漁業権で大幅譲歩、中台連携を阻止=日台漁業協定


ニュース 政治 作成日:2013年4月11日

漁業権で大幅譲歩、中台連携を阻止=日台漁業協定

記事番号:T00043042

  日本と台湾は10日台北市で、尖閣諸島(沖縄県石垣市、台湾名・釣魚台列嶼)周辺海域の漁業権をめぐる協定「日台民間漁業取決め」に調印した。台湾に従来求めていたよりも広い範囲で漁船の操業を認めるなど、日本側が大幅な譲歩を行った。背景には昨年9月の尖閣諸島国有化以降、日中間の対立が激化した中で、尖閣問題での中台連携を阻止する狙いがあるとみられる。11日付自由時報などが報じた。


大橋光夫・交流協会会長(中)と林永楽・台湾外交部長は調印会場で固く握手を交わした
(10日=中央社)

 台湾は従来、台湾漁船の操業範囲として、台湾側が策定した東経126度の中間線「暫定執法ライン」までを主張。日本は実際の中間線から大きく日本側に入り込んでいるとして認めず、対立してきた。今回の合意では、北緯27度以南の暫定執法ラインまでの大部分の海域を、相手側の法令適用が排除される海域として設定。台湾漁船は尖閣諸島周辺の12カイリの日本領海を除き、日本公船から干渉を受けずに操業できることとなった。

 台湾側はさらに、暫定執法ラインを越える計4,530平方キロメートルの海域で新たに操業権を獲得。これにより先島諸島に近い海域での漁労が可能になった。また、暫定執法ライン東側の沖縄本島寄りの海域は「特別協力海域」として、日台双方がそれぞれの法令に基づいて漁船の自主的管理を行うことが取り決められた。同海域でも台湾漁船は日本側の干渉を受けない。


点線内が台湾漁船が日本公船の干渉を受けずに操業できる海域。新たに獲得した先島諸島周辺の海域はマグロの好漁場だ(中央社)

 台湾政府も尖閣への主権を主張しているが、協定締結に当たって主権問題は棚上げされた。

 協定締結に対し宜蘭県蘇澳区漁会(漁協)の林月英総幹事が「これは台湾の漁業権にとって重大な突破だ」と発言するなど、台湾の漁業関係者からは歓迎の声が伝えられている。

 協定は関連手続きを経て1カ月以内に発効する見通し。また、今後日台は1年に1回「日台漁業委員会」を開催して関連する諸問題について話し合う。

尖閣国有化が契機

 日台漁業交渉は1996年に始まり、これまで17回の会談を行ってきたが長年合意を見なかった。

 民進党政権時代に駐日代表を務めた許世楷氏は、日本政府による尖閣国有化後の中国との摩擦激化を、日台漁業交渉がスピード決着を見た要因に挙げる。中国は尖閣問題でたびたび台湾に共闘を呼び掛けており、この事態を懸念した日本が、漁業交渉で台湾に譲歩して阻止に動いたというものだ。実際、台湾世論は尖閣の主権にそれほど関心はない一方、漁業権を漁民の生計問題として重視していた。漁業権問題が解決した以上、今後、台湾の活動家は尖閣問題で訴求力を持ちにくくなる。

 また、同海域での「争議棚上げ、漁業資源の共同での享受」の実現は、日台関係の強化にもつながる。馬英九総統は協定締結を受けて「日台関係は新たな段階に入った」と評価した。

 なお、台湾側の対日窓口機関、亜東関係協会は、東日本大震災で台湾官民が巨額の義援金を送ったことで、日本側が日台関係の重要性を深く認識したことも漁業交渉の進展要因として挙げた。

米国も後押し?

 台湾の外交関係筋によると、漁業協定の締結には、米国も重要な役割を果たしたという。台湾漁船が今年間もなく始まる漁業期で尖閣海域に出漁し、行政院海岸巡防署(海巡署)の巡視船が護衛すれば、中台が共同で日本の主権に挑戦する構図が築かれることになる。さらに、台湾の漁船が中国の巡視船に守られて操業するようなことになれば、中国が同海域で実際に主権を行使する形になり、日本にとって非常に望ましくないものとなる。米国はこうした事態の発生を見越して日台漁業交渉の進展を積極的に支持し、この姿勢が日本政府に影響したという。

中国「重大な関心」表明

 一方、中国は同日、洪磊外交部報道官が「重大な関心を表明する。日本側に『一つの中国の原則』の順守と、台湾に関する問題に慎重な対応を要求する」と発言した。中国にとっては尖閣問題で「台湾カード」がさらに使いにくくなったことは間違いない。

 尖閣海域では今後も中国や香港の活動家の侵入や、中国公船による領海侵犯など摩擦が続くことが予想される。台湾にとっては、日台漁業協定が日本との対中共同戦線を組んだいう意図ではないことを中国に説明しておく必要もある。