要注意人物の来店をカメラ映像から検知して万引きを未然に防ぐ
要注意人物の来店を入店時に把握
低コストで利用できる万引き対策
売上を増やすのが難しい小売店が利益を確保するには、ロスを削減することが求められる。しかし小売店の経営努力だけでは解決できないロスがある。それは「万引き」による不明ロスだ。万引きを防止するための方策はいろいろあるが、中小規模の小売店ではコスト負担が厳しい。そこで最新の画像認識技術を活用しながら低コストで利用できる万引き対策サービスを紹介する。
顔認証で要注意人物を特定
万引きを未然に防止する
ネット通販の普及と少子高齢化の進行によって小売店のリアル店舗では競争がし烈化しており、売上を増加させることが難しくなっている。こうした経営環境の中で小売店が利益を確保するには、ロスを減らすことが取り組みの第一歩となる。
このロスには見切り・廃棄ロスや不明ロスがあるが、小売店の頭を悩ましているのが不明ロスに含まれる「万引き」だ。店舗では万引き対策としてさまざまな取り組みを行っており、万引きによる被害の削減に努めている。
万引き対策としてよく知られているのは外部の万引き専門警備員である、通称「万引きGメン」への監視の委託だ。しかしながら小規模な店舗では万引きGメンに委託するための予算を確保するのは難しく、監視の専任者を雇用する余裕もないのが実情だろう。
また店員が通常業務の傍らで万引きを監視するのも難しく、監視が手薄になって結局被害に遭うことになる。こうした実情を知り、低コストで万引き対策が講じられるサービスを開発・提供しているのがサードアイズだ。
同社は防犯システムや防犯サービスを提供しており、防犯に関して日頃から顧客より相談を受けることが多い。その中で万引き対策が低コストで実施できるシステムやサービスを提供してほしいと要望を受けたという。
同社の東京営業所 課長 中村信貴氏は「万引きGメンは中小規模の店舗ではコスト負担が厳しく、委託できないのが実情です。また万引きGメンは万引きが発生してから対応するサービスです。万引きを未然に防止できる仕組みがあれば、来店客も店員もいやな思いをすることはありません。ですから万引きをさせない仕組みが必要だと考えました」と説明する。
そうした経緯で開発されたのが顔認識技術を活用した「ASC」(Alarm System for Shoplifter Cut)だ。
AzureのCognitive Servicesを活用
Face APIで顔と属性を認識
クラウドサービスで提供されるASCは、低コストで導入できるのが魅力の万引き対策サービスだ。初期費用は70万円から、利用料は月額7,800円からとなっている。初期費用には店内に設置するカメラの購入と設置、調整などが含まれる。同社によると万引きGメンを委託する場合と比較して、費用を1〜2割程度に抑えられるというから、中小規模の店舗でも導入しやすいだろう。
ASCのシステムはクラウドサービスで提供されるためサーバーやストレージ、ソフトウェアの導入は不要で、店内にカメラを設置するだけで利用できる。提供されるカメラはパナソニックの「WV-SFN310AJ」などで、現在対応機種を増やすことを検討しているという。
中村氏は「カメラは店内の入口に設置して、来店客のみを撮影します。すべての来店客の顔を撮影できる設置場所を探し、カメラの角度などの調節が重要です」と説明する。
また「すでに店内に設置されている防犯カメラを利用したいという要望もあり、今後は対応カメラを拡充することを検討しています」と説明を続ける。
カメラで撮影された映像から来店客の顔を認識して画像を保存する。この顔認識に利用されているのがマイクロソフトのAzureで提供されているAIサービス、Cognitive Servicesに含まれる「Face API」だ。
カメラで撮影した映像から顔を認識するとともに年齢や性別、表情などの特徴を捉えることができる。ASCではFace APIで顔を認識して性別と年齢を取得しているという。
なお顔認識以外のシステムやカメラの映像および顔写真の保存などはAzureとは別のクラウドで運用されている。
実証実験での顔認識精度は93%
マーケティングにも活用できる
Face APIで認識した顔の画像はWebブラウザーで利用する管理画面に一覧表示される。一覧表示された顔写真の中から要注意人物を選び登録する。その際、登録した人物が来店した際に発信されるアラートメールを受信するメールアドレスを登録する。また過去の事案や行動の特徴などの付帯情報を記録することもできる。なお顔画像は6カ月を経過すると自動的に削除される。
登録した人物が来店すると、あらかじめ指定したメールアドレスに通知され、メールを受信した店員は要注意人物を監視することで万引きを防止する。要注意人物の通知はメールのほかに、店内BGMを変更することで通知することも可能だ。
このように警報はメールで通知されるのでスマートフォンやタブレット、PCなどの端末に専用のアプリを導入する必要はない。管理についてもWebブラウザーから行えるので、専用ソフトを導入する必要はない。またChromeにも対応しているので、スマートフォンやタブレットから管理することもできるほか、遠隔地の複数の店舗の管理も一元化できる。
ASCは2017年に都内の書店で実証実験を数カ月間実施した。その際の顔認識の精度は93%と良好だったという。現在、全国に100店舗以上を展開するスーパーの店舗などに導入されているという。
中村氏は「ASCは登録した人物の来店を知らせるサービスですので、万引きだけではなく常連客の来店の把握にも活用できます。付帯情報に常連客の好みなどを登録しておけば、接客の品質向上に役立ちます」と活用範囲の広さをアピールする。
同社ではこのシステムを利用して来店客の曜日や時間ごとの人数の把握や、性別や年齢などの属性を把握するマーケティングシステム「CMS」(Count Marketing System)もサービス提供している。
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