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総長から


北海道大学総長 名和 豊春

 自ら考え、動き、未来に挑戦する

 グローバル化が急速に進み、インターネットが世界の各地を一瞬で結び付ける現在、世界は今その姿を大きく変えつつあります。
 人間や社会、そして自然における様々な現象や変化は、多種・多様な条件を背景とし、しかも相互に関連し合うため、単純には解き明かせない複雑な様態を呈しています。このような時々刻々と事態が急激に変化する状況では、従来の学問の延長線上でものを考え、問題を解決することが難しいと言えます。それらがどのようなものであり、そしてなぜそのようになるのか?自ら問いを発して、自ら調べ、自ら解明し、自ら理解していくことが求められます。すなわち、自分の頭で考える「思考力」と自ら行動する「自律力」が求められているのです。
 「考える」ということは、既存の価値や思考方法自体を疑い、それを変え、時には壊していくことです。言い換えれば、考えるためには既存の価値や思考方法に拘束されていてはなりません。大学が自由であり、社会の中で特異点であったのは、この「考える」という営みのためと言えます。北海道大学は、その源である1876年の「札幌農学校」の開校以来、140年を超える歴史の中で、未踏の学問領域を積極的に探求すること、国際性や多様性への柔軟な感受性をもつこと、人間形成の基となる幅広い教養を培うこと、そして、物事の本質を把握しそれを実際にも活かす実のある研究を進めることで,学生の自律心、独立心を目覚めさせてまいりました。北海道大学の建学の精神に則り、学生一人ひとりに対して、自らの可能性を発見し、それを育み、そして自分の持つ真の才能を理解することによって、未来の世界へ挑戦する「思考力」と「自律力」を育んでいきます。
 未踏の地に一人で踏み入るには、思考力や自律力の他に、大変な勇気がいります。札幌農学校の初代教頭W.Sクラーク博士は、8ヶ月の短い滞在の後に札幌を離れる時、学生に「Boys, be ambitious」を言い残しました。私は、北海道大学の学生の皆さんと教職員が、このフロンティア精神を各自の胸に抱きつつ、協働して学問を深め、新たな叡智を創りだすことで、「世界が抱える問題を解決し、人類の幸福に貢献する、“独立心と自律心を持った豊かな北海道大学”」を創り上げていきたいと思います。