外国人が見る日本での暮らしやすさは最下位グループ HBSC駐在員意識調査結果
イギリスの銀行HSBCは、駐在員を対象に住む国に関する意識調査を実施し、その結果を公開しました。
日本は総合で33カ国中32位という結果でした。
本記事では、今回発表されたHSBCの調査結果について解説します。
外国人駐在員が見る暮らしやすさの指標
イギリスにある世界最大級のメガバンクHSBCは、毎年自国から離れて暮らしている駐在員を対象に、その国での生活に対する意識調査「Expat Explorer survey」を実施しています。
HSBCホールディングスは、イギリス、ロンドン、カナリー・ワーフに本社を置き、商業銀行を主体とする、世界最大級のメガバンクである。1865年に香港で創設された香港上海銀行を母体として1991年に設立された。
引用:Wikipedia|HSBCホールディングス
今回で12年目となるこの調査は、日本では「駐在員生活快適度調査」や「住みやすい国ランキング」などと訳され、外国からの駐在員がその国での暮らしや働き方をどのように見られているかに関する情報として取り上げられています。
今年度の調査となる2019年度版では30を超える国と地域に住む、自国から離れて住む18歳以上の18,059人の駐在員を対象に実施しています。調査期間は2019年2月から4月でした。
HSBCの顧客、オンラインコミュニティ参加者やソーシャルメディア利用者が調査対象となりました。また、最小回答数を100と定めており、今回100以上の回答を得た33カ国が統計対象となっています。
HSBCのサイトではYoutubeやTwitterからも、この調査に関する情報を得ることができます。
https://twitter.com/expatexplorer
日本は総合で32カ国中33位、子育てでは最下位
調査内容は「生活」「仕事」「子育て」の3分野に分かれており、それぞれの分野と総合ランキングが国別に発表されます。
今回の調査による総合の上位5位は、1位スイス、2位シンガポール、3位カナダ、4位スペイン、5位ニュージーランドでした。日本は33カ国中32位で、昨年の30位から3位ほどランクを落としています。
個別のランキングで見ていくと、生活部門では15位、仕事部門では30位、子育て部門では最下位の33位という結果でした。
仕事における「収入」と「ワークライフバランス」、子育てにおける「教育」で最下位となっています。
暮らし部門では、全体で15位でした。詳細は、生活の質で13位、心身の健康で20位、充実度では18位、政治的安定で6位です。
仕事部門に関しては、キャリアアップと可処分所得で19位だったものの、ワークライフバランスと収入で最下位となり、30位となっています。
- 日本は総合で33カ国中32位
- 分野別では暮らしが15位、仕事は30位、子育ては33位
- 個別の項目では収入とワークライフバランス、教育で最下位に
外国人にとっての問題は閉鎖性と日本の教育システム
仕事や子育てにおいて最下位グループとなってしまった日本。
生活部門でのランキングとは大きな開きが出ています。生活環境としては悪くないものの、日本で仕事をして、子育てをするのは避けたいと考えている回答者が多かったことを示しています。
イギリスの移住情報サイトでは、今回のHSBCの調査の結果を受け、日本における駐在員の生活を次のように解説しています。
日本での駐在の可能性のある人は、日本独特の文化は、ユニークな特徴を持つ社会にとって大切なものであると認識する必要があります。
日本での駐在を希望する人も、親しみやすい文化性とビジネスチャンスがイコールでないということを理解しておかなければなりません。
日本の企業は慣習として、長く勤める内部の社員を優先して昇進させ、重要なポジションへの外国人の採用・登用に積極的ではありません。また、報酬自体も、通常欧米よりも低くなります。
日本の教育システムも問題です。
外国人にとって日本語は難しいこともあり、駐在員の子供が通う学校はインターナショナルスクールに限られてしまいます。
日本に住んで働く駐在員にとって、日本人はフレンドリーで親切であるものの、さらに親しい間柄を構築するには、言語の壁が立ちはだかります。
https://www.emigrate.co.uk/news/20190904-27092_is-japan-any-use-at-all-for-ambitious-expat-professionals-より抜粋
この記事では、上記指摘した問題も魅力的なチャレンジであると考え、環境に適応し楽しむ方法を見つけている駐在員もいると、総括しています。
外国人からみた日本移住の問題点
日本は勤続年数を優先するため、外国人に昇進のチャンスが少ない
駐在員の教育はインターナショナルスクールに限られる
言語の問題は大きい
外国人人材との関わり方は、今後の日本人にとって重要な要素
日本ではインバウンドと呼ばれる外国人旅行者や2020年の東京五輪開催のために、一時滞在としての外国人を受け入れる体制は整ってきました。
また、特定技能が新たな在留資格として導入されたこともあり、日本における外国人人材との関わりは、ますます重要になってきています。
日本の人材不足の分野を把握して、日本進出や業務拡大を検討している企業は世界中に存在します。
参考記事:インドの大手IT企業、日本進出のため従業員トレーニングに注力
今までは政府や企業だけの問題ととらえられてきた外国人人材との関わりですが、今後は社会で働く個人としても認識すべき問題であると意識しておくとよいでしょう。