パルシステムの担当者は、「アマゾンフレッシュなどはスポット的な注文に対応しているのに対し、生協は週1回など定期的にまとめて配達する仕組みで、独自商品も多い。すみ分けができている」と話す。共働き夫婦など忙しい世帯のために、従来から「置き配」にも対応。多品種をまとめて注文する方法は生活リズムの中に組み込まれており、組合員が定着しやすいという特徴もある。

 ただ、コロナ禍で注文が増えた結果、問題も起きた。「セットセンター」と呼ばれる物流施設では、商品をベルトコンベヤーで流して、従業員が組合員別に仕分けする。

 1日で処理できる商品数220万点に対し、270万点分の注文が寄せられた。従来10時間かけて行っていた作業を、12時間かけてもこなせなくなったのだ。

 そのため組合員に対し、冷凍食品やパンなど一部の商品を1人1点の注文に限定したり、セールを取りやめるなどの措置を取った。

 米やパンなどは当初、買いだめによる購入が発生した。だが、食品が安定して供給されているとの認識が広がってからは、日常的なニーズでこれらの商品が買われるようになった。それでも購入者の数や頻度が増えているため、こうした対応に追われたのだ。

 また青果はスーパーなどで値上がりしたが、生協は値上げしない。その結果、青果への注文が殺到するといった事態も起きている。

 宅配の頻度も増えたため、トラックによる輸送の現場でも特別の対応をした。1台のトラックに2人が乗り、1人が配達している間にもう1人が庫内の商品を整理する。この作業によって配送効率が上がるのだという。

新規加入を拒否せず
危機下で人気集めた助け合いの精神

 ただそれでも、注文制限や欠品については、組合員から厳しい声が寄せられた。組合員に配布された資料には、実際に組合員から寄せられた意見や質問と、パルシステム側の回答が書かれている。

「新規の加入受付は止めてほしい」

 欠品に怒る利用者の声であろう。パルシステム側の回答は以下のようなものだった。

「この間の一斉休業要請や外出自粛要請により日常生活が困難になった方々が多数おられます。人々の助け合いによりつくられた生協として、新たに加入を希望する方を拒むことはできません」――。

 労働者や庶民による商品の共同購入が、生協の発端だ。こうした助け合いの精神が、アマゾンの挑戦すらはねのけ、危機下で生協が頼りにされた理由だったのかもしれない。

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