客足戻らない宿泊・飲食サービス 「明日すら見えない」

2020年7月2日 06時00分
外国人を中心に宿泊客が激減している苦境を明かすデリス・グリーンさん =東京都新宿区のアンプラン新宿

外国人を中心に宿泊客が激減している苦境を明かすデリス・グリーンさん =東京都新宿区のアンプラン新宿

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 日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、代表的な指標の大企業製造業の業況判断指数(DI)が、3月の前回調査から26ポイント下落のマイナス34となった。大企業非製造業も25ポイント悪化のマイナス17に急落。新型コロナウイルスの影響で、ともにリーマン・ショック直後以来、11年ぶりの低水準となった。特に深刻なのは、外国人観光客の需要消失と自粛要請の影響をまともに受けた宿泊・飲食サービス。緊急事態宣言の解除後も客足が戻らず、経営者らの不安は大きくなっている。(嶋村光希子、森本智之)

◆スタッフ半分に辞めてもらい


 「外国人観光客が戻るにはまだ1年以上かかりそう」
 東京の新宿と神楽坂でゲストハウスと呼ばれる宿泊施設を運営する企業「フィーカ」。米国人のゼネラルマネージャー、デリス・グリーンさん(28)は静かに見通しを語った。
 6月短観では大企業の宿泊・飲食サービスのDIが32ポイント下落のマイナス91と過去最低を記録。フィーカのような中小企業も35ポイント下落のマイナス87まで落ち込んだ。
 フィーカの宿は外国人観光客らに人気だった。だがコロナ禍でキャンセルが続出し、神楽坂店の宿泊受け付けは7月末まで停止。新宿店は営業を続けるが、9割程度だった週末の客室稼働率は、ビジネス客向けの格安プランを打ち出した今も1割強にとどまる。
 「現場スタッフはアルバイトも含め40人いたが、半分近くは辞めてもらった」とグリーンさん。弁当販売や婚礼事業にも乗り出し、生き残りを図る。

◆東京の感染者増でまた客が遠のく


 飲食店も厳しい。東京都中野区のラーメン店「麺屋どうげんぼうず」は、持ち帰り商品の販売で持ちこたえてきた。だが緊急事態宣言解除後も客数は伸びない。東京都内の感染者数が増加傾向のここ数日は、逆に客数が減っているという。
 6月短観では3カ月先の景気を予測する先行きDIは大企業非製造業で3ポイント改善。日銀関係者は「底打ちの兆し」とみるが、DIの水準自体はマイナス14と低い。感染第2波への不安もあり、厳しい状況が続くとみる経営者が大半だ。
 「僕らは『不安の最前線』に立たされている。先のことを考える余裕もない」と、どうげんぼうずの店主近広直也さん(45)。近広さんは数年で返済する新たな融資を受ける検討もしたが「明日すら見えないのに」と断念した。今は「明日」を乗り切るために焼き豚などの通信販売も手掛け、懸命に営業を続けている。

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