中小企業の団体である東京商工会議所が、2020年3月に実施したテレワーク導入率の調査によれば、従業員数300人以上の企業は57.1%。これが、50人以上300人未満の企業になると28.2%、50人未満の企業になると、なんと14.4%。小さな会社になればなるほど、テレワーク導入率は落ちている。この傾向はウィズコロナ時代になったところで、急には変わらないはずだ。
99.7%の中小企業で
「脱ハンコ」が進まない背景
では、なぜこうなってしまうのかというと、まず「コスパ」の問題がある。中小企業は体力的に、そこまで設備投資ができない。国がテレワーク導入に補助金を出してくれるといってもたかが知れているので、これまで通りに出社して、リアルの会議をして、紙の書類にハンコをつくやり取りを続けていた方が、会社としては懐が痛まない。つまり、現状維持の方が「安上がり」で済むのだ。
それに加えて、最も大きな障壁は「小さな会社になればなるほど、そこまでIT化の必要に迫られていない」という点である。
先ほど日本企業の99.7%は中小企業だと述べたが、実は日本の場合、その中でもとりわけ多いのが「小規模企業」だ。421万ある日本企業の87%、366.6万社を占めているこの「小規模企業」は、「製造業・その他」の場合は従業員20人以下、「商業・サービ業」では従業員5人以下と定義されている。
では、これくらいの規模の会社に「脱ハンコ」「リモートワーク」というものが、そこまで切実に必要とされているのかを考えていただきたい。
もちろん、あればあったでかなり便利だろう。社員は喜ぶ。しかし、なければないで、別にそこまで業務に差し障りはないのではないか。