提案のつもりが政策決定と思われ… コロナ対策専門家会議が陥ったジレンマ
2020年6月25日 05時53分
「接触の8割削減や営業自粛といった対策は生活に立ち入る部分だったためか、特に影響が大きかった」。専門家会議座長の脇田隆字(たかじ)・国立感染症研究所長は24日の記者会見後、政府への提案がいつの間にか政府の政策だと思われてしまったジレンマをこう振り返った。会議のメンバーによると、こうした提案に抗議や嫌がらせも受けたという。
会議は2月14日に発足。感染が拡大するにつれ、「密集を避けるため買い物は1人で」「大型連休の帰省はオンラインで」など、提案が具体的になっていった。新型コロナウイルスの怖さがなかなか市民に伝わらなかったためだという。頻繁に会見を開いて強調すると露出が高まり、「政策や感染症対策を専門家会議が決めていると受け止められた」と脇田座長は話す。
罰則を伴わない緊急事態宣言でも感染を抑えることができたのは、専門家らの分かりやすい呼び掛けがあった側面は大きい。一方で、未知のウイルスだったために、提言するのがほとんど専門家会議に限られ、政府が頼り切るような場面も見られたのは確かだ。
政府が会議に代わって設置する新たな組織について、脇田座長らは「経済や差別など社会問題に詳しい専門家も交えては」と提案する。各分野に通じた専門家が活発に意見を出し合い、最後は政治が決断する。決断の理由は丁寧に説明し、その過程は透明性を確保する。そんな体制にすれば責任の所在もはっきりするはずだ。(井上靖史)
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