2020-06-29

夏への扉』はとんでもない愚作なので褒めないでください

夏への扉』が実写化するというニュース話題だ。

この機会に原作を読んでくれ、というSFファンの声が多くて本当に辟易する。

SFアイデアの新奇性、センス・オブ・ワンダー重要なのであって、今さらヴェルヌやウェルズを読んだところで、価値はない(ギブスンやディックも同様)。

こういう「オススメSF」の話題になると必ず出てくるのが『夏への扉』だ。

はっきり言えるが『夏への扉』を薦めるやつは見る目がなく、センスに欠けていて、信用できないってことだ。

私もその手合いに騙されて、貴重な時間無駄にしてしまった。

夏への扉』は読まなくて結構。今からその理由を端的に3つ述べる。たったの3つだよ。

 

夏への扉』は決して猫小説ではない。

夏への扉』は猫好きなら読んでおくべき、みたいな薦め方もされる。

読んでみて驚いたのだが、これはまったくもって猫小説ではない。

なぜなら猫はストーリーの本筋とまるで関係いからだ。

夏への扉』は共同経営者に裏切られた主人公が、冷凍睡眠未来ジャンプして復讐を果たそうとする話だ。

では、猫は何なのかというと、主人公が猫を飼っていて、たまに触れられる程度。

一緒に行動するし、『夏への扉』というタイトルは猫の行動から来ているが、猫が作品テーマだったり、猫の行動が何かストーリーに影響を与えるわけでもない。

ただの添え物であり、これを「猫小説」だと思ってしまうやつは、どうかしている。

以前、『世界から猫が消えたなら』という小説20万部?かそのぐらい売れていたが、これもとんでもない愚作で、主人公消失物について浅い思弁を展開するだけの小説とはいえない代物だった。

どうやら世の中には猫が出ていればほかはどうでもいい連中がいるようだ。

猫好きは『綿の国星』でも読みなさい。こっちは掛け値なしの名作です。

 

プロット杜撰すぎる

主人公復讐を果たすために未来に行くのだが、しかし、想像した未来と違い、不可解な点が散見されるので、その理由を正すために過去へと舞い戻ることになる。

主人公未来にきたのは「冷凍睡眠」によってなので、過去に戻ることはできない。

じゃあ、どうやって戻るのか・・・というのが肝になるはずだが、『夏への扉』は驚くべき処理をする。

たまたま未来世界で知り合った男が、たまたま時間旅行を研究しているマッドサイエンティストと知り合いなのだ

そして、マッドサイエンティストを紹介してもらって過去に戻る・・・なんじゃそりゃ?

ほかのも「たまたま」で処理される部分はいくつかある。たまたま通りがかったとか、たまたま見逃した・・・とか。

それに未来過去へと行ったり来たりするが、そこでタイムトラベルらしい伏線を張ったり、解消したりということはない。

例えば先日もテレビで放映された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なら、「過去でのあの行動が未来にこう生きてくるのか!」という驚きがあるが、『夏への扉』では一切そういうのはない。時間移動というより、単なる舞台移動にしかすぎないのだ。

夏への扉』はタイムトラベルものとしても優れていない。プロット杜撰復讐ものなのだ

 

ロマンスご都合主義すぎる

夏への扉』のなかにヒロインと呼べる人物がいて、最後はそのヒロインと結ばれて物語は終わる。

夏への扉』において、それは一緒に会社を興した男の義理の娘だ。

このヒロインは幼い頃に主人公なついていて、未来世界主人公と結ばれる。

仲のいい少女がずっと思っていてくれて、未来で結ばれる、というロリコン白昼夢のような展開だ。

しかし、それでも合理的説明がなされていてれば文句はない。

ヒロインがなぜ主人公なついているのか、なぜずっと主人公を思っていてくれてるのか(何年も!)、その説明がなされればいい。

だが、驚くことにそこら辺の理由が一切説明されない。

ヒロイン理由なく主人公なついていて、理由なくずっと待っていてくれるのだ。

これをご都合主義と呼ばずしてなんと呼ぶ。私は読み終わって背筋が凍った。

こんな展開を「感動のラブストーリー」だと思っているやつもいるようで、SFファンはどおりでモテないはずだと合点がいった。

 

最後にもう一つ。

聞けば、海外では『夏への扉』の評価は決して高くない。

オールタイムベストの類では上位には入ってこないという。

夏への扉』が人気なのは日本特有ことなのだ。それを知ってはは~んと納得がいった。

夏への扉』はJ-POP歌詞みたいなものなのだ

中身はないが、何だか心地よい。日本にはそういうものに騙されるやつが多い。

なんていったって『負けないで』みたいな中身空っぽな歌がミリオンになる国だもんな!

『負けないで』に励まされるやつってどんだけ寂しい人生を送っているんだろう。可哀想だ。

うん、おれも仕事がつらいときたまたまラジオから流れてきて、泣きそうになっちゃったけどな。

お前ら、他人評価に惑わされるんじゃねえぞ。お前にとって何が面白いのか、知っているのはお前だけだ。

ぼくからは以上だよ。

  • ギブスンやディックやアシモフやオーウェルはケイス君の拳銃自殺もあるし色褪せんやろ 夏への扉がクズなのは同意

  • やっぱつまんないのか

  • 読みやすいからいいのよ。

  • anond:20130512143540 再投稿?

  • それでもワイはこの話が好きやで、ワイには心地ええから。 (読む人それぞれに合わせた心地ええ話の存在をたった独りの考えで駄作扱いして否定するんなら、オマエはなろうやカクヨ...

  • 「SFはアイデアの新奇性」だけってことはないし、ウェルズだってギブスンだって今読む価値はいくらでもあるだろ。 ハインラインだって『宇宙の戦士』や『月は無慈悲な…』なら(政...

  • ハインラインだとスターマン・ジョーンズとか好きなんだけど、まあ世間の評価では駄作なんだろうなとは思う。 けど、軽い読み口のジャンクなご都合主義SFもいいじゃない。 ブリン...

  • 下記の増田でも、「夏への扉」は、「どこがどう名作なのか説明してほしい」と書かれてたね。 タイムトラベルものの小説でおすすめ教えて https://anond.hatelabo.jp/20200309194930

    • 1 まずBTTFよりもターミネーターよりも先に出版されていることが一つ。 さすがにジュール・ヴェルヌのタイムマシンには勝てないが、そういう当時としての目新しさがある いく...

  • はげどー やたらSF小説おすすめであがるけど実際読んだら期待はずれ感すごかったわ 素直に日本人の短編をよんだほうが読みやすいし楽しかった 翻訳ものでおもろかったのはあなたの人...

  • >>、他人の評価に惑わされるんじゃねえぞ。 まさにその通りなのでこの意見も参考にしません

  • https://anond.hatelabo.jp/20200629103534

  • 絶対増田にこれあると思ってたらあって安心した

  • 同じく面白さがわからんかった。 代わりに、猫好きにはコードウェイナー・スミスの作品を薦めたい。 ただ長編(ノーストリリア)が電子化されていない上に絶版で手に入れにくいのが...

    • 短編は完全に電子化されてるし「鼠と竜のゲーム」はそっちに入ってるから猫的にはええやろ

  • 最近こういうプロットの誤用多いね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88_(%E7%89%A9%E8%AA%9E) 本題の話なら古典に良いものなし、という意見は概ね賛同するけど、ディックは...

  • これはかなりガチ。 ネコで読むのなら「ウルタールの猫」をお奨めする。 もっとずっと単純で話がとっ散らからない短編で、それでいてちゃんと猫。

  • SFはアイデアの新奇性、センス・オブ・ワンダーが重要なのであって、今さらヴェルヌやウェルズを読んだところで、価値はない(ギブスンやディックも同様)。 何重にも間違ってい...

  • もはや記憶もあいまいだがSFをガジェットに使ったラブロマンス(?)って感じだったな。 「同じ時間の流れを生きている中ではまっとうな恋愛(当時とすれば)にならないはずの男女が結ば...

  • プロットが杜撰だとかフィクションに何を求めてるんだか。 ハインラインには「時の門」というもっと緻密なタイムパラドクス物があるけど、「夏への扉」のほうが楽しめたなあ。 海外...

  • また増田が夏への扉ディスってる…何なんだ一体、ハインラインに親でも殺されたのか

  • >ロリコンの白昼夢のような展開だ。 これ100%同意なんだけど、さらに補足すると何がキモいかって ・主人公は大人の女性とはうまく行かない ・しかし無知で純朴で従順なロリと結ば...

    • 主人公がロリコンと聞くと映画グリーンマイルを思いつく

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