出入国の緩和 前のめり避けて慎重に
2020年6月29日 07時10分
国内で新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着いたことを受け、政府は海外との往来を緩和する。社会経済活動の再開へ出入国制限の緩和が待たれるが、性急な緩和拡大には慎重であるべきだ。
政府はベトナム、タイ、豪州、ニュージーランドからの出入国制限を近く緩和する方針だ。既にベトナムへの航空便が再開された。
日本はこれまで百十一カ国・地域からの外国人入国を原則禁止としてきた。日本人の出国も多くの国を対象に制限している。
国内では十九日に県を越える移動の自粛要請が解除された。政府は海外とも社会経済活動再開に向けた動きを加速させたいだろう。
緩和される四カ国とも流行は抑えられている。特にベトナムは多くの技能実習生を日本へ送り出している。受け入れている企業側も早く人材の往来を実現させたいに違いない。
一方、世界保健機関(WHO)は十九日、南北米大陸や南アジアなどでは感染拡大が続き「世界は危険な新局面に入った」と警戒を呼びかけた。経済活動再開に伴い感染者も増えだしている点は、人ごとではない。
日本の空港検疫でも帰国者など一部来日者の感染が判明するケースが続いている。今後、人の流入を増やすには検疫態勢の強化が前提であることは言うまでもない。
政府は緩和に際し、相手国と相互に実施する防疫対策を示した。
ビジネス目的の訪問に限定し、検査の強化を進める。来日して二週間は位置情報の保存を求め、滞在先と仕事先の往復のみ活動を認め、公共交通機関の利用は認めないなどの対応を検討している。
入国人数と活動範囲を制限し、感染者が出た場合も迅速に把握するよう努める方針だ。
海外からウイルスが持ち込まれて再流行する懸念がある以上、慎重な対応は当然である。
唾液から判定するPCR検査の実施態勢も整える。より迅速に検査ができる点は歓迎したい。
ただ過信は禁物だ。PCR検査は感染者でも陰性となる「見逃し確率」が少なくても約三割あるとされる。感染者が陰性だと本人も周囲も気付かずに感染を広げる懸念は消えない。
政府は、検査の特性も含め、実施する防疫対策を入国者や企業に対して周知する必要がある。
経済立て直しを急ぐあまり、感染対策が後退しては逆効果だ。海外との往来緩和は感染状況を注視して段階的に進めるべきである。
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