日産株主総会 安易なリストラ戒めて

2020年6月30日 07時26分
 日産自動車の株主総会が開かれた。「脱ゴーン」化を進める中、コロナ禍で業績が一層悪化しており株主から批判が相次いだ。経営陣は構造改革を訴えるが、安易な人員削減は戒める必要がある。
 五月下旬に発表された日産の二〇二〇年三月期連結決算は、六千七百十二億円の最終赤字となった。ゴーン氏が経営トップに就いた直後の二〇〇〇年三月期が六千八百四十三億円の赤字。数字上、経営危機当時とほぼ同じ水準まで決算が落ち込んだといえるだろう。
 ゴーン氏の失脚から一年半が過ぎた。後を継いだ西川広人前社長は自らの不正報酬問題で引責辞任した。今年二月、内田誠社長の就任後も関潤副COOが退任するなど不安定な経営体制が続いた。この間、仏ルノーとの資本関係見直しなど課題は残ったまま。ゴーン体制からの脱却は依然、道半ばといえる。
 この状況に追い打ちをかけたのがコロナ禍だ。世界的に移動自粛が一気に進み、日産は国内だけでなく米国や中国など大市場での売り上げが激減した。内田社長は総会で「成長軌道に戻す」と述べたが、その具体的な道筋は見えていないのが現状だろう。
 二〇年三月期決算をみると、トヨタ自動車は売上高こそ減ったが純利益は前期比10・3%増だった。直近の決算内容を見る限り、ライバルに大きく水を開けられたことは否定できない。
 世界の車産業は今、CASE(ケース)と呼ばれる改革の大波が押し寄せている。Cはコネクテッドで車とネットの融合、Aは自動運転、Sはカーシェアリング、Eは電気自動車(EV)だ。
 すでにトヨタはCASE対応でソフトバンクグループなど異業種間提携を進めている。日産は新たな波にも乗り遅れ気味だと指摘せざるを得ない。
 日産は連合を組むルノー、三菱自動車と共に大波を乗り越えるしかない。日産はEVなどで極めて高い技術を持つ。資本関係で優位に立つルノーが技術面で日産に頼る構図は続くはずだ。
 ただ、すでに検討されている大規模な人員削減案については苦言を呈したい。一九八〇年代初頭から苦楽を共にしたスペイン・バルセロナの工場閉鎖計画も乱暴ではないか。地元の労働者や家族が怒るのも無理はない。
 車は人がつくる。人材の喪失につながるリストラには最大限の慎重を期すよう求めたい。 

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