ほぼ日刊イトイ新聞

2020-07-03

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・えー、日頃「上司」の役をやることの多いワタクシから、
 本日は、特別にですね、「上司」というものが
 なんだかいいアイディアを出すことが多いような気がする
 現象についての「種明かし」をお教えしたいと存じます。

 一般的に、ひとりの人間がものを考えるときには、
 じぶんの脳内に持っている知識の在庫を使って、
 じぶんなりの編集方法で「答え」を出すことになります。
 食材が入っている冷蔵庫があって、
 それを使って料理して、自前のお皿に盛り付ける。
 そんな感じを想像してみてください、そんな感じでしょ? 
 チームで料理をしても、やっぱり似たようなものです。
 あんまりとんでもないものでは食べられないし、
 材料の値段だってある程度は限られているし、
 お皿をわざわざ買ってくるわけにもいかないでしょう。
 こうしてできた料理を、上司のところに持っていきます。
 けっこうおいしそうにできたし、コストもまぁまぁで、
 これならいちおうプロとして恥ずかしくないね、
 なんてね、半分くらいは達成感さえ感じながら、
 さてプレゼンテーション、試食の段階ですね。

 上司、つまりワタクシは、機嫌がわるいわけじゃない。
 「おお、できたか。よさそうじゃないか」と反応します。
 だって、いいもの、いい料理ができたらうれしいのは、
 その上司も同じなんですから、期待でいっぱいです。
 食べてみて言います「なるほど、できているねぇ」。
 さらに「ぜんぜんわるくない」、「うまいうまい」。
 「これでもう、いいくらいだ」とうれしそうに言います。
 (じぶんでつくっても、こうなったかもしれない)と、
 上司、ワタクシは思っているのですが、続けて言います。
 「さぁ、ここで出発点に立ったね」と。
 「考えるのは、いよいよここからだぞ」とよろこびます。
 すでにできているものを前にして、試食して、
 そこからが上司の仕事なのだから、ある意味簡単です。
 「もっとこうだったらいいなぁ」ということを、
 食べる側の気持ちで素直に考えていけばいいだけです。
 以上が、種明かしです。
 予算のことだとか、技術のことだとかあとで考える。
 まず、「ここからが仕事だ」が、上司の秘密であります。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
じぶんのなかに上司(オレ)を住まわせろという提案です。


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