転職してしばらく経ちました。転職前よりは良い環境ですが、「マシな地獄」といった感じです。機械学習エンジニアとして雇われましたが、入社から現在までの事を書こうと思います。
※一部伏せ字がありますが、それを言うとマズイものは伏せ字にしています。
面接時
面接と実技試験が数段階ありましたが、比較的マシな段階は割愛します。最終面接である社長とのやり取りです。
社長「座れ」
私「失礼します」
社長「うーん、これまでの面接も試験もそんなに良くねーな。なんか質問あっか?」
私「御社で機械学習を具体的にどんなサービスに使ってますか?」
社長「俺達は研究開発で色々とアルゴリズムやら何やら検証なり実装なりしてるが、まあそれ使えばいずれ何かできるだろう。はっはっは。ウァードゥ・トゥー・ヴェックって知ってっか?あれは実に面白い。」
私「...?」
社長「そういえばAlpha Go見たか?教師なしであんなことできるんだから、もう教師データなんて必要ないな!」
私「いえ、簡単な分類タスクでも人間が与えたラベルにフィットさせるつもりなら必要だと思いますが...」
社長「夢がないね君!ま、今日のところはここまで!せいぜい結果を楽しみにしてろよ。」
採用された後
すこし不安になるようなところで採用されてしまったのですが、採用された後のことも書きます。
シニアエンジニアJ.Bauerさん
J.B「やあアリスたん。最初に君にやってもらうのは、X(タスク名)というタスクのY(論文)の検証だけど、何か質問ある?」
私「あの、この検証で最終的に何を残し、それが何に使われるのでしょうか。」
J.B「jupyterは使えるようだから、最初はそれで残してもいいし、デモを作る場合はモジュールにでもしておけばいいよ。将来的にサービスに使う可能性があるよ。」
私「jupyter内で論文を再現するということでしょうか?」
J.B「そうだよ。わからないことがあったら聞いて。」
それからしばらく
こんな調子で検証を行っていましたが、バリエーションや難易度は多少違いはあれど、基本的にこの「検証」と呼ばれるものをチマチマと行うだけです。成果物はgitに残しますし、jupyterだけでなく、モジュールとして残すようにもします。
J.Bさんをはじめ、他の方々はいい人たちなので以前の環境に比べれば精神的に楽です。
会議
ある日、会議がありました。社長もいます。
社長「J.BとアリスはX(タスク名)という検証を行った。俺はXにこそ可能性を感じる。だから俺達のビジネスはXを使ったZ(社長の妄想で生み出したアプリ)に力を入れていくぞ。XをZに使うのは世界初である!」
エンジニアたちの脳内「(なぜXがZに使えると思っているのだろう。XとZの技術的なつながりは何なのだろうか...)」
後で知りましたが、J.Bさんが社長との会話で、技術的に難解な言葉を用いてXがZに使えるという話をしていたようです。しかしググってわかったことは、XをZに使うのは世界初ではありません。
社長「ということで、俺達はZに賭けることで決まりだ!」
Zに関する検証
我々はZに関する検証を行いました。Zのプロトタイプを数人のエンジニアと一緒に構築し、そこでZの質を改善するための様々なアルゴリズムを試しました。
それで検証を数ヶ月続けたところ、なぜかその検証は終了しました。
社長「うーん、俺はお前らが検証しているZが気に入らないなぁ。一旦止めて別のプロジェクトを開始してZ以外のアプリKを作れ」
Kの開発
Kの開発には私は携わらず、私とJ.Bさんは普段の「検証」を続けることができました。一方、数人の人がKを開発して、「ビジョンはでかい!(けど、しょぼい)」アプリとしてリリースされました。
K開発者達「よし、これを俺達は進化させていくぜ!」
アフターコロナ
社長「コロナ時代、俺達はその気になれば何だって出来るだろう。簡単すぎる。だからKの開発は終わりだ。俺達は新しくG (社長の妄想1) を開発しなければならない。GはZ(社長の妄想0) の他に、M(社長の妄想2)とW(社長の妄想3) という機能をかけ合わせることで、グローバルなスタンダードとなるだろう。MとWをどう作るかは知らんが、まあ君たちなら出来るだろう。俺達はGに全神経を注ぐ!」
完全リモート化
家庭をもつ社員は戦々恐々としていましたが、私はF*ck you moneyを溜め込んでいる上に、1992年生まれで若くて一人暮らしなので問題はありません。
社長「俺達はスーパーカンパニーである。そんな俺達がTwitterのような永久フルリモートができないわけがない」
ということになり、現在は完全リモートでやっています。オンラインでも、社長からの多少のパワハラがありますが、「私はいつ辞めても困らない」ということを忘れさえしなければ、それほど苦にはなりません。
社長「お前ら、AIの専門家だろ!いい結果を出さないと訴えるからな、覚悟しとけ。」
まとめ
社長への感謝の心を忘れないようにしましょう。