この度、新著『世界「新」経済戦争』を上梓した。
世界の大国の覇権争いというのは、最終的に誰が世界経済を支配するかという競争だと、最近、遅ればせながら気づいた。軍事増強や、外交的成果は、すべて経済を支配するための手段として存在するのであって、軍事大国や外交大国になること自体が目的ではないのだ。世界の覇権は経済を軸にして決定される。
ヒトラーがウクライナに侵攻したり、フランスとの国境地域ラインラントを取り戻したりしたのは、一見、軍事力の誇示ようだが、前者は広大な穀倉地帯を狙ったわけだし、後者の目標は石炭など地下資源だった。つまり、最終的な目標はやはり自国経済の強化だった。
現在もその構造は変わらず、グローバルプレーヤーであるアメリカも、ロシアも、EUも、トルコも、サウジも皆、自分たちの経済をさらに発展させるため、あるいは、今、ある経済力を守り切るために軍事力の強化を怠らない。
そう思って見てみると、現在、世界第2の経済大国である中国の発展というのは、極めて変則的だ。ここでは、まず経済だけが異常な勢いで成長し、軍事はもちろん、ありとあらゆるものがそれに追いつかなかった。
彼らの武器はというと、軍事力でも、外交力でもなく、未曾有の人口だったのだ。そして、その人口がもたらす消費の威力に、世界の先進国すら抗えなかった。
中国の消費力は未知数で、しかもまだまだ限りなく膨張しそうだという大いなる期待は、やがて中国に対する畏れとなり、いつしか多くの国を金縛りにした。それは、コロナ禍という新しい状況を通過しつつある今でさえも、ほぼ変わることなく続いている。
ただ、中国の凄いところは、そんな自分たちの威力に胡座をかかないことだった。彼らは、経済成長を自国の利益として長く維持するためには強大な軍事力が必要だということを肝に銘じ、着々とそれを実行に移してきた。彼らが最終的に狙っているのが世界の覇権だとすれば、当然の道筋である。