー・トーマスの「美少年へ捧げる」】at 2004年11月01日 00:02
来年の大河、タッキーの義経、美しいですね、楽しみですね[:ラブ:] 本来成人前(少なくとも10代前半まで)のお稚児さんファッション、オロナミンCのCMでも違和感ないもの。 NHK大河ドラマ「義経」 書店にも義経関連本いろいろ出てますけど、アイヌのアテルイになった
司馬遼太郎「義経」ほか義経本ガイド【あんどおのJUGEM】at 2004年12月30日 22:50
この記事へのコメント
今晩は。稲垣足穂氏の著書から「稚児之草紙」を検索してやってきました。
 中世の風俗を背景にした歴史時代小説をものにしたいと思っています。既に一冊「前田慶次郎異聞」という小説を刊行しました。「花の慶次」で有名な武将の事跡を追って話は展開しますが、主題はその家臣と美少年剣士の契りの顛末です。
 寺社の「稚児」という存在と「主と小姓」、それが西鶴の「武道伝来記」へと通俗化していく訳ですが、日本特有のその存在理由を追及して行きたいと思います。
 よろしくお願いします。上野公園の国立博物館で展示するべきというのは、全く同感です。でも18禁ですね。やっぱり。
Posted by 泊瀬 at 2004年10月13日 01:25
 ご訪問ありがとうございます。小説ぜひ拝読しとうございます。
 日本特有の存在理由...わくわくしますね。
 国立博物館は18禁の部屋を設けるべきです!世界のコレクターの垂涎の的である浮世絵(つまり春画)などを展示するのです。
Posted by 万里アンナ at 2004年10月14日 19:45
 また書き込ませて頂きます。
>小説ぜひ拝読しとうございます。
 あわわ・・!どうかよろしくお願い致しますm=m
 そうです、国立博物館たるもの全てのゲイ術をチン列すべきです!・・・お下品ですみませんm=m
 足穂いわく日本の古来の男色は西洋などのものとは全く違う次元のものと言っており、私も一つの形、戦国時代の「戦さの中に共に生きそして死ぬ」契りを追求して行きたいと思います。
Posted by 泊瀬 at 2004年10月14日 21:21