概要
典型的な陰キャを「すき家で三種のチーズ牛丼を頼んでそうな顔」と一言で表すネットスラング。および、その絵や画像のこと。略して「チー牛」とも称される。
絵の内容は、斜め横顔の男性がやや写実寄りの画風で描かれており、左側に「すいません。三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします。」という吹き出しが示されている。
画像が作られた当初はほぼ反応すらなかったが、10年の時を経てなんJのとあるスレ内で画像が貼られ、大きな反響とじわじわとした拡散を経て、2020年には爆発的な流行が発生し「チー牛」という単語でスレが乱立され、ツイートが乱発されることとなった。後述する広がりの背景や絵の内容から、もっぱら煽りや蔑称、自虐として使用される。
起源
この絵は2008年にネットで活動する絵師「いびりょ」によって作成されたものだとされている。本人によると自分の自画像であり、後に画像が取り上げられたまとめブログで気持ち悪がられることについては納得している様子である。
広まり
なんJの書き込み
もともとこの絵が作成された頃は特に話題になることはなかったが、2018年のなんJのスレッドである「なんJ 昼のニート無職部 part3」に書き込まれた以下の書き込みにチー牛画像が添付され、それが広がりの起点とされている。
301 風吹けば名無し 2018/07/19(木) 17:11:15.64 ID:0V7RAyaFa
就労移行支援で面白かったのは利用者の若い男が皆同じ顔をしてた事
ザ・陰キャって顔
眼鏡
黒髪
子供のような髪型
覇気のない抜けた顔
(悪い意味で)童顔
大人なのに中学生のようで気味悪い
10人いたら8人がそんな顔
https://i.imgur.com/akAJmjk.jpg
人間顔で分かるんやなって
反響
上記の書き込みに対して同スレッド内では「ワイにそっくりやんか」「ワイやん…」「ワイで草」などといった書き込みが相次いだ。その後は、いわゆる無職スレ・発達障害スレにレスのコピペとともに画像が貼られるようになり、次第にまとめブログに取り上げられるようになる。後の2019年6月頃にはふたば☆ちゃんねる内で、女版やイケメン版などといったコラが大量に作成され一種の祭りのような盛り上がりを見せた。そして、コミケでもチー牛のコスプレをする人物が現れるまでに至った。
お膝元のなんJでは陰キャや社会不適合者、発達障害者などの代名詞としてこの画像がしばしば取り上げられ、2020年には爆発的に流行する。5ch内ではチー牛関連スレが1万以上立てられ、Twitterでは毎日数千単位で「チー牛」の単語がつぶやかれている状態になった。
評価
上記のなんJの書き込みを発端にして爆発的に広まったことから、もっぱら蔑称や煽り、自虐として使用されることが多い。特にお洒落でない黒縁メガネや1000円カットのような髪型、アデノイド顔貌、下膨れ顔、童顔、死んだ目などがしばしば取り上げられてバカにされていることがチラホラ見られる。中には似ている犯罪者の顔写真が取り上げられ「犯罪者顔」と評されたり、犯罪者の顔がチー牛画風で表されることもある。
ネットではチー牛煽りが幅をきかせるようなことがある一方で、そのネガティブな意味合いから偏見やルッキズムを助長するとして反発がされることもある。また、チーズ牛丼の販売元のすき家やそれを購入する人に対する風評被害に発展する恐れから、この言葉を忌避する向きもある。
研究
拡散の起点となり、チー牛顔を自認する人物が多発した「なんJ 昼のニート無職部」では、件の書き込みした人物(ID:0V7RAyaFa)によると、就労移行支援を利用する若い男性のほとんどがチー牛であったとされている。また、この人物は同スレ内で「就労移行支援は発達ガイジしか使えない場所だけど利用者は本当に皆こんな顔してた。若い男の8割はこれや。発達ガイジは見ただけじゃ分からないっていうけど、ぶっちゃけ差別だのなんだのうるさいから言う奴がいないだけで、分かるでこれ...」という書き込みをしており、チー牛顔と発達障害の関連について言及している。なお、就労移行支援は、障害者総合支援法による障害者に対する職業訓練制度であり、利用できる人は基本的に身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病者といった人に限定されている。
発達障害の一つである自閉症スペクトラムと顔の形態に関する研究はしばしば行われているものの、一貫的なコンセンサスに達したものは少ない。自閉症スペクトラムと一般の人物を比較した多くの研究では、自閉症グループの方が眼窩、鼻、口腔の形態異常の発生率が高いことが報告されているが、所見には一般的に一貫性が見られない。例えば、6つの研究では、診断された患者の眼窩間距離が非典型的であることが確認され、眼窩間幅の増加もしくは減少の両方が報告されているが(1)、他の研究では自閉症の成人・小児と定型発達者の間には眼窩間の違いは観察されていない(2)。
文献で調査された特徴の中では、自閉症スペクトラムにおける顔面非対称性の増加に関連する所見のみが、ある程度の一貫性を示している。2019年に発表された三次元写真測量を用いた研究では、顔面非対称性と自閉症児の関するそれまでの文献内容が確認され、さらに特に奥行方向の顔面非対称が有意に大きいことがわかった(3)。そして、自閉症児の側方顔面非対称の増加は、自閉症診断観察スケジュール(第2版)の自閉症スペクトラム症状の重症度と関連していることがわかった。
ちなみに、顔の対称性は人の美しさの普遍的な要素の一つであると実証的に示されているので、顔面非対称性が大きいと一般的にはモテにくいと考えられる。
余談
- バリエーションとして後に作者が首吊りをしているチー牛を描いた。真意は定かではないが、カエルのぺぺのような可能性もある。
- 実際のところ、すき家には「三色チーズ牛丼」というものはなく、正式な商品名は「3種のチーズ牛丼」である。
- すき家を運営するゼンショーホールディングスは、広報室として「チー牛」という言葉を認知しているというコメントを出している。
- 広がりの発端となったなんJでの書き込みをした人物(ID:0V7RAyaFa)は、同スレ内の自分語りによるとニートであり、アルバイト先を探していた。それまで就労移行支援に通っており、そこでの経験から就労移行支援の利用者のほとんど、若い男性の8割はチー牛顔であったと振り返っている。また、この人物は、いわゆる毒親に育てられて学生時代はいじめられ、後に荒れに荒れて人を殴り停学、そして万引をしたことがあるという。
- 「チー牛煽りをしているのはチー牛」という風潮やその画像がある。後にあるツイッターユーザーがzoomに出ていたあるチー牛を晒したときに、スクショではなく画面をスマホで直撮りしたため、液晶画面の反射からツイ主の顔がチー牛であること(晒されたチー牛とは別人)がわかってしまった。
- インスタでの「#チー牛」の投稿は150件程度とかなり少ない(2020/06/18現在)。そのため、チー牛がチー牛を煽るという構図はそれほど間違っていないのかもしれない。
- 「チー牛」の代わりに「派遣顔」という言葉があてがわれたことがある。
- 海外の似た事例として「soy boy」(草食系と似た言葉)や「The Virgin Walk」(童貞歩き)といった言葉が取り上げられることがある。
- なんJで生じたネット史上最大の炎上であるハセカラ騒動において、その元凶であり「なんJの王」を自称した長谷川亮太は、すき家のおすすめにチーズ牛丼を第一に挙げたことがある。
出典
(1)
- https://doi.org/10.1186/2040-2392-2-15
- https://doi.org/10.1371/journal.pone.0020246
- https://doi.org/10.1007/s10803-006-0103-4
- https://doi.org/10.1007/s10803-010-1018-7
- https://doi.org/10.1002/(SICI)1096-9926(199705)55:5%3C319::AID-TERA4%3E3.0.CO;2-U
- https://doi.org/10.1007/BF01537727
- https://doi.org/10.1155/2014/743482
- Ohdo, S., Madokoro, H., & Sonoda, T. (1986). Incidence of minor physical anomalies in patients with early infantile autism. Pediatrics International, 28, 633–638.
- Tripi, G., Roux, S., Canziani, T., Brilhault, F. B., Barthélémy, C., & Canziani, F. (2008). Minor physical anomalies in children with autism spectrum disorder. Early Human Development, 84(4), 217–223.
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