官能の大海／エロ民俗

　先進国では、職業上で男女の性差を縮めることは、近年好まれています。でも「第三の性」の存在は、あまり許容されているとはいえません。
　これに対して、インドでは「第三の性」が認められています。そのかわり、男女の性差への許容度はとても低いのです。

　現代インドの同性愛事情は寒々としています。けれど抜け道はどんなところにも存在します。
　抜け道のない社会なんていずれ窒息してしまうでしょう。柔軟と硬直が混在するインドならではの制度をご紹介します。

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　その人たちはヒジュラHijraとよばれています。
　インドのカースト社会において、特殊な地位をもっています。いわば「どこにも属さない人々」です。
　彼女ら（彼ら）は、生物学的には男性。セクシュアリティは女性です。女性のようにふるまいます。

　ヒジュラは生まれつきインターセックス（ふたなり、両性具有）である。幼少時にヒジュラ集団に見い出され、連れていかれてヒジュラになる。一般にはそう信じられています。
　が実際には、セクシュアリティに悩んだ若い男性が、自ら入門することが多いそうです。本当のインターセックスは稀です。
　後に述べる理由によって、ちむ×を持つヒジュラは、好まれません。だから去勢手術を受ける人がいます。
　でも受けない人もいます。受けない理由は、経済的事情や、決心がつかないなどです。

　ヒジュラ社会に入門するにあたって、ホモセクシュアルであるか否かはさほど問題にされません。それよりも、「男ではない（と自分で思っている）こと」「女性に対して性的不能であること」が重視されるようです。
　この考え方は注目に価すると思います。男性的であることが過大評価される社会を暗示してはいますが、それとともに、はみだした者を「心身の不調」ではなく、「別の性」として認めてあげる寛大さをあらわしているからです。

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　ヒジュラの生業は、表向きは芸能ということになっています。結婚式や赤ちゃんの誕生式などのめでたい席に招かれて、芸を披露するのです。
　歌、踊り、寸劇。彼女らのにぎやかでヒワイな芸は人気があります。インドの中でも特に保守的な人々は、ヒジュラを招きたがらないようですが。

　ヒジュラはしばしば芸能の押し売りをします。頼まれてもいないのに宴席に押しかけ、勝手に芸を披露します。
　ホスト側がご祝儀を渋ると、ヒジュラは集団で脅しにかかります。いわく、「けちんぼ。呪ってやる～」。そして払うまで大騒ぎしながら居座ります。
　ヒジュラには魔力があると信じられています。彼女らの恨みを買うと、殿方は不能になったり、悪運に見舞われるとか。最も不吉な呪いは、ヒジュラが陰部を露出すること。スカートをたくし上げられて「さあ見せるわよ、見せるわよッ」と迫られたら、インド人ならば渋々払わざるをえません。
　それって恐喝じゃん！！と思いますけれども、訴えたところで警察は動かないのです。インドの警察は、ただでさえ世のため人のためには動かないんですけど、ヒジュラとは暗黙の了解があり、諸事に介入しないのだそうです。おまわりさんもちむ×が立たなくなるのはイヤなんでしょうね。

　ヒジュラが芸をするとき、未去勢の者は未去勢の事実を隠します。ちむ×をぶらさげているのが見つかると、「にせもの」といわれて追い出されることがあるからです。
　ヒジュラの価値とは、男でもなく女でもないところにあるのです。女のようなふるまいはしますけれども．．．。枠にはまらない存在を、人は畏怖するのでしょう。
　男として男を愛したいためにヒジュラになる、ホモセクシュアルの男性もいます。ヘテロだけれども生計のためにヒジュラになる貧しい男性もいます。でもそういう人たちの存在は喜ばれません。

　ヒジュラの生活は厳しく、芸能だけで食べていくのはほとんど不可能です。で、売春もします。
　ヒジュラに興味を示す殿方や、ヒジュラとは知らずにひっかかった殿方を相手にです。
　お客の中から愛するダーリンを見つける、幸運なヒジュラもいます。


***画像***
学校行事（！）で踊るヒジュラ。
おっぱいは詰め物よッ♪
（『ヒジュラ──男でもなく女でもなく』写真模写）