日本人は「格差拡大」の深刻さをわかっていない

コロナ禍で貧困層の雇用や教育環境が一層悪化

子どもたちも2カ月近く、学校が休校になった。この間、オンライン授業を模索したり、2週間おきに宿題のプリントを学校まで取りに来させたり、対応は学校によってまちまちだった。子どもたちの学びにも「格差」が直撃したと橋本教授は言う。

「学校に毎日通うわけではなく、自宅で学習していたわけですから、自学の習慣が身に付いている子どもと、付いていない子どもの差は大きくなります。一般的に言うと、貧困層の子どもたちには、自分で進んで勉強する習慣が身についていないから、学力がどんどん低下していく。逆に中間層以上は、親が教育の大切さを子どもに教えているから、自ら学ぶ習慣を身に付けている。

そのうえ、中間層以上は情報環境も整っています。学校外での教育も自宅で受けられるでしょう。ちゃんとした調査は行われていないですが、コロナ休校を機にどんどん学力格差が拡大しているのではないでしょうか。早急な調査が必要です」

「コロナによる一斉休校は、日本の教育環境の後進性を浮き彫りにしました。いまだに学校で1人1台のパソコンが配備されておらず、パソコンを自由に扱える環境ができていない。まったくできていない。中国や韓国と比べてはるかに遅れている。それが露呈したんです」

「格差は競争の結果、仕方ない」で済むのか

格差は競争の結果だから仕方ない――。自己責任論をベースにしたこの考え方は、この社会では当然と受け止められている。その結果、格差は大きくなりすぎ、弊害も広がった。

「たとえ豊かな社会であっても、経済格差が大きいと、人々は公共心や連帯感を失い、友情が形成されにくくなり、コミュニティーへの参加も減少します。犯罪が増加し、精神的ストレスが高まるから健康状態が悪化し、社会全体の平均寿命は下がっていく。コロナ以前からそのことは指摘されてきました」

「今回のコロナで、とくに海外では貧困層を中心に感染が拡大しました。それに、清掃員や配達員など貧困な労働者が担うことの多い職種については、富裕層も彼らとの接触を完全に避けることはできません。貧困層を貧困のままにしておくと、富裕層の健康も脅かされる。その構図も浮き彫りになりました」

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