日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では大企業の景況感が11年ぶりの低水準に沈んだ。半面、金融機関の貸し出し態度が「緩い」と判断する中小企業は3月の前回調査から増えた。実質無利子融資など政府が緊急経済対策で用意した手厚い支援策を使い、金融機関が積極的に資金供給していることを裏付ける結果となった。
「今はゾンビかどうか区別している状況じゃない」。あるメガバンク支店長はこう話す。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が急収縮した4月以降、銀行には新規融資や返済条件変更の申請が殺到した。コロナ以前から経営不振だった企業も含まれているが「とにかく今は貸せという号令がかかっている」という。
こうした金融機関の姿勢を反映し、5月の全国銀行の貸出残高の伸び率は前年同月比6.4%と統計を始めた1999年10月以降で最高を記録した。ある国内のファンド関係者は「公的融資という『輸血』の威力はすさまじい」と話す。
信用保証協会の100%保証が復活し、貸し倒れリスクの心配がなくなった金融機関は競うように融資を伸ばす。モラルハザードすれすれで「窒息しそうな企業を前に平時の正論は通りにくい」という雰囲気が漂う。
実際、今回の短観で金融機関の貸し出し態度判断DI(「緩い」から「厳しい」を引いた値)は中小企業で19となり、3月の前回調査(18)からわずかながら改善した。全規模合計でみても悪化幅は1ポイントにとどまった。
政府が手当てした大規模な資金繰り支援策がひとまず奏功した形だ。金融システムが傷んだ2008年のリーマン・ショック時と異なり、現時点で金融機関には企業を支える余力もある。
安心はできない。1日は東京都内で新たに67人の感染者が確認された。緊急事態宣言の解除後では最多だ。感染の第2波、第3波が到来して再び経済活動にブレーキがかかる懸念は拭えない。
コロナ禍が長期化した場合、企業が「借りられる臨界点」に達する可能性が高い。融資態度がいかに緩くても企業にとって借金は借金だ。返済能力を超えて貸し込むことはできない。