すとーる・まーじん

チラシの裏

F135エンジンのアフターバーナについて

我が国でもF-35が部隊に配備された。海外でのAirshowでF-35の出番も増え、もはや珍しい機体ではなくなってきた。今回はアフターバーナ技術について(3)以降に収集した画像情報を分析する。

因みに「アフターバーナ」の呼称に関する位置づけは過去記事を参考にされたい(個人的にはアフターバーナが好きです、だってかっこいいじゃん)。

 

F-35後視

 ステルス機の排気ノズルがステルス性に重要であることは過去の記事で触れた。通常駐機中はエンジンを保護する目的でエンジンカバーが取り付けられており、特にステルスのそれはさらに情報の管理が厳しいようである。こうした中、図1に示すyoutube動画がF135エンジンを後視した唯一の画像であった。これとPW UTCが発表した関連特許等は過去の記事を参考にされたい。

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図1 youtubeに投稿された動画 

 

F-35後視(更新)

 駐機中のF-35でエンジンカバーがついていないものが図2である。これは機体の整備中の様子である。F-35は主に電動アクチュエーションであるがその電力はエンジンに搭載された大容量のスタータ・ジェネレータによって供給される。尾翼の駆動等からエンジンにアイドル程度の火が入り、エンジンカバーが外れている様子がわかる。

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図2 駐機中のF-35

 

うっすらとF135エンジンのフレームホルダーが見えるが、これを視易いように画像処理すると図3のとおりとなる。そのフレームホルダーの本数を数えると18となり(図4)、これは過去記事で触れたPW UTCのパテントのそれと本数及び構造が合致する。PW UTCのパテントは統合型燃料スプレーバを上流から見ているため、これを反転し、「下流」からみたものとすると図5となる。

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図3 F135フレームホルダー部(画像処理済)

 

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図4 F135フレームホルダー部

 

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図5 F135フレームホルダーとパテント画像

 

また、別のAirshowで後方からF-35を捉えた写真を図6及び図7に示す。全周は確認できないが、対称性を考慮すると18-20本程度の明暗が確認できるとともに、PW UTCパテントの特徴的な若干のスワール分をもった放射状の形状であることも確認できる。図8では図7の画像を拡大、露出を調整したものである。

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図6 F-35後方視

 

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図7 F-35後方視(@d_td124846様撮影)

 

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図8 @d_td124846様撮影を拡大補正

 

以上、これまでの文献調査、そして今回の写真分析からF135エンジンはPW UTCで報告されるレーダーブロッカーを兼ねた統合型フレームホルダーを確実に採用している。巷ではF135エンジンはF119エンジンより劣る等、大変に不評であったが(実際結構不具合も発生した)、フレームホルダひとつにとっても統合型フレームホルダを採用する等、やはり未来にいたのである(スーパークルーズが出来ない等とよくF-22/F119と比べられるが、これは機体の抵抗とエンジン出力のバランスの話であるのでエンジンは悪くない)

この統合フレームホルダは過去の記事で述べたようにフレームホルダによる圧力損失がなく、アフターバーナを使用/不使用に関わらず、従来のエンジンに比べ性能が向上し、observability低減の構造と非常に相性が良く、アフターバーナ的にも、エンジン全体としても理想的な形態である。しかしながら、これらはあくまでも定性的な傾向であり、エンジンが要求する性能や安定性とのトレードオフによって従来のフレームホルダを採用するか否かが設計者によって選択される。これから将来に渡って開発されるエンジンにおいて「フレームホルダがあるから技術が遅れている」のではなく、何故そのような形態になっているのかを一考するとエンジンの新たな側面が見えてくるかもしれない。

 

2019年6月、不幸にも航空自衛隊所属のF-35が青森沖で墜落してしまった。これらの原因と対策については防衛省発表関連記事を参考にされたい。殉職された操縦者の高い志に敬意を表するとともに、哀悼の意を表します。

 

参考文献

 F-35@Airshow

 アフターバーナ技術について(3)