超特急による初の主催イベント『HMV presents BULLET TRAIN 5th Anniversary Special「超フェス」』。多芸多才な彼ららしく、連日様々なジャンルから招いたゲストと東京・豊洲PITで胸躍る化学反応を起こしてきたわけだが、5日目の千秋楽、9月1日の『“超”イロモノフェス』にはヴィジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバー(通称:金爆)が登場。お互いに相当な闘志を燃やして迎えたこの日、両者の斜めいく上いく発想と天井知らずの挑戦心によって、豊洲は幾度となく笑撃波に襲われることとなった。
まずステージに現われたのは、シルバーのスーツに身を包んだスタイリッシュな超特急……と思ったら、7人全員がまさかの白塗り。開演前に行なわれた囲み取材では、ユースケがゴールデンボンバーの樽美酒研二そっくりなメイク、リーダーのリョウガが何を間違ったのかカオナシ(『千と千尋の神隠し』)メイクをしていたが、コーイチ、カイ、タクヤ、タカシは、ユースケと同じく隈取り部分を自身のメンバーカラーでアレンジ。だが、タカシのメンバーカラーは純白のため、だいぶ顔面蒼白状態。一方、ユーキはもはやアメリカのロックバンド・KISSのメイク。なんという絶妙な間違いバランスだろうか。キレッキレのダンス&真顔でゴールデンボンバーの「女々しくて」を歌い、ポンポンを持ってのチアダンスは本家より足が高く上がっているのでは!?
1曲終わったところで、「さあ、今日のゲストはこちらの方々!」という呼び込みの声とともにステージ後方の幕が開くと……そこには、「ららぽーとで買物中!!!!」と筆で書かれた長半紙だけがポツン。そうなったら腹を決めるしかないわけで、「本当に出てくるかわからないですけど、しばらく僕たちに付き合ってください」というカイの言葉から、コーイチとタカシの歌のかけ合い、ユーキのバク転、ユースケの投げキスと魅せる、高揚感たっぷりな「Kiss Me Baby」へ。みんなでタオルをブンブン振り回す「浮つきWAVES」では、コーイチとタクヤが腕でハートマークを作ったり、タクヤが鍛えられた腹筋をチラ見せしたり。「バッタマン」では、ユースケがゴールデンボンバーのメンバーの名を叫び「かかってこいよ!」と挑発したり。すさまじい勢いだ。
そんな彼らに負けじとステージに走り出てきたゴールデンボンバーの4人は、「#CDが売れないこんな世の中じゃ」からフロアをタオル回しの渦に巻き込んで、いきなり全員攻撃。
「僕たちがゴールデンボンバーです!」とばっちり超特急ポーズを決めた4人、超特急のことをいろいろ調べてきたそうで、タカシの真似をしてそれぞれ自虐的&開けっ広げに自己紹介。鬼龍院翔が「全員白塗りやるんかい!しかも間違っているバランスもいい!」と超特急に賛辞を送れば、歌広場淳は「さっき、「Kiss Me Baby」で<Only you Only you>の振りを一緒にやっていた」と白状。喜矢武豊は「8号車の一員として盛り上げていきます」、樽美酒は「同じ筋肉担当として、タクヤくんに少しでも近づけるように頑張ります」と宣言し、「抱きしめてシュヴァルツ」へ。嫌な予感がしていた通り、ギターソロでは全身超特急グッズまみれの8号車スタイルで喜矢武が登場、樽美酒はタクヤのお面をつけ、「タクヤ」の手書き名札を張りつけた緑のビキニ1枚になって、しきりに客席に向けビキニをお尻に食い込ませたり。「また君に番号を聞けなかった」では、「喜矢武さんより僕のほうが超特急好きだから!好きすぎて超特急の映画『サイドライン』で共演したから!カラオケでは超特急の歌ばっかり歌っているから!」と主張していた歌広場が、『サイドライン』で扮した謎の人物・フラワー様の衣装でお立ち台に駆け上がり、超特急の「SURVIVOR」を熱唱……しようとしたが、歌詞があやふやで尻すぼみになるという残念な事態に。なんて奔放なんだ。
ヴィジュアル系の様式美をこれでもかと詰め込んだ「†ザ・V系っぽい曲†」の間奏では、喜矢武、歌広場、樽美酒が次々とお立ち台に乗ってそれっぽくエアギターをかき鳴らし、そこにいつも通り鬼龍院がバイオリンで加わろうとすると……ベースのタカシ、ピアニカのリョウガ、トランペットのカイ、リコーダーのユーキ、ハーモニカのコーイチ、タンバリンのユースケ、トライアングルのタクヤが矢継ぎ早に乱入して、どうしてもお立ち台に上がれない鬼龍院。そのまま11人で激しくヘドバンすれば、ただただ壮観。超特急とゴールデンボンバー、この掛け合わせはとんでもなく刺激的でおもしろい。
白塗りメイクを落として臨んだ超特急ライヴの後半戦は、R&Bテイストの新曲「UNKNOWN…」でスタート。繊細に重なる歌、しなやかなダンスそれぞれ愁いを帯びながら、ダンサー陣の側転やバク宙も鮮やか。「SURVIVOR」でのユーキのアクロバティックな技も見事にキマって、先ほどまでの爆笑の連続から、すっかり空気が一変。
だが、今日の対戦相手はひと筋縄ではいかないゴールデンボンバー。対抗すべく、コーイチ&タカシが歌い始めた「panipani」ではゴールデンボンバーの4人の顔写真が貼りつけられたピンを倒すボーリングで、あからさまな仕込みによりリョウガがストライク。「HOPE STEP JUMP」では、これまたゴールデンボンバーの4人の顔写真が貼られた的にボールを当てるストラックアウトで、ユースケがタカシの強引なサポートによる魔球でパーフェクト達成。最後は、「Summer love」で「ダーツのプロが使っているおまじない」とカイに手渡された口紅を塗ったユーキがダーツの矢を手にすると、歌広場の顔が的となったダーツ盤が現われ、カイ、リョウガ、ユースケに問答無用で抱えられたユーキそのものが矢となって、歌広場目がけて一直線。唇ギリギリの顎にユーキがキスすると、歌広場は恍惚の表情、そしてふたりは熱いハグ。
「ふざけすぎて、どうもすみませんでした!」と正座して頭を下げたあとは、コーイチとユーキが、タカシとユースケが肩を組んでジャンプしたりもした「PAPAPAPA JUMPERS」へ。タカシがユースケをうしろからハグする場面も見られた「Burn!」では、メンバーと一緒にフロアも「金爆!」コールでバッテンダンス。8号車も金爆ファンも、楽しいの加速が止まらない。
そして、アンコール。温かなハッピーソング「Synchronism」を披露したあとで、「こうして5周年で素晴らしいアーティストの方とコラボしてお祝いしていただいて、本当に嬉しかったです。みなさんと一緒になって、この時をわかち合いたいと思える素晴らしい曲をファイナルにどうしても持ってきたくて、「Synchronism」を披露させてもらいました。僕たち一同、ゴールデンボンバーさんのことが本当に大好きです!」と涙交じりに話すユーキに、「口紅残したまま泣いてんじゃないよ!」とツッコミながらもそっとタオルを渡すタクヤ。すると、超特急のグッズまみれでゴールデンボンバーの4人が現われ、樽美酒が「めっちゃ楽しかった」と言うと、喜矢武が「泣いちゃダメだよ」とユースケの生誕記念グッズであるティッシュカバーを手にユーキに接近。喜矢武が勝手に“とらじろう”と名づけると、大喜びするユースケ。ユーキのキスマークを顎につけたままの歌広場は、「SURVIVOR」をうまく歌えなかったことに悔しさを滲ませ、「今度キミの家に行って一晩中DVD観せて。そのときにもう一回チューして!」とユーキに迫ってカイにたしなめられたり、樽美酒に謝罪されたタクヤは「こんな体になりたいです」と告白したり。やたらと波長が合うのだろう、トークも際限なく続きそうだ。
さらに、超特急の熱烈オファーからコラボタイムへ。「超特急さんに対抗できるようなダンスがカッコいい曲が1曲だけあった」という鬼龍院の言葉からの、ゴールデンボンバーのEDMチューン「あったかいよ、ユウジ」では、連なった11人が互い違いに屈伸し、隣の股間を隠すというドキドキなダンスも。超特急の「超えてアバンチュール」では、コーイチとタカシが歌う中、ユーキと歌広場がやっぱり相思相愛だったり、カイと鬼龍院が寄り添ったり、タクヤが喜矢武に迫られたり、樽美酒がユーキとユースケの手を自らの股間にあてがって困惑されたり、歌広場がコーイチとリョウガの手を借りて宙返りしたり、しまいには樽美酒が再びタクヤのお面をかぶってTバック1枚で走り回ったり、タカシがタクヤのお面を被っていたり、代わる代わる“とらじろう”からティッシュを巻き散らしたりと、混沌を極めるステージ。「こんなの初めてだよ!」と超特急の面々が興奮気味に言えば、樽美酒も「この曲、楽しい!鬼龍院さん、これに似た曲を作ろう!」と堂々提案。「タオルに続いてパクるんですか!?」と突っ込むカイ、8号車もいい笑顔!
最後に、「これからも仲良くしてもらえますか?」と問いかける超特急に、一度は「断る!」と拒否した喜矢武も、なんだかんだ「仲良くしよう!」と同調。最後に、「最終日、最高のゲストと最高のライヴができて幸せです。ラストがゴールデンボンバーさんで、本当に良かった。緊張感もあったけど、最後は超特急らしいハッピーエンドで終われたと思います」と放ったリョウガ。今回の新たな挑戦で得たものは、今後の彼らにとって大きな糧となるはずだ。
文/杉江優花