「なんでもかんでも『ダメ』では続かない」 日本感染症学会・舘田一博理事長

2020年6月30日 05時55分

<新型コロナインタビュー>

新型コロナウイルスへの政府の対応などについて話す日本感染症学会の舘田一博理事長

 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認された今年1月以降、感染の拡大防止に取り組んだ関係者らは何を考え、どう行動したのか。インタビューで振り返り、再流行への備えに何が必要かを考える。

◆医療崩壊の一歩手前で食い止めた

 ―これまでを振り返って。
 未知の病原体ということで見通しが立たない中、日本は欧米諸国と比べ、死者数を非常に低く抑えることができた。日本全体で見れば医療崩壊の一歩手前で食い止められたと言えるだろう。感染者が見つかった時に感染経路を過去にさかのぼって調査し、感染源を特定する「クラスター対策」がうまくいった。国民皆保険制度による医療アクセスの良さ、重症例や濃厚接触者に絞ったPCR検査も奏功したと考えている。

◆第2波に備え保健所の機能強化を

 ―クラスター対策では感染ピーク時に保健所の業務が追い付かなかった。
 現場から「大変だ」との声が聞こえてきたのは事実。専門家会議では、保健所がクラスター対策を十分に行えるよう機能強化をすべきだ、という提言を出してきた。今は余裕が出てきているので、第2波に備えて体制を強化すべきだろう。

◆秋に第2波くればインフルエンザと重なる

 ―第2波の見通しは。
 秋に再流行する可能性がある。第1波は2~4月のおよそ3カ月間だったが、第2波は10月ごろから春先まで続く恐れがある。インフルエンザの流行と重なることも考えられる。

◆流行重なった場合のガイドライン策定へ

 ―より深刻な事態が予想されるのか。
 インフルエンザと流行が重なり、期間が長くなれば当然ダメージは大きくなる。日本感染症学会では夏をめどに、流行が重なった場合のガイドラインを策定する予定だ。一方で、第1波を経験したことから、第2波は比較的対策が取りやすいという側面もある。病気の特性や重症化のリスク、感染拡大のスピードなども分かってきた。

◆メリハリつけた行動の変容を

 ―国民はどのようなことを意識すべきか。
 メリハリを付けた行動変容が大事。何でもかんでも「ダメ」では続かない。マスクの着用は大切だが、街中を1人で歩いている時は着ける必要はない。コンサートも、例えばクラシックで会話がない状況であれば問題ないだろう。野球やサッカーなどのスポーツも、全ての観客を入れるのは難しくても、観客を減らせば開催できる。(聞き手・藤川大樹)

たてだ・かずひろ 1960年生まれ、神奈川県出身。長崎大卒。米ミシガン大に留学。2011年から東邦大医学部微生物・感染症学講座教授。日本感染症学会理事長、政府の新型コロナウイルス対策専門家会議のメンバーを務める。

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