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(浅野 務) セミナーで
いろいろ厳しい話 聞いて来たよ｡

例の 老後資金が2000万円いる
ってやつ｡

(角田) ｢『二千万円問題』に
向けての資産運用｣？

その2000万だって
持ち家前提の話だし｡

(長嶋) えっ じゃあ 持ち家プラス
2000万 必要ってことですか？

うん 年金は当てになんないし

この先
給料が上がる見込みもないし｡

(角田) 働き方改革で
残業代は稼げないし｡

2000万なんて 無理だよな～｡

(小夏) こっちは
それどころじゃないっつうの｡

(亜紀)
大型連休って大ピンチだもんね｡

(小夏)
ここから ここまで 給料ゼロか｡

今月の家賃 どうしよう…｡

(井手) ハァ…
会社って 何で毎日あるんだろう｡

(三田) おはよう｡
おはよう｡

随分 落ちてるけど大丈夫？

(井手) ハァ…｡

(里中賢介) おはよう｡
(一同) おはようございます｡

(宇野) 何だ みんな
朝から覇気がないな どうした？

(永倉) 2000万 貯めるには
副業しかないですよ｡

ふく… 副業!?

(大前春子) あぁ…｡

(チャイム)

老後の2000万？ 今月の家賃？

そんなことより 目の前の仕事
さっさと やってください｡

(亜紀) はい｡
(小夏) はい｡

｢そんなこと｣って…｡

じゃあ 大前さんは
2000万 持ってるんですか？

2000万…｡

ユーロですか？ ドルですか？

持ってるぞ｡

ホントに持ってんのかな？
時給 すごいらしいからな｡

いや あり得ないだろ お前｡

ドルとか ユーロだったら…｡

とんでもない額だぞ｡

いや 副業もやってそうですし

スイス銀行に 大口の口座とか
あるかもしれませんよ｡

(宇野) いや ゴルゴ13か！

あの もしホントなら
今月の家賃 借りてもいいですか？

｢円｣は持っていません！

どうして
｢円｣は持ってないんですか？

日本は 沈没するからです｡

(キーボードを打つ音)

＜おごれる正社員は久しからず＞

＜今や 派遣なしに
会社は回らない＞

＜例えば この大前春子＞

＜彼女の辞書に
｢不可能｣と｢残業｣の文字はない＞

＜煩わしい人間関係は
一切排除し

3か月の契約終了とともに
どこへともなく去る＞

＜だが
スーパーハケン 大前春子が

なぜ 非正規社員の道を選んだかは
定かでない＞

?～

?～

?～


(小夏) 家賃のために
当分は かけそばにします｡

(亜紀) ん～ 私は素うどん｡

炭水化物だけじゃ
栄養 偏っちゃうけど｡

おごりますよ｡

(小夏) じゃあ
天ぷらそばに変更します！

先輩は 天ぷらうどんにしましょ｡

いや そんな新入社員に悪いよ｡

いいんです
僕 カレーしか おごりませんけど｡

その代わり

動画撮るの
手伝ってくれませんか？

(操作音)
(亜紀:小夏) いただきます！

(井手) ドゥドゥン！

ちょっと 顔出しは困ります｡

分かりました 後で加工します｡

どんな動画ですか？

『退屈な会社ライフ』
っていうんです｡

アクセス数は まだ ひと桁だけど｡

じゃあ ほとんど
誰も見てないってことですね｡

(井手) ん？
あ～ いえ…｡

じゃあ 始めます｡
(操作音)

はい！
『ユータンちゃんねる』で～す｡

今日 紹介するのは
うちの社食のカレー｡

これが 激うまなんです！

僕が リスペクトする

『社員食堂 全国カレー行脚』の
プージャさんも

なんと 三つ星をつけてま～す｡

(井手) あれ？

あれ？
大前さん！

社食 嫌いじゃなかったんですか？

社食は大っ嫌いですが

ここのカレーは大好きです
それが何か？

あぁ… ここのカレー

ホントに おいしいですよね｡
(操作音)

この本格的なカレーが
440円なんて

コスパも めちゃくちゃいいっす！

何撮ってんですか！
(操作音)

2人が440円で食べられるのは
里中課長のおかげなんだよ｡

どういうことですか？

10年以上前だけど
課長が会社に何度も掛け合って

派遣も 社員と同じ料金で
食べられるようになったんだ｡

そうなんですか｡

それも今日まで…
だから 食べ納めに来ました｡

えっ？

明日から
カレーの割引がなくなるので｡

770円になりますので
もう二度と来ません｡

770円!? 高っ！

私たち もう気軽に
社食は使えなくなるね｡

≪お疲れさまです≫
(一同) お疲れさまです｡

(宮部) やぁ 皆さん
そのまま そのまま｡

(宮部) 今日はね

ライスカレーが
無性に食べたくなってね｡

ハハハ…｡

おや 君もライスカレー？
はい｡

あ～ ここのはスパイスが効いてて
うまいからな｡

ええ｡

社長… あの価格変更ですが

なぜ急に値上げをするんですか？

お～ あれか｡

今度 社員食堂を
一般にも開放することにした｡

(小山田) 一般のお客さんには
普通に料金を払っていただく｡

派遣社員も
部外者という意味では

一般のお客さんと同じだろ？

ごもっともです｡

社員の値引きは
福利厚生で当然の権利ですし｡

しかし 4月から

同一労働 同一賃金の取り組みが
始まりました｡

社員も 派遣の人たちも
分け隔てなく

働きやすい職場を
目指すべきではないでしょうか｡

そんなもん 建前だろ？

社長…｡
社長！

うちのカレーは 評判いいですし

千客万来 間違いなしです｡
(宮部) うん｡

ライスカレーは
社員のソウルフードだ ハハハ…｡

こうやって ガッと かき込んで

全国津々浦々
営業に駆け回ったもんだ｡

(小山田)
社長 あのモーレツ時代を
思い出しますね｡

(宮部)
うん… では いただきましょう｡

(操作音)
(一同) いただきます｡

ばか 井手ばか… ばか｡

(牟田)
ひょっとして 春ちゃんか？

(牟田) やっぱり春ちゃんだ～｡

カレー食べてくれて うれしいよ｡

こんな日に会えるなんて…｡

俺 今日で ここ最後なんだ｡

コストカットで
バイト クビだってさ｡

どなたか存じあげませんが

カレーは
とてもおいしかったです｡

社食の一般開放って
部長のアイデアだったんですか！

フフっ まぁ…
いや何か うちの部で

いろいろ新規事業の作戦を
考えることになってさ｡

で まぁ 秘策として 提案したら

社長の 鶴のひと声で
採用になっちゃってさ｡

(一同) お～｡

ということなんで 何としても

社員食堂の
好感度 爆上げの結果を出すぞ｡

(一同) はい｡

里中 さっきは ハラハラしたぞ～｡

あっ…｡

で 何か いいアイデアないのか？

あぁ… 例えば

販売予定のふりかけやソースを
テーブルに配置して

評判や感想をリサーチするのは
どうでしょうか？

地味過ぎ｡

あっ カレーをイチ押しにして
いずれ

S＆Fの｢激うま社食カレー｣
レトルトパウチを

商品化できませんかね？

お～ いいね！
社長が喜びそうだよ｡

あのカレー
ネットでも評判になってんだろ？

はあ…
プージャも三つ星つけてます｡

プージャ？ 何だ？ それ｡

(井手) 人気グルメブロガーの
プージャさんです｡

(宇野) よし｡

カレーを目玉にしよう｡

無理｡

(宇野) ん？ 何か言った？

大前さん 何で無理なんですか？

さっき おいしそうに
カレー完食してたじゃないですか｡

(チャイム)
5時なので 失礼します｡

(宇野) おい…
まだミーティング中だぞ！

質問に答えろ！

残業 1秒もしないからな｡

いくら派遣でも
無責任過ぎんだろ｡

残業は 仕事のトロい社員が

お給料を水増しするために
するものです｡

失礼します｡

(宇野) ハァ～｡

何だっけ？

ちょっと休憩しましょうか｡

(小夏) あっ…｡

私も お先に失礼します｡

千葉ちゃん さっきの動画の続き
手伝ってくれない？

え～ 嫌です｡

お疲れさまでした｡

福岡さん｡
えっ…｡

手伝ってもらえませんか？

(井手)♪～ ベンベ ベンベン
ベンベンベン

♪～ ベンベンベン

♪～ ベンベ ベンベン ベン…

(おもちゃ:ハトの鳴き声)

あ～あ また失敗しちゃった｡
(操作音)

すいません｡

構いませんけど 13回目ですよ｡

今度こそ 成功させます｡

あっ この動画のタイトルって
『楽しい会社ライフ』でしたっけ？

『退屈な会社ライフ』です｡
あ～ ハハっ｡

ハァ…
僕 会社員 向いてないみたいで｡

そんな…
せっかく正社員になれたのに｡

1か月じゃ
まだ分かんないじゃないですか｡

1か月で分かりました｡

俺の居場所は ここじゃないって｡

親が うるさいから
就職したけど

いずれは Vチューバーで
食べて行くつもりです｡

そうなんだ｡

よし… よし！ 録画してください｡

あっ はい｡
(操作音)

(井手)♪～ ベンベ ベンベン
ベンベンベン

♪～ ベンベ ベンベン
ベンベンベン

♪～ ベンベ ベンベン
ベンベンベン

ん～！ はっ！

(おもちゃ:ハトの鳴き声)

できた！
(井手) ちゃんと撮れました？

(亜紀) はい もう
バッチリだったと思います｡

よし じゃあ ナレーションつけて
アップします｡

お疲れ！
(亜紀) お疲れさまです…｡

(亜紀) 何で あの子には
ボーナスや福利厚生があって

私たちは
カレー1杯 770円なんだろう｡

(永倉) 会社にバレないように
副業やるなら

投資か
ネットビジネスがオススメです｡

今 株は ちょっとな～｡

(角田) FXは？
ギャンブル性が高過ぎて危険だよ｡

じゃあ
アフィリエイトは どうですか？

何それ？
ネットで記事を書くんです｡

そんなんで稼げんのか？

専門性の高い
独自コンテンツを提供する

専門型サイトを作ることが
1つのポイントです｡

永倉君 詳しいね～｡

自分の老後は 自分で守らないと｡
あぁ…｡

まぁまぁ… 取りあえず 飲んで｡

おい 三田君も～｡
はい｡

ここ 古い取引先だから
安くしてくれんだよ｡

♪～ タンタラタンタン
タンタンタンタン

お疲れ！
(一同) お疲れ～！

♪～

♪～        (歌声)

♪～

♪～        (歌声)

大前さん？
間違いありません｡

スーパーハケンの副業か｡

スイス銀行に貯め込んでても
副業するんだ｡

(三田) 斜め上行く副業っすね｡

♪～        (歌声)

あれ？

うちの社食が炎上してます｡
えっ 炎上？ 社食が？

火事!?
いえ 炎上です｡

♪～        (歌声)

♪～   ベンベ ベンベン
ベンベンベン

♪～   ベンベ ベンベン
ベンベンベン

(ギター)♪～  何じゃ こりゃ！

♪～

♪～        (通知音)

長嶋 連絡！
♪～     (長嶋) あ～！

♪～

(ベル)

はい 株式会社S＆F
営業事業部です｡

はい…｡

≪大変 申し訳ありません≫

ハァ… こうなると思ったよ～｡

(ベル)

ハァ…｡

何かあったの？

♪～   ベンベン

♪～   ベンベ ベンベン
ベンベンベン

♪～   ベンベ ベンベン
ベンベンベン

変な人 映ってる｡

(小夏) 何 この人…｡

(三田) 誰だよ？
こんな動画あげたヤツ｡

(男性) 食品会社の社食で
あれは何だ！ 不潔だろ！

申し訳ございませんでした｡

(女性)
おたくの食品は もう買いません｡

ただ今 事実関係を確認中でして
はい…｡

大前君 こういうの得意だろ？

クレーム対応は 派遣に押し付ける
仕事の第1位ですが 何か？

あいつをフォローしろ｡

冷蔵庫に首 突っ込んで
何してたかって

ホントに 僕が知りたいです｡

(男性) ばか野郎！
どんどん怒っちゃってますけど｡

君は もういい！
大前君がやるから｡

できました｡

今回のクレーム対応の
マニュアルです｡

これが 電話用｡

そして これが
ネットの書き込み用です｡

ポイントは｢傾聴と共感｣です｡

｢傾聴と共感｣｡

まず耳を傾け 心から共感する｡

最も大事なことは
罵声を浴びせられても

こちらは冷静に対応すること｡

(ベル)

(優しい声で)
はい S＆Fでございます｡

はい… はい…｡

このたびの動画により

お客様には大変不快な思いを
させてしまったこと

心からお詫び申し上げます｡

おっしゃる通りでございます｡

はい その通りでございます｡

全て弊社が悪うございました｡

はい…｡
(ベル)

(小夏) はい S＆Fでございます｡

はい 申し訳ございませんでした｡

はい…｡

ご迷惑をお掛けしまして
大変 申し訳ございません｡

はい… おっしゃる通り
全て 当社の責任でございます｡

(キーボードを打つ音)

(宇野)
この『ユータンちゃんねる』の
ユータンって

君か？

そうです｡

ハァ～｡

もう学生じゃないんだ｡

SNS時代のマナーを
ちゃんと学んでくれ｡

君のした軽率な行動が
会社の評判を落とし

社外の人たちに
見せてはいけないものを

流出させてしまったんだ｡

課長…｡

どうしたの？

あの動画を撮影したのは 私です｡

福岡君が？

申し訳ありませんでした！

ハァ… まぁ 今回のことは

うちの部内で収めるから
他言しないように｡

2人とも 今後は
不用意な行動は慎んでくれ｡

(亜紀)
本当に 申し訳ありませんでした｡

井手君 分かった？

すいませんでした｡

(宇野) ハァ～｡

｢不用意｣？

｢用意してないこと｡

転じて
注意や配慮が足りないこと｣｡

ハァ… 社会人の言葉って
難しいっすね｡

(近) えっ！ あの動画を？

心から反省してます｡

(近) どうして そんなことを？

新入社員の井手さんに頼まれて…｡

どうして私って
こんなん なんでしょう…｡

頼まれたら 断れないんですね｡

それが福岡さんの
長所でも短所でもあるんですけど｡

今度こそ クビでしょうか？
えっ？

もう どうしよう あぁ…｡
(近) いや…｡

(硬貨を置く音)
ごちそうさまでした｡

あっ 大前さん
ちょっと待ってください｡

福岡さんがピンチなんです｡

こんな狭い店で
反省会やられたら

聞きたくなくても
聞こえて来ます｡

ホントに
申し訳ありませんでした｡

私には関わりないことです｡

そう来ると思いましたけど…｡

前に 大前さん

百貨店の炎上を見事に鎮めたこと
あったじゃないですか｡

…って どこ見てんですか？

あの動画が きっかけとなって

さらに とんでもないことに
なっていますが｡

(近:亜紀) えっ？

?～

どうして…｡

このおじさん ホントにヤバいよ
早くしないと！

大前さん ホワイトハッカーの資格
持ってませんでしたっけ？

ばかとSNSの炎上に
つける薬は

ありません｡

今日は仕事になりませんでしたね｡
あ～ 疲れた～！

うちの社食で
長い間 働いてくれてた牟田さん

昨日 解雇されたそうです｡
そうなのか｡

じゃあ やっぱり
クビになった腹いせだな｡

とんだバイトテロですね｡

(宇野) ハァ… よりによって
明日から社食の一般開放って時に｡

大迷惑だよ！

じゃあ お先｡
お疲れさまでした｡

お疲れ｡

ハァ～｡

(宮部の声) 食堂の客
全然 入ってないそうじゃないか｡

申し訳ございません｡

SNSの炎上が なかなか収まらず
客足に影響が…｡

このままでは風評被害が心配です｡

不買運動も起きかねません｡

早く何とかしなさい｡
はあ｡

おい…｡

まずいな こりゃ…｡
えっ？

おい
SNSの炎上のせいにするな！

こんな まずいもの出してるから
客が来ないんだ｡

いいか？
社食のライスカレーは…｡

社員のソウルフードです！
(宮部) ああ｡

こんなもの わが社の面汚しだ！

(宇野) 申し訳ございません｡

今度は 社長が炎上しちゃったよ｡

えっ？

責任者の方 いますか？

(米田) 何ですか？

ちょっと お伺いしたいんですが｡

ネイチャーフードサービスさんと
うちは長い付き合いですけど

最近 社食のカレーの味
落ちましたよね どうしてですか？

言いたかないけど
社員に あんな動画 流されたら

うちも やってられないでしょ｡
(調理人たち) そうだ そうだ｡

(米田) コストカットで
人手は足りないし

食材 選んでられないんです｡

見てください｡

先月の客数と経費です｡

ギリギリでやってるんですから｡

確かに 赤字の日もありますね｡

カレーの味まで
けちつけられたら

もうS＆Fさんから
撤退するしかないですよ｡

いやいや…
ちょっと待ってくださいよ｡

今 撤退なんかされたら… なぁ？

ええ すぐに次の外注先が
見つからないなら

社食は当分 閉鎖になります｡

一般開放した矢先に

閉鎖なんてことに
なったりしたら

今度はネットで何を言われるか…｡

あんたたち そんなことばっかり
気にしてんだな｡

あの お聞きしたいんですけど…｡

こちらで働いていた牟田さんは
今 どちらにいますか？

バイトテロの あいつか｡
ええ｡

さぁ？
あの男は おたくのバイトで

うちの人間じゃないから｡

(スペイン語)

あっ…｡

(スペイン語)

大前さん… あぁ…｡

お帰りください｡

お願いがあって来ました｡

社食のカレーを
元の味に戻してください｡

それは委託された
ネイチャーフードサービス の仕事です｡

カレーのソースは
食材の買い付けから全て

バイトの牟田さんに
任せていたそうです｡

だったら
そのバイトを呼び戻しなさい｡

彼の連絡先
誰も分からないんです｡

牟田さんは 僕が入社した時から
あの食堂で働いていました｡

いつも あの厨房で
カレーの鍋をかき混ぜていました｡

彼が契約社員でも 派遣でもない

アルバイトとは知りませんでした｡

うちの総務に
問い合わせてみたら

もう20年以上
バイト代の値上げも要求せず

薄給で働いてくれてたそうです｡

そんな人が
バイトテロをするなんて

僕は いまだに信じられなくて｡

もし そうだとしても

コストカットのために
クビにした

うちの会社に責任があるような
気がするんです｡

バイトに同情するなんて
相変わらず あなたは

甘々ですね｡

牟田さんとは連絡がつきません｡

でも僕は もう一度

あのカレーを
お客さんに提供したいんです｡

社食で
あのカレーが評判になれば

炎上した悪いウワサも
きっと挽回すると思っています｡

大前さん｡

カレーマイスターの資格を
持っているそうですね｡

また あのマネジャーが
個人情報をペラッペラと｡

牟田さんのカレーの味を
再現してください｡

お願いします！

無理です｡

これは 業務命令です｡

(ドアが開く音)

助手も連れて来ました｡

(ドアが閉まる音)

(亜紀) よろしくお願いします｡
よろしくお願いします｡

私 S＆Fに
すごく迷惑掛けちゃったから

少しでも役に立ちたいんです｡

私は食べるほうが得意だけど
頑張ります！

(スペイン語)

?～

一度 炎上すると 手に負えないな｡

(長嶋)
課長 テレビでもやってます｡


(コメンテーター)
こういう不適切な動画を

ネットに ばらまかれたら

企業は大きな代償を
払うことになります｡

(ベル)

はい 株式会社S＆F
営業事業部です…｡


(キャスター) 企業のほうは
被害者かもしれませんが

雇う側の管理責任もありますよね｡

何だ？ これは｡

恐れていたことが…｡


(キャスター) この会社の商品が
ちゃんとしてるのか…｡

課長 大変です！

ジャストマートが
うちの売り場を減らして

カレー関連の商品は
全て撤廃すると言ってます｡

えっ それも？
あっ 店長 ちょっと… あぁ…｡

うちが扱う商品を置いてるだけで
お店にクレームが来るそうです｡

あ～ ちょっと…｡

そんな…｡

とにかく すぐ行く うん…｡

部長 ジャストマートが

カレー関連の商品 全て撤廃する
と言ってるそうです｡

何だって!?

店長に掛け合って来ます｡

ハァ… こんなの続いたら
会社 つぶれるぞ！

いってきます｡
(宇野) 頼んだぞ｡

はい… はい…｡

(井手) プージャさん
星3つとも取り消したよ｡

これじゃあな｡

｢マイナス星を
100個つけたいぐらいです｣

…ってコメントしてる｡
さすが辛口プージャさん｡

しかし 人いなくなったな｡

誰のせいだよ？

?～

?～

?～       痛った…｡

?～

日が暮れます｡

(小夏) あっ すいません｡

(玉ねぎを切る音)

?～

誰か！
(亜紀) はい はい！

早く！
はい はい！

急いで｡
はい｡

スパイス！
(小夏) はい！

ボウル！
(小夏) ボウル！

スパイス！ ボウル！
(小夏) スパイス…｡

?～

?～

うん おいしい！
?～     いけますね！

?～    ダメ やり直し｡

?～

?～        痛～い｡

?～

大前さん！

その気になってくれたんですね｡

そんなことより ジャストマートは
どうなったんですか？

厳しいです｡

大前さんが作ったカレーです
どうぞ｡

ありがとう｡

いただきます｡

うん！ いけますね｡

いけてません｡

僕は 十分おいしいと思いますが｡

うん 前のカレーの味に似てます｡

程遠いです やり直し｡

え～！ そこからですか～？

ん！

?～

?～

?～    フゥ フゥ フゥ｡

?～

お疲れさまです｡
まだやってる｡

いい匂いですね｡
うん！

うん！

今度こそ成功ですね｡

あっ これなら プージャさんも
また三つ星つけますよ｡

違う！

(小夏) ハァ…｡

(小夏) ハァ…｡

大前さん
2人とも だいぶ疲れてるので

今日は そろそろ…｡

そんなこと言われなくたって
5時なので帰ります！

それより…｡
分かってます｡

これから
ジャストマート全店舗を回って

頭下げて来ます｡

(スプーンを置く音)

後片付け よろしく！

邪魔！

(井手) お疲れさまでした｡

あの人にも
不可能なことがあるのかな？

≪お疲れさまです≫
お疲れ｡

(宇野)
どうだった？ ジャストマート｡

ダメでした｡

全店舗を回って
お詫びをしたんですけど…｡

そうか…｡
このままじゃ

うちの商品 置いてくれる店
なくなっちゃいますよ｡

ハァ～ あぁ…｡

おい 誰か お茶入れてくれ｡

あれ？ どこ行った？

今日も朝から カレー作ってます｡

カレー？

すいません 僕が頼んだんです｡

今が買い時です｡
ああ 買おう 買おう｡

(キーボードを打つ音)

≪お疲れさまです！≫
(一同) お疲れさまです！

あ～ 社長…｡

城武百貨店の社長から

当分 うちとの取引は
差し控えさせてくれと

言って来たぞ｡

ジャストマートさんもだ！

とんでもない風評被害だ！

この部の何者かが
インターネットに

バイトテロの動画をあげたという
ウワサがあるが 本当かね!?

犯人探しをしても しょうがない｡

どうせ 会社が
何たるかも分かっとらん

大ばか者だろう｡

申し訳ございません｡

申し訳ありません
私の監督不行き届きです｡

これは営業事業部全体の責任だ！

早く 火消しをしろ！

(宇野:里中) はい｡

?～

クミン コリアンダー カルダモン
ターメリック チリペッパー…｡

他に何が足りないんだ？

≪香辛料は それで合ってるよ≫

あっ｡

何か 俺のせいで
大変なことになってるんだって？

ネットが炎上して 社食のカレーが
激まずになりました｡

そうか｡

『全国カレー行脚』の
プージャさんは

三つ星を取り消しました｡

S＆Fの人たちは？

あなたを
バッサリ切り捨てた連中なんか

どうなろうと どうなったって
いいんじゃないんですか？

そうだけど…｡

何か 俺 あそこの厨房
たまらなく好きだったんだよな｡

社員が うまそうに
カレー食べてくれると

その顔 見てるだけで
何か こう満たされるっていうか｡

薄給で こき使われてたくせに｡

だよな？ ハハっ…｡


香辛料は これでよし｡

うん｡

随分 見掛けのいい玉ねぎだな
高かっただろ？

俺 こんなの使ったことないよ｡

(玉ねぎを切る音)

ダメだ！ 火が強過ぎる｡

はい！

ダメダメ ダメダメ！ まだ早いよ｡

そろそろ いい？
まだまだ｡

あと2時間半｡

玉ねぎ炒めるだけで 3時間？

その手間が
カレーの味を決めるんだよ｡

毎日3時間 やり過ぎでしょ｡

これ炒めてる間は
他の仕事できないね｡

うん｡

?～

クミン コリアンダー
カルダモン

ターメリック チリペッパーを
炒めて 入れて…｡

そのへんは適当でいいんだよ｡

とにかく 玉ねぎだ｡

気持ちを込めて
玉ねぎを3時間 炒める｡

はい｡

俺は 小麦粉は使わない｡

本場仕込みの
インドカレーだからな｡

?～

?～

やり過ぎるぐらい こだわるとこ

あの頃から変わってないね｡

ん？

23年前

インド大使館の厨房で
修業してた頃から｡

何だよ！ やっぱり 俺のこと
覚えててくれたのかよ！

フッ｡

春ちゃんは すごいな～｡

あの頃 一緒に
玉ねぎ 刻んでたのに

あれから いっぱい資格取って
スーパーハケンだもんな～｡

それに引き換え 俺は
ばかのひとつ覚えで

カレーしか作ってないもんな｡

よし 味 見てみろ｡

はい｡

フゥ～ フゥ～｡

ん～！

これ！

この味！

辛さの後に 玉ねぎの甘みが
口いっぱいに広がる｡

ん～！

3時間かけないと
この味は出せないか｡

ん～！

?～

ムッちゃん？

後は頼んだぞ｡

春ちゃん｡

?～

?～

よし！
(亜紀) ハァ～｡

何とか昼休みまでに
間に合いましたね ハァ…｡

(小夏) あ～ いい匂い！

?～

あれ？ 何か いい匂い｡

何か いい匂いする…｡
カレーじゃない？

?～

≪カレー 下さい≫
≪私も！≫

(小夏) お願いします｡

≪カレー 下さい≫
(小夏) はい｡

(宮部) まさか また
あのまずいカレーを

食べさせるんじゃないだろうな！

(社員たち) お疲れさまです！

あっ 社長…｡
えっ？

(宮部) フゥ～｡

あっ…｡


お～｡

元の味だ｡

スパイスも効いてて うまい｡

(小夏) よし！

お疲れさまです｡
(小夏:亜紀) お疲れさまです｡

僕もカレーライス お願いします｡
(亜紀) はい｡

?～

うん！ うまい！

味 戻りましたね｡
うん！

(宇野) うん！

社長 やっぱり うちの
ライスカレーは絶品ですね！

これなら 一般のお客様も
きっと喜んでくれます｡

いずれ レトルトパウチも
商品化しましょう｡

そして わが社の悪い評判を
吹き飛ばしましょう！

うん！

辛さの後に 甘みも残る｡

(水を注ぐ音)

それ 玉ねぎの甘みです｡

でも このカレーは
ダメなカレーです｡

ダメが言い過ぎなら
無理なカレーです｡

(宇野) ん？ 無理なカレー？

社員は1杯440円
それ以外は770円｡

かかる時間と手間を考えたら
真っ赤な赤字です｡

ホントは そんな値段じゃ
出せないカレーです｡

何言ってんだよ？
今まで それでやって来たろう｡

無理なものは 無理です！

なぜだね？

毎日3時間   やり過ぎでしょ

まぁな   毎朝4時起きで

なじみの農家に行って
安い野菜を買い込んで…

カゴ1000円でいいや
持ってけ

いつも助かるよ
(男性)ハハハハ…

(牟田)ありがとう！   よいしょ

(牟田)出勤は毎朝6時
まだ誰も来てないから

コソコソ 泥棒みたいに
食材を運び込むんだ

?～

(米田)はい～
(牟田)おはようございます

(調理人たち)
おはようございます

(牟田)俺   あそこの厨房
たまらなく好きだったんだよな

社員が   うまそうに
カレー食べてくれると

その顔 見てるだけで
何か こう満たされるっていうか

1円でも安く
新鮮な食材を仕入れ

3時間 寝る間も惜しんで
カレーを作る｡

安いバイト代でも
文句ひとつ言わず 22年｡

あなたたちがクビにした
牟田さんの

犠牲なくしては作れない
カレーだったからです｡

誰だって？
一体 何の話をしてるんだ？

辞めてもらった
バイトのコックで

バイトテロの張本人です｡
何!?

いいえ！

あれは バイトテロなんかじゃ
ありません｡

掃除してたんです｡

掃除？

今日限りでクビになるという
最後の夜

時間をかけて 厨房をピカピカに｡

?～

あっ…   あぁ…

あ～！   あっ… あ…

(井手)はっ！
おもちゃ  :ハトの鳴き声

あぁ…   フフフ 危ねぇ 危ねぇ

よし…

バイトテロなんかじゃなく

冷凍庫の霜を
キレイにしてたんです｡

分からんな｡

単なるバイトが
どうして そんなことをする？

バイトが 自分の仕事場を
愛しちゃいけませんか？

牟田さん

ここの厨房も 仕事も
愛してたんですね｡

きっと ここにいる誰よりも｡

社員の喜ぶ顔を見るために

毎朝 気持ちを込めて
玉ねぎを炒め

安くて おいしいカレーを作る｡

そういう立派な仕事をする人が

もっと報われるべきです｡

牟田さんは
バイトでも何でもいいから

ずっと ここで働いていたかった｡

勤務時間中
副業に うつつを抜かす

そこらへんの社員と比べるのも
おこがましい｡

副業？ おい 何のことだ？

いえ うちの社員に限って
そんな輩はいません｡

老後の2000万… 円が
心配な社員は

せいぜい うつつを抜かしなさい！

(宮部) 待ちなさい｡

言いっ放しで どこへ行くんだ？

お昼ごはん｡

ここは高いので 失礼します｡

?～

えっ…｡

ちょっと これ見てください｡
また炎上か？

違います プージャさんが
また星をつけました｡

えっ…｡

｢味は なかなかですが

一般客は カレー1杯
1200円も ぼったくられます｣｡

あぁ… 辛口だね｡

カレー行脚だけに｡

課長も オヤジギャグ
言うようになったんですね｡

(亜紀) 大変です！

社食に
お客さんが行列 作ってます｡

えっ？

(米田)
はい お待ちどおさまでした｡

(男性) カレー 下さい｡
≪ちょっとお待ちください≫

(米田) カレーですね
はい お待ちどおさま…｡

(男性) カレー 下さい｡
≪お待ちください≫

(米田) ちょっと待ってください
まだあります まだあります…｡

まだあります まだあります｡
(男性) 売り切れじゃないよね？

そうですか
ありがとうございます｡

ジャストマート
撤廃の話 なくなったよ｡

よかったですね！

浅野君 本社 行こう｡
はい｡

プージャさんの
ブログのおかげで

バイトテロの炎上も
吹き飛びましたね｡

うん｡

あれ？ ねぇ…｡

プージャって もしかして…｡

(井手:小夏:亜紀) え～！

(一同) え～！

(キーボードを打つ音)

これ 大前さんですよね？

(キーボードを打つ音)

(牟田) いらっしゃい！

おいしい おいしい
むーやんカレーだよ！

派遣さんやバイトさんは
100円引きだ～｡

(女性) 1つ お願いします｡
(牟田) いらっしゃい！ はい｡

はい ありがとう はい どうも｡

(杏奈) あ～ ここ
プージャのブログに出てたよね｡

(智子)
屋台なのに 星3つだったよ｡

(杏奈) え～！ 1つ下さい｡

(牟田) いらっしゃい！

スーパーハケンさんは
特別に200円引きだよ～｡

安い！

でも今日は サバみそにする｡

何だよ｡

そういえば S＆Fの偉い人が
ここにカレー食べに来て

バイト料アップするから
もう一度 働かないかって｡

で？

断ったよ｡

また あっちの都合でクビになるの
ごめんだから｡

そっか｡

うん｡

じゃあ ムッちゃん… またね｡

春ちゃんも頑張れよ｡

(牟田) さぁ
いらっしゃい いらっしゃい！

おいしい おいしい
むーやんカレーだよ！

(杏奈:智子) ん～！

はい ありがとう はい どうも｡

いらっしゃい いらっしゃい！

おいしい おいしい
むーやんカレーだよ！ はい｡

おいしい おいしい
むーやんカレーだよ！

1杯600円だ
はい… 2人 はい どうも！

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このドラマの主題歌

『Motivation』が収録された
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ｶﾃｺﾞﾘ:2020夏ドラマ