43-2. 阿漕、使いをする

阿漕から姫からの伝言を聞いた少将は、とても悲しくて、姫への想いがまさり、直衣(のうし)の袖に顔を押し当てて崩れ落ち、激しくむせび泣いた。

阿漕はその様子を見て、ひどくいたわしいと思う。

少将はしばらくためらうと、

「阿漕、もう一度姫に伝えてくれ。

『愛しい我が姫、私も悲しみのあまりにこれ以上言葉もないのですが。

あふことの 難くなりぬと 聞く宵は 明日を待つべき 心こそせね

(逢うことが難しくなったと聞いたこの夜、絶望のあまりに明日を待つ気になれないのです)

私も、そしてあなたもきっとこんな気分でしょう。でも、そうは思わず、お互い希望を持ちましょう。』

と。」

こう言付かり、阿漕はまた姫のもとへと向かった。しかしその道の途中、思いがけず音を立て、北の方はその音にふと目を覚ましてしまった。

「そこにいるのは、誰だい?」
と声がするので、阿漕は息を殺し、急いで姫のもとへと向かった。

雑舎の戸口で、阿漕は泣く泣く少将の伝言を伝えた。

「わたくしも

短しと 人の心を 疑いし わが心こそ まづは消えけれ

(あなたの愛情が一時のものだろうと疑っていたわたくしの心こそ、まずは死んで消えるべきなのですね)

これがわたくしの思いだと、少将に伝えておくれ。」
こう姫君の言葉を聞くのもとりあえず、阿漕は北の方に見つからないうちに急いで少将のもとへと戻った。

「申し訳ございません。北の方が目を覚ましてしまい、姫様の言葉を十分に承ることができませんでした。」

阿漕からそう聞き、少将はとりあえず今すぐに北の方を殺しておきたいと思った。

その夜、誰もが姫を思って嘆き明かし、夜が明けて帰ろうとするその出がけに、少将は

「姫を助け出す機会があったら、すぐにでも教えてくれ。姫はどんなに苦しい思いをしていることだろう。」
そう情深く言い置いて帰っていった。

帯刀は、自分が落窪姫と密通していたというでまを中納言も聞いただろうと思い、中納言の屋敷にいても肩身が狭いので、牛車の尻に乗ってしょんぼりと帰っていった。
 
 
 * * * * *
 

少将、すごい解決案です!!

単純明快にして今まで誰も考えなかったことですが・・・。

確かに、北の方が死ぬとこの物語は終わりますね!

・・・物騒な話です。


それにしても帯刀は立つ瀬がありませんね。

阿漕や少将からは手紙を落とした能無し。

中納言家からは身分違いの恋をした身のほど知らず。

阿漕や少将が帯刀のことを責めている描写はありませんが、彼自身も責任を感じて恥じているのでしょう。

その割には、後ろとはいえきっちり牛車に乗っているのですが。




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帯刀が切腹するといけないので、刀を隠しておきましょう。