[新型コロナ] 経営継続補助金 申請受け付け開始
2020年06月30日
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける農家らに最大150万円を補助する農水省の「経営継続補助金」の申請の受け付けが29日、始まった。一部の支援策との併用が可能で、機械の導入やアルバイト料など補助対象を広く設定。同省がまとめたQ&Aでは、具体例や申請時の留意点などを示している。申請の1次締め切りは7月29日。……
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農地集積 伸び鈍化 19年度57・1% 政府目標に遠く及ばず
農水省は26日、2019年度の担い手への農地集積率が57・1%となったと発表した。伸び率は鈍化しており、23年度までに8割を目指す政府目標との差は開いたままだ。同省は「人・農地プラン」の実質化を通じ、将来の農地の受け皿となる担い手を特定するなどして集積・集約を加速したい考えだ。
農地集積率は前年度から0・9ポイント増えたが、1ポイント増の18年度と比べるとペースは鈍っている。13年度の48・7%から伸び続けているが、伸び幅は小さくなっている。
新たに担い手に集積したのは2万2853ヘクタール。そのうち農地中間管理機構(農地集積バンク)の実績は1万5480ヘクタールだった。それぞれ3万1304ヘクタール、1万6364ヘクタールだった前年度を下回った。機構の転貸面積は14年度からの累積で25万3872ヘクタールだった。同省は「集積の機運が高かった地域での取り組みが一巡した」(農地政策課)と話す。
集積・集約のてこ入れに向けて、同省は「人・農地プラン」を通じ、地域ごとに将来の農地利用を巡る話し合いを徹底してもらう方針。後継者不在農地や将来の農地利用を引き受ける担い手を特定し、21年度以降の集積・集約の加速につなげたい考えだ。
同省によると、既に1万8826地区(180万ヘクタール)がプランに基づく話し合いの後、将来の方針を定めた。これとは別に、4万8790地区(212万ヘクタール)でも今後、話し合いが進む見込みとしている。
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2020年06月27日
食育白書 知識の実践 楽しさから
食育推進基本法の施行と栄養教諭制度の創設から今年度で15年。その頃、小学生だった世代が今の20代だ。2019年度の「食育白書」からは、「知識はあるが実践に結び付いてない」この世代の姿が浮かび上がる。背中を押すために「食の楽しさ」を伝え続けよう。
今の20代の大半は「食育」が広がる時期に育った。白書によると、小学生の頃「食の生産に関わる体験活動をした」「学校で食に関する指導を受けた」という人が、20代ではそれぞれ8割、7割と他の世代を大きく上回る。また、食育に関心がある人は、30代も含めて男女ともに7割程度に上る。
それなのに、朝食の欠食率が高い。また、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は健康に良い」と知りつつも、朝食の内容が主食だけという人が30代も含めると半数以上を占める。知識が行動につながっていない。
なぜか。体験がないからだ。自分一人では朝起きられず、食事を作ったこともなければ、1人暮らしになった時に知識を実践に移せないのは当然だ。起床から出掛けるまで1時間もないので朝食を抜くといった悪循環が垣間見える。暮らし方、働き方と日々の食は直結する。
女性が働くことへの国民の意識は変化してきた。子育て世代である25~44歳の女性の就業率は78%(19年度)となり、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考える人が、若い世代では男女ともに6割に増えている。
一方で、家事にかける時間は、男女で差がある。1日当たりで女性の3時間に比べ、男性は40分。この点も意識に行動が追い付いていない。女性が働き続けるには、家族みんなで家事を分担し合うことが必要だ。夫も子どもも、家庭にある食材を見て献立を考え、買い物をし、料理し、家族で一緒に食べて、後片付けをするなど、日常の食に携わることで楽しさが実感できるだろう。その中で、食の技術も自然と身に付いていく。
地域の食育では、農家やJAの女性組織・青年組織に期待したい。これまでも「食農教育」に取り組み、食と農の大切さを伝えてきた実績がある。「楽しさ」の視点も一層意識し、ファンづくりを続けてほしい。
白書には、食や食育と新型コロナウイルスの関係についての記述はない。だが外出自粛などで家庭で食事をする機会が増え、健康への関心も高まった。コロナ後を見据えて一人一人が自分の「食」と暮らしを見直し、健康を守るすべを得なくてはならない。食育の知識を行動として定着させるのが近道だ。
まず家庭で、妻や母親以外が食事を作る日を設けてみよう。毎月19日の「食育の日」から始めてみてはどうか。インターネット交流サイト(SNS)活用が増えている。農業界からはSNSでレシピを提供しよう。農畜産物がどう生まれ、食卓に届くかという物語と共に。
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2020年06月27日
AIかん水システム普及へ 定額で低コスト JA三井リース、メーカー提携
人工知能(AI)によるかん水・施肥のコントロールシステムの販売を全国展開するルートレック・ネットワークスとJA三井リースは、資本業務提携を結んだ。提携を機に今夏から、同システム「ゼロアグリ」を低コストで導入できる月定額サービスの普及を本格化する。スマート農業への関心が高まる中、導入のハードルを下げ、増収・省力化を狙う既存農家から経験の浅い新規就農者まで、幅広く普及を目指す。
「ゼロアグリ」は、基板と土壌センサーなどから成るシステム。トマトやキュウリなどにチューブで水や液肥を与える養液土耕栽培と組み合わせて使う。AIは、センサーのデータから土質に応じた水の染み込み方などを学習。農家の望む土壌水分や肥料分を自動で管理し、省力化や増収につなげる。肥料分の管理ができるようになったのは、今年からだ。
一式を購入すると費用は本体・センサーにチューブや液肥混入器、施工費など合わせて約300万円かかる。新しい月定額サービスでは本体・センサーを貸し出し、他は既存設備を使ってもらうことで月額3万5000~7万5000円とした。料金の高いコースは電話相談や設定代行など支援が何度も受けられ、初心者でも扱いやすい。JA三井リースとの資本提携で、貸し出しに使う機器を増強。JA三井リースが各地に持つ営業拠点を通じ、JAや部会、農家などへの情報提供や、導入の支援を進めていく。代理店による販売も強める。導入数は現在約240台だが、2025年4月までに約1800台を目指す。
JA三井リースは「農業振興や地域活性化に加え、無駄な水や施肥を減らし環境に優しいことにも着目し、導入を支援していきたい」(農林水産本部)と説明する。
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2020年06月26日
小さな庭にバラが咲いた。真っ赤である
小さな庭にバラが咲いた。真っ赤である▼小欄隣の『おはよう名歌と名句』に、〈極まれば赤は黒めき薔薇(ばら)盛り〉(佐瀬はま代)があった。選者の宮坂静生さんの解説は絶妙である。「最高に極まったときの赤が秘めた黒。私はその瞬間をすべての色が持つ最高の美しさだと思う」。確かに、真っ赤と思った花の塊は、黒が混ざり合っている。その黒みを帯びた赤に魅せられる▼きょうは仏の作家サン・テグジュペリの生誕の日。第二次世界大戦中に童話『星の王子さま』を書いて、世界に名をはせた。「一番大切なことは、目に見えない」。キツネに言われた王子は、星に残してきたバラに、思いを寄せる。その時、心が通い合う関係が幸せを広げると悟る。金や物に固執して、絆を忘れた大人への風刺でもあろう。世界的なベストセラーとなった▼「関係」と銘打つこちらも、絆への思いを込めたか。最近よく耳にする、「関係人口」である。都会に住みながら、農村や地域と多様に関わる人たち。総務省が使い始め、農水省も使うようになった。関係を持つうちに、心が通う。そして田園回帰にたどり着く▼名曲『バラが咲いた』(浜口庫之助作)には、「心のバラ」が出てくる。いつまでも散らない。都市と田園を結ぶ心にも、咲いてくれ。
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2020年06月29日
コロナ禍の教訓 課題検証し次に備えを
新型コロナウイルスとのこれまでの闘いは、長期の外出自粛をはじめ未経験のことばかりだった。これを今後にどう生かすか。JAグループは課題整理をしっかり行い、第2波・第3波に備えなければならない。
判断は素早く、迷ったら実行、現場視点、対策は小出しせず大胆に。そして責任は自分が取る──。危機の時の指導者に求められる資質が、今回のコロナ禍で改めて可視化された。一国の宰相ほどではないにせよ、JAのリーダーもまた、危機には重大な判断を迫られる。
賢人は歴史に学ぶという。次の流行へは準備ができる。これが初発との違いだ。JAが検証すべき課題は「感染防止」「事業継続と職員の活用」「農業者支援」の三つである。
まず感染防止。「密閉」「密集」「密接」の「3密」回避や手指消毒、マスク着用は徹底されたのか。事業所ごとに点検すべきだ。職員アンケートも有効だろう。細心の注意が必要なのは、外出自粛期間中に来店者が増えた直売所やAコープである。もし感染者が出たら店舗閉鎖と顧客離れを引き起こしかねない。一部JAで入店者の人数制限に踏み込んだケースもあった。信頼性確保を第一にマニュアルを整備すべきだ。
テレワークが新たな行動様式として普及していくのは間違いない。JAグループ内では大都市部や連合会を除いて導入例が少なかった。代わって広く取り組んだのが、2班編成の交代勤務や職員の分散配置である。職員から感染者が出ても、多数の濃厚接触者の職場離脱による業務崩壊を避ける狙いがある。事業継続という観点でこの取り組みは一定成功したとみられる。
今後もこのやり方で臨むのか、テレワークを導入するのか、改めての検討が必要だ。その際、意識してほしいのは外部の視線だ。職場は閉鎖空間ではない。組合員・利用者、就活学生、若い職員の親も、JAが感染防止に意を尽くし職員を大事にする職場なのかを見ている。
交代勤務の導入で浮き彫りになった課題は、自宅待機者の活用法である。一部JAでは本店職員を支店や直売所の応援勤務に充てる例が見られた。今回は事例が少ないが、人手不足に困っている農家の援農に活用する手もある。職員パワーをどう生かすか、事業継続計画(BCP)に組み込んでおくべきだ。
売り先を失った農業者への支援活動も大きな課題である。今回も役職員の応援購買という従来的な運動が各地のJAで見られる一方、ネットショッピングやクラウドファンディング、動画の支援サイトなど、情報通信技術(ICT)を使った手法が登場した。大学生への米贈与など、支援を通じて生まれた新しい関係もあった。
販売支援で重要なのは危機対応と同様にスピードである。他業態の動きも研究して、新たな支援策を常日頃から考え、スタンバイしておくべきだ。
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2020年06月26日
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[新型コロナ] 内食の比率過去最大 消費変化鮮明に 4月家計調査から
4月の家計調査(2人以上世帯)の食料支出に占める家庭内食(内食)の比率が21・6%と、比較可能な2000年以降で過去最大だったことが分かった。新型コロナウイルス禍により、外出自粛や休業などで外食が大幅に減り、家庭で調理した食事が増えていることを裏付けた。
総務省の家計調査の食料支出から、中食を示す「調理食品」と外食の支出額を差し引き、消費支出全体に占める比率を、日本農業新聞が独自に試算した。直近の公表の4月は、米や麺類、生鮮野菜、生鮮肉や乳製品といった幅広い内食向けの食品で支出が伸びた一方、外食の支出は単月で過去最低だったことなどを反映した。
内食以外も含む飲食費全体の割合を示す「エンゲル係数」も27・0%で高水準だった。ただ、正月用のお節料理など中食への支出が増えた19年12月の28・4%、18年12月の27・1%と比べると下回った。
内食比率を見ると、コロナ禍前は外食の支出が一定程度あったため、2000~19年の月平均は17・0%だったのに対し、コロナ禍後の今年の月平均は19・1%に伸びた。
外食産業の業界団体である日本フードサービス協会によると、4月の外食売上高は前年同月比で過去最悪の落ち込みを示した。5月はわずかに持ち直したが、低迷は続いている。外食業界は中食向けに持ち帰りに力を入れているが、内食志向を切り崩すに至っていない。
ただ、緊急事態宣言解除後、6月に入り、外食の売り上げは徐々に持ち直してきた。内食需要の一部が、中食や外食へ還流する可能性は高まっており、食を巡る市場の攻防は一層激しくなりそうだ。
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2020年06月30日
[新型コロナ] 経営継続補助金 申請受け付け開始
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける農家らに最大150万円を補助する農水省の「経営継続補助金」の申請の受け付けが29日、始まった。一部の支援策との併用が可能で、機械の導入やアルバイト料など補助対象を広く設定。同省がまとめたQ&Aでは、具体例や申請時の留意点などを示している。申請の1次締め切りは7月29日。……
2020年06月30日
[新型コロナ] 政府、食料安保を強化 コロナ対応 国産切り替え推進
政府は26日、農林水産業・地域の活力創造本部(議長=安倍晋三首相)を開き、新型コロナウイルスによる食料供給リスクの高まりを踏まえ、農林水産政策の展開方向として「食料安全保障の強化」を打ち出した。外国産から国産品への原料切り替えなどによる国内生産基盤の強化、国民理解の醸成を進める。各施策で検討を進め「農林水産業・地域の活力創造プラン」や2021年度予算概算要求に反映する。
安倍首相は「食料の安定供給は政府が果たすべき最も重要な責務。国内の生産基盤を強化し、食料自給率や自給力の向上を図ることが必要」だとし、関連政策の見直しを関係閣僚に指示した。
同省は、新型コロナ発生後、中国産野菜の輸入が一時的に滞ったことなどを受け、日本にも影響が及んだと指摘。欧米では労働力不足で収穫などが停滞し、物流が混乱する恐れもあるとした。アフリカ豚熱や中東などで猛威を振るうサバクトビバッタなども挙げ、「食料供給を脅かす新たなリスクが発生」と分析。半面、国民の食料供給への関心が高くなっているとし、食料安保を今後の政策の柱に据えた。
食料・農業・農村基本計画に盛り込んだ内容などを踏まえて取りまとめた検討事項のうち、「国内生産基盤の強化」では、加工食品や外食・中食向け原料の国産への切り替えを重視する。
生産現場を支える取り組みとして、スマート技術の開発・普及や農業支援サービスの育成を挙げた。さらに、食料安保や農林水産業の役割への理解を促す国民運動を展開するとした。
今後の政策課題のうち「農産物検査規格の高度化」は、穀粒判別機の導入拡大などを念頭に置く。一方、規制改革推進会議も農産物検査の見直しを検討事項に挙げており、近く政府への答申を取りまとめる。
「セーフティーネットの見直し」では、収入保険について、野菜価格安定制度など関連制度全体を検証し、総合的な対策の在り方を検討する。
農林水産物・食品の輸出額を30年に5兆円とする政府目標の実現に向け、中国向けの輸出などを強化することも盛り込んだ。
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2020年06月27日
[新型コロナ 備えて前へ] 輪になって笑おう
JA愛知みなみの花き生産者は25日、自ら育てた輪菊3万本の巨大な花文字を使い、都市住民らに「新型コロナウイルス禍でも花で笑顔になろう」とメッセージを送った。花文字には大型の祭壇などに使う2L級を用い、白色の品種を背景に黄色の品種で「Flower Smile」と描いた。東京・丸の内にある直径4メートルの噴水を囲むように配置した。
農水省の「公共施設等における花きの活用拡大支援事業」を活用した企画。花き卸の第一花き(東京都足立区)などが、コロナ禍で消費が落ち込む花きの消費拡大と、産地から消費者へのメッセージの発信を狙いとして制作・展示した。
JA輪菊部会TeamMAX代表の藤井保宏さん(45)は「緊急事態宣言は解除されたが、産地では出荷調整が続いている。多くの人に輪菊を見て明るくなってもらい、花きの良さを実感してほしい」と話す。(染谷臨太郎)
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2020年06月26日
自治体が関係人口“増加作戦” つながり感じて 「村民票」アプリ登録1000人 高まる住民意識 岡山県西粟倉村
住民以外が地域と関わる「関係人口」の創出へ、地方自治体が地域と人をつなぐ取り組みに力を入れている。専用アプリを開発した自治体は、地域の魅力をタイムリーに情報発信し、人を呼び込むきっかけをつくる。ふるさと住民カードを自治体が発行する「ふるさと住民票」は、4年間で全国10自治体に広まった。地元住民や移住者に加え、地域を守る“第3の担い手”となる「関係人口」の拡大に奮闘する。(鈴木薫子・松村直明)
岡山県西粟倉村は、「関係人口」づくりに特化した全国初のスマートフォン用アプリ「西粟倉アプリ村民票」の運用を昨年3月に始めた。村内の道の駅などで登録を呼び掛け、約1年で、村の人口1450人に迫る約1000人が登録した。
村と地元コンサルティング会社が共同開発したアプリには、移住者の生活紹介「ニシアワ人」や、事業者の求人情報を集めた「村づくり&仕事」、村内の景色などを動画で紹介する「村なう」など9項目を掲載。スマホがあれば気軽に見られるアプリの強みを生かし、情報を途切れず更新する。
どこにいても村を感じ、村民意識を高めてもらうことで、登録者の現地視察ワークへの参加に結び付いた例もある。
村内の道の駅には年間40万~45万人が訪れるなど、観光に来る「交流人口」が多い。「交流人口」から継続して村に関わる「関係人口」へ引き上げようと、同村産業観光課の萩原勇一課長は「他拠点での仕事や生活を考える機会にしてもらい、密に関わって、共に村づくりができる関係を築きたい」と強調する。
登録者情報を蓄積することで、「関係人口」を“見える化”し、地域経営の仕組み作りにも生かす。年代や居住地域の傾向から、PR方法を考えていく。アプリ登録者に与える2次元コード(QRコード)式の認定証の活用も検討する。
ふるさと住民票 8道県10市町村に
2016年に始まった「ふるさと住民票」は、19年4月に茨城県行方市、同年7月に鹿児島県志布志市が導入し、今は8道県10市町村に増えた。出身者やふるさと納税の寄付者ら希望者を対象に、自治体が住民カードを発行。地域情報の提供、祭りや伝統行事の紹介、住民投票への参加など制度内容に地域特色を出す。
先駆けて16年に始めた鳥取県日野町。人口は約3300人で最盛期の4割以下だ。一方、ふるさと住民登録者は20年4月現在で前年同期比100人増の470人と、人口の14%に当たる。交流会を年2回開き、同町企画政策課は「強い関係性ができた人もいる」と話す。
コロナ禍でも継続 ゆかりの人に“仕送り”
新型コロナウイルスの影響で都会と農村の行き来が難しくなっている中、関係人口を増やすための動きが広がっている。
自治体が帰省できない学生や若者に米や野菜など農産品を“仕送り”として送る事業も全国に広がる。佐賀県江北町は出身学生だけでなく、関係人口を育みたいと考え、町にゆかりのある人にもマスクや米を送っている。同町の山田恭輔町長は「これまで続けてきた関係人口とのつながりを保ちながら、共にコロナ禍の苦境を乗り越えてきたい」と考えを明かす。
ビジョン明確に
持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩所長の話
農村では「定住人口」が一気に増えないため、「交流人口」や「関係人口」を創出する流れになってきた。しかし、どんどん目移りし、「やっている感」だけを出すだけでは意味がない。地域全体が持続可能なビジョンを持つべきだ。
その場限りで不特定多数に対して呼び掛けるビジネスモデルは終わった。対象を絞り、連続性を意識した対策が必要となっている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響など、予測不可能な事態でもつながっていられる深い関係性が求められる。“量”より“質”を意識した運営が大切だ。
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2020年06月24日
[新型コロナ] コロナ禍で販売不振、凶作… 伝統 ジュンサイ ゆらぐ 「飯食えねくなる」 秋田県三種町
新型コロナウイルスの影響が、秋田県特産のジュンサイに大きな打撃を与えている。国内生産量の9割を占める同県三種町では、主な出荷先である首都圏の飲食店や旅館からの注文が激減。ただでさえ、春先の低温で収量は平年の半分にとどまるだけに、販売不振と凶作の二重苦に苦しむ。ツルツルとした食感で、初夏の味として親しまれ万葉集にもうたわれる“伝統の食材”が揺らいでいる。(高内杏奈)
「本当にまいった。もう飯食えねくなる」
半世紀近く生産する北林辰男さん(73)は顔をゆがめる。畳1枚ほどの箱舟を1本のさおで操り、湖面を覆う若葉をかきわけながら、腕を入れて若芽を摘み取る。北林さんの左手は、長年竿を操ってきたことで慢性的な腱鞘(けんしょう)炎だ。「水に手入れたら空手で戻るな」。何度も師匠に言われた。「離農を考える農家もいて、万葉集にもうたわれるジュンサイの長い歴史が揺らいでいる。ジュンサイに命かけてきた。これからどうなっちまうんだ」。不安で震えるこぶしを握りしめた。
収穫は5月下旬から6月中旬がピークで、8月まで続く。19年は降雨が少なく、水不足で生産量が低迷した。今年は懸念していた暖冬による水不足は持ちこたえたが、春先の低温が響き、生育が遅れた。同町を管内に持つJA秋田やまもとジュンサイ流通加工施設の担当者によると、例年なら1日1・5トンの集荷があるところ、生育が遅れたことで小ぶりなものが多く、1トンも満たない。
JAは収穫した7割を飲食店などの業者に出荷し、うち8割は首都圏だ。それらの注文は5月はほぼゼロ、22日時点では例年の2分の1と少ない。自粛解除で飲食店が徐々に再開しているが、客足は思うように戻らず、影響は長期にわたるとみる。JAが農家に払う支払価格も今年は平年の半値近くにとどまっている。買い取り価格は集荷量が増えるにつれて引き下げるが、既に例年の最低価格に達した。
同町のジュンサイ農家は190戸(19年度)。ピーク時の1991年と比べ、約7割減となっている。JA生産部会の主軸となる年齢層は70歳超えだ。JAは「離農する農家が増え、紡いできた伝統の味が消えることが一番怖い」という。
町は今年度1キロ当たり40円としていた出荷助成金に、30円上乗せする方針を出した。農林課は「ジュンサイは町の基幹産業。収穫体験など観光事業としても重きを置いている」とし「離農を防ぎ、歴史長いジュンサイの早急な支援策を施したい」と話した。
苦境に立たされた中でも、伝統的な初夏の味覚が消えてしまわないよう、生産者は歯を食いしばり今日もジュンサイ沼に向かう。
業務用の需要減少 家庭向けレシピ公開
10年以上選別作業に携わる桜庭律子さん(60)は「旬の期間が短いため、家庭でも食べてほしい」という。酢の物の他、産地では鍋の具材や天ぷらにして食べる。JAはホームページでレシピを公開し、家庭での消費を促す。
「今後の注文に備え、収穫・出荷作業をこなす。2年続く不作と新型コロナの影響は大きいが、ここが正念場。産地一体となって山場を乗り越えたい」(営農販売課)。
農水省災害総合対策室はコロナ禍で「全国の地域特産物は首都圏から注文がストップされ、困窮している」という。
地域色を生かした特産物は、一般家庭での消費よりも首都圏の飲食店や旅館などに供給している場合が多い。「地域の柱となす特産物の消費が落ち、打撃は大きい」とみる。
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2020年06月23日
[新型コロナ] “予防”にバナナ葉 SNSで話題に 神奈川県の植物園
ソーシャルディスタンシング(社会的距離を取ること)はバナナの葉1枚分──。神奈川県鎌倉市の植物園、県立大船フラワーセンターの呼び掛けが話題となっている。来園者の新型コロナウイルス感染を避けるために距離を取る提案で、インターネット交流サイト(SNS)やポスターが反響を呼んでいる。
同センターは緊急事態宣言を受けて4月10日から閉園したが、6月9日に再開した。
再開と同時に、職員がバナナの葉を使った感染予防策をSNSに投稿したところ、22日までに1100件以上の反応があった。ポスターも作成。安全と植物園を連想させる緑色を基調に、男性と女性の間にバナナの葉を描いた。
現在は例年よりやや少ないものの、1日500人ほどが訪れる。SNSやポスターをきっかけに、バナナのブースに立ち寄る来園者も増えた。
センターで広報を担当する石川十夢さん(29)は「バナナは子どもに身近な食べ物。ソーシャルディスタンシングの確保と同時にバナナの葉の大きさを学び、植物に興味をもってほしい」と話す。
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2020年06月23日
[新型コロナ] 和牛相場16%上げも 市場独自策が成果 飛騨牛=購買者に助成金 神戸ビーフ=一定価格で購入
新型コロナウイルス禍による和牛相場の低迷が長期化する中、枝肉の取引活性化に向けた食肉市場での独自対策が成果を上げている。県の事業を活用した購買者への購入助成や、一定価格での買い取りなどを通じ、購買意欲を刺激。相場が上向き、生産者の手取り確保につながるなど、注目を集める。(斯波希)
岐阜県は、県内の2市場でせり取引される「飛騨牛」の購買者に対し、1頭当たり10万円を助成する「飛騨牛市場活性化緊急対策事業」を5月の補正予算で措置。対象期間の5月中旬から6月中旬までのせりでは、岐阜市食肉地方卸売市場で、枝肉の加重平均価格(A5、去勢)が1キロ当たり2794円と、対策前の4月を16%上回った。
同市場、飛騨ミート地方卸売市場の2市場でせり取引される「飛騨牛」を対象に行ったもの。計8回のせりで657頭が取引され、1頭当たり価格でも、対策前に比べ約28万円高と、助成を上回る上げ幅となった。
県は「目に見える成果があった。手法を変えた生産者支援として有効」(農産物流通課)と手応えをつかむ。県肉用牛協会の辻直司会長は「今回の対策によって、停滞していた流通が回復傾向となった。県の基幹産業として飛騨牛を応援しようという購買者の心意気も励みになる」と話す。
兵庫県姫路市の和牛マスター(姫路市食肉地方卸売市場)の荷受会社・姫路畜産荷受は、相場低迷で打撃を受ける生産者への支援に向け、「神戸ビーフ」を一定価格で買い取る独自の緊急対策を5月に始動した。
借り入れによる準備金を財源に、1キロ2500円(税別)で買い取り、冷凍保存。県内の流通業者らでつくる神戸肉流通推進協議会と連携しながら、需要動向に応じて販売していく計画だ。
緊急対策を打ったことで購買意欲が刺激され、せりでも取引価格が安定する効果があったという。4月中旬以降、加重平均価格(A5、去勢)が1キロ当たり2000円を割る日があったが、対策を始めた5月は同2443円になった。
群馬県食肉卸売市場は、停滞する高級部位の荷動き回復に向け、JAグループや地元企業向け、運営する直売所での県産和牛のロースやヒレなどの販促を強化。「在庫がたまるのを防ぎ、購買者が次の枝肉を仕入れられる環境をつくり、牛の出荷を止めないようにしていく」と狙いを話す。
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2020年06月22日
日比谷花壇・農林中金が産地支援 花買い取り無料配布
日比谷花壇と農林中央金庫は共同で、東京ミッドタウン日比谷(東京都千代田区)で週末、切り花の無料配布を始めた。新型コロナウイルス禍のイベント自粛などで出荷できなくなった花を買い取り、産地を支援する目的。毎週金・土曜日にバラやガーベラ、シャクヤク、カーネーションなど、全国の産地から集まった合計1万本の花を配布する。7月11日まで。
産地を支援し、花の需要を喚起するための企画「SAVE THE FLОWERS」の一環。両者で費用を負担し、花の調達と広報を日比谷花壇が、運営と進行を農林中金が担当する。花の配布には、学生支援で雇用した大学生アルバイトが当たる。
12日から試験的に始めたところ好評だったため、配布本数を当初予定の倍の1万本に増加。買い取る花は産地や品目が偏らないよう配慮する。
「花を渡された人の表情がぱっと明るくなり、花の力を改めて感じている」と農林中金の担当者。日比谷花壇は「配布を機に花の魅力を感じてもらい、需要喚起に協力してもらえるきっかけになればいい」と話す。
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2020年06月21日
[新型コロナ] 政府 輸出「家庭向け」強化 コロナ対応 商品開発を支援
政府は19日、農林水産物・食品輸出本部の会合を開き、新型コロナウイルスが世界的に広がっていることを踏まえた輸出拡大対策を示した。
各国で需要の比重が外食から家庭食に移り、小売りやデリバリー(宅配)、電子商取引(EC)サイトでの販売が増えていることを受け、対応する商品開発や施設整備を支援することを確認。人の移動が困難な中、オンラインでの商談会や越境ECの活用を促す方針だ。
政府は農林水産物・食品の輸出額を2030年までに5兆円にする目標を掲げている。19年の9121億円から大幅な積み増しが必要だが、1~4月の輸出額は前年同期比9%減。新型コロナの影響で海外でも外食需要が減少し、旅客便の減便による物流の停滞なども追い打ちとなり、厳しい局面が続く。
本部長を務める江藤拓農相は「輸出は農林漁業者の所得向上に直結するものでなくてはならない」と強調。「現存する商流の維持、消費者の行動変容に対応し、輸出拡大に反転攻勢をかける」との考えを示した。
本部会合には関係省庁の副大臣、政務官が出席。新型コロナによって生じている変化を共有した。外出自粛などを背景に、各国で外食から家庭食に比重が移り、小売りでの販売が拡大。一部の国では家庭用の牛乳・乳製品、米などの需要が高まり、日本産の輸出が増えている。
こうした消費者の行動変容に対応するため、商品開発や加工・出荷施設の整備などを推進することを確認した。世界での感染拡大が収束しておらず、人の移動を伴う販路拡大が困難な中、インターネットを活用した販促を重視。オンラインによる商談会、越境ECなどを活用できる環境整備を進める。
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2020年06月20日