hプロジェクトに訴えられたリーガルファンディングの闇

hプロジェクトに訴えられたリーガルファンディングの闇

2018年3月21日に自ら命を絶った、愛媛県松山市を中心に活動する農業アイドル「愛の葉Girls」のメンバーだった大本萌景さん(当時16歳)に関連した訴訟騒動。そういえば一時期話題になっていたなあという印象ですが、2019年10月11日、この件に関連して動きがありました。

少しおさらいしますと、大本萌景さんが自殺したのは所属事務所「hプロジェクト」に責任があるとして、大本萌景さんの両親が民事裁判を起こしたことが騒動の発端でした。騒動が起こって間もない頃は、所属事務所側に大きな過失があったとしてメディアから(もちろんSNSなどネット上でも)ボロクソに叩かれていました。しかし、大本萌景さんの家族に関する情報が少しずつ明らかになり、その対応のあり方なども疑問視され、しだいにフェードアウトしていきます。そして、大本萌景さんと義父の性的な問題が公になったことがトドメとなり、潮が引いたようにメディアはこの問題を取り上げなくなりました。

当時ニュースを見たときは、「子が通う学校の費用を支払うという意思を母親から全く感じられなかったこと」、「大人が本気で金策すれば何とかなりそうな額のお金を大本萌景さんが借金していること」から、原告(母親)側を疑わしく思ったことを覚えています。

この騒動に関連して2019年10月11日、hプロジェクト代表の佐々木貴浩氏が自身の名誉を毀損されたとして、大本萌景さんの両親とその弁護士らなどに損害賠償を求める民事裁判を起こしました。佐々木貴浩氏が損害賠償を求めて提訴したのは「大本萌景さんの両親」、「芸能人の権利を守る日本エンターテイナーライツ協会」、「大本萌景さんの両親の訴訟代理人弁護士5名」、「一般社団法人リーガルファンディング」です。

弊社は、本日付で下記の民事訴訟を東京地方裁判所に提起致します。



原告 Hプロジェクト株式会社及び佐々木貴浩

被告 大本萌景さんのご両親
   芸能人の権利を守る日本エンターテイナーライツ協会
   大本萌景さんのご両親の訴訟代理人弁護士5名
   一般社団法人リーガルファンディング

弊社から大本萌景さんのご遺族側弁護団らに対する訴訟提起について

ただ、今回大本萌景さんの騒動を掘り下げたいわけじゃないんです。私はこの一連の騒動に全く興味がありません。引っかかったのは、今回提訴された「一般社団法人リーガルファンディング」の方。以前、うさんくさいなと思うことがあったので。「一般社団法人リーガルファンディング」とは、大本萌景さんの両親が起こした訴訟費用を工面するために、望月宣武弁護士によって立ち上げられたクラウドファンディングサイトです。

リーガルファンディング:
https://legalfunding.jp/

破産者マップを覚えていますか

2019年3月に「破産者マップ」というサイトが話題になったことをご存じでしょうか。「破産者マップ」とは、過去数年以内に自己破産した人の住所に、その人の破産情報をピンしたGoogle Mapを埋め込んだサイトでした。たまたま広く拡散する前に存在を知ったので当ブログでも取り上げましたが、わずか数日で「破産者マップ」は閉鎖されることになります。

リーガルファンディングを不審に思ったきっかけ

さて、「破産者マップ」が話題になっている最中、ピンされている人に悪影響が及ぶ可能性があるとして、突如「破産者マップ」閉鎖に向けたプロジェクトがクラウドファンディングで発起されます。このクラウドファンディングサイトというのが、今回提訴されている「一般社団法人リーガルファンディング」です。

「破産者マップ」閉鎖プロジェクトについても当ブログの記事で触れているのですが、原告がいないにもかかわらず、なぜ弁護士団が勝手にプロジェクトを立ち上げているのかという点に大きな疑問を感じました。これがあったので、今回「一般社団法人リーガルファンディング」という名称に引っかかったわけです。

ちなみに、他のプロジェクトを検索しても大本萌景さんと破産者マップの情報しか出てきません。リーガルファンディングのサイトのディレクトリにもプロジェクトは2つしか存在しない(https://legalfunding.jp/project/1とhttps://legalfunding.jp/project/4。間の2と3が気になる)ため、取り扱ったプロジェクトはこの2件のみであると推測されます。

更に深まる疑わしさ

「破産者マップ」については、恥ずかしい思いをしたり、秘密がバレる気がかりになったりする人が多数いるであろうことは容易に想像できます。ですので、当時は集団訴訟に向けた動きだと思って一旦納得したのですが、改めて見直してみると違うんですよね。「一般社団法人リーガルファンディング」の担当弁護士が勝手にプロジェクトを立ち上げて資金を募っているだけです。

現在「破産者マップ」閉鎖プロジェクトがどうなっているのかというと、2019年6月20日に支援が打ち切られ、支援額は180万円ほどと表示されています。そして、プロジェクトの活動として何を行ったかについては、実質プロバイダに開示請求をしただけ。まあ活動内容についてはこんなものでしょう。そもそも、被害者不在の状況で裁判が成立するはずもないですから。

支援金の行方

いくら活動内容がショボかったとはいえ180万ほどのお金は集まっているわけです。大したお金も掛かってなさそうですし、残りの支援金はどうなっているんでしょうか。これについてちょっと調べてみたのですが、どうも「一般社団法人リーガルファンディング」が支援金をほぼ全額プールしている状態のようです。支援した人たちは納得するんでしょうか。

そういえば、大本萌景さんの件については現在もプロジェクトが進行中ですが、例えば会見に掛かる費用などはどこから出ているんでしょうね。原告の家族にお金があるとは思えませんが…。

浮かび上がる人物

もう一点気になることがあります。上で「一般社団法人リーガルファンディング」が取り扱っているプロジェクトは、2件のみではないかということを書きました。1件目は大本萌景さんのプロジェクトですが、原告の代理人になっている「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」の代表として筆頭に記載されているのが望月宣武弁護士です。

望月宣武弁護士は「一般社団法人リーガルファンディング」を立ち上げた人物でした。

2件目の「破産者マップ」閉鎖プロジェクトを確認してみると、こちらでも弁護団団長として望月宣武弁護士は名を連ねています。つまり、仲介サイトの運営をしている人物が支援金集めにも関わり、弁護も担当していることになります。「破産者マップ」閉鎖プロジェクトに限ってはプロジェクトを立ち上げたのもこの人です。また、プロジェクトを立ち上げるには審査に受かる必要があるようなのですが、おそらく審査しているのも望月宣武弁護士でしょう。ある会計士の方はこのようなツイートをされています。

ところで、「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」の代表が望月宣武弁護士であると書きました。思い出してください、今回佐々木貴浩氏から提訴されているのは「大本萌景さんの両親」、「芸能人の権利を守る日本エンターテイナーライツ協会」、「大本萌景さんの両親の訴訟代理人弁護士5名」、「一般社団法人リーガルファンディング」でしたね。なんと、大本萌景さんの両親以外には全て望月宣武弁護士が含まれていることになります。

リーガルファンディングが安全なサイトだとは思えない

少なくとも、望月宣武弁護士の資金集めのための道具、と受け取られても仕方ないかと。もう、詐欺まがいのサイトであるといっても良いでしょう。募金詐欺のようなことが容易にできてしまう危険を孕んでいるのですから。これは私の推測ですが、おそらく外部の人間がプロジェクトを提起しても、余程おいしい話でない限り審査で落とされるシステムになっているのではないかと。相手方のプロジェクトをここで立ち上げようとしたとき、承認されるとは到底思えません。といっても、まともな弁護士がこのようなサイトを利用することはまずないと思いますが。

今いちど考えて欲しい

大本萌景さんの件については、最初は所属事務所側を悪者にするような報道がなされていましたし、募金してしまうのもわからなくはないです。ネットを見ていると一過性の正義感に駆られる人が一定数いるようですしね…。また、プロジェクトのタイトルや文面を見る限り、あまり物事を深く考えない人を煽動するような意図を感じます。ネットは煽動しやすいですから、ツイッターで適当にツイートでもしとけば勝手に獲物が掛かってくれるという具合ではないでしょうか。

そもそも、民事裁判というのは白黒を付けるために行います。そして、刑事裁判と違い双方が弁護士を立てて争うのが一般的です。まだ裁判が始まってもいない、双方が白にも黒にもなり得る段階で、勝手に我が陣営が白であるかのごとく資金を募ることは正しいのでしょうか。まだ大本萌景さんのプロジェクトは資金援助できる状態なので、支援しようと考えている人には今いちどよく考えるよう願います。

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