景気の急激悪化 雇用維持に全力傾けて

2020年7月2日 06時47分
 日銀短観で景況感がリーマン・ショック時に次ぐ落ち込みとなった。有効求人倍率も石油ショック以来の下落となり、経済は歴史的な試練に直面しつつある。今は雇用の維持に全力を傾ける時だ。
 一日発表の六月短観は主要指標である大企業製造業の景況感が、リーマン直後の二〇〇九年六月以来の低水準となった。さらにサービス業などの非製造業は東日本大震災後以来のマイナスとなった上、下落幅は過去最大を記録した。コロナ禍が観光や航空、飲食などに確実に打撃を与えていることが統計上裏打ちされたといえる。
 経済対策の中で、最優先すべき課題が雇用維持であることに異論はないだろう。五月の労働力調査で完全失業率は0・3ポイント上昇の2・9%と世界の中では踏みとどまっている印象を受けるが、内実をみると深刻な状況が浮かぶ。
 まず休業者の問題だ。解雇には至らないが自宅待機など休業を言い渡されている労働者は、緊急事態宣言後前年同月比二百七十四万人増え四百二十三万人に達した。
 この人々は失業率には反映されないが、「失業予備軍」であることは否定できない。すでに四月から五月にかけて休業者のうち十万人が失業した。
 政府は失業対策として雇用調整助成金の活用を軸に据えている。確かに六月末段階で延べ三百六十六万人に助成金が支払われた。
 だが制度はあくまで一時しのぎにすぎない。申請が殺到して支給が遅れ、その間に経営が悪化して倒産した例もある。
 制度は今回ほど大規模な雇用悪化に対応するよう設計されていない。コロナ禍が長期戦の様相を呈する中、強力な新制度を早急に導入すべきだろう。
 経済全体を見渡すと宅配などを含めた流通関連は依然働き手を必要としている。「ステイホーム」下で職場を維持する努力も各企業で進んでいる。
 こうした動きを察知し、労働移動の活性化や新たな職域を生み出す工夫も求められる。職の創造や求職のアレンジに向けた仕組みを官民一体で立ち上げてほしい。
 民間経済がこれほど激しく落ち込んでいる以上、公共事業による仕事の創出も不可避であろう。財政状況の厳しさはいうまでもないが、働く場の喪失は人々の尊厳を根こそぎ奪う。政府は雇用防衛への躊躇(ちゅうちょ)なき姿勢をより強くみせるべきだ。   

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