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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナウイルス  治療に鼻うがい!?

新型コロナウイルス治療に鼻うがいを推奨!?

 新型コロナウイルスは治療の特効薬もなく、ワクチン開発もまだまだ時間がかかりそうです(2020年6月現在)。「当面、マスクで感染を防ぐしかないのか」と、心細く思っている人も多いことでしょう。

 先日、イギリスから従来のコロナを含むウイルス性感冒の研究が報告されました。そこで効果が調べられたのが、鼻うがいと口のうがいです。 鼻うがいは、以前にもこのコラムで紹介 しましたが、なんと新型コロナウイルス感染症の“治療”に使用できるのでは、という提言です。

海水に近い塩分濃度で症状改善

 ただし、この研究で使われたのは高張食塩水です。普通、鼻うがいには人肌程度にあたためた塩分濃度0.9%の生理食塩水を使用します。これは血液の塩分濃度と同じなので、鼻へのツンという刺激がないのですが、高張食塩水は塩分濃度が2.5~3.0%と3倍の濃さになっています。海水塩分濃度が3.4%なので、その濃さが想像できるでしょうか。

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鼻うがい用の容器と食塩

 研究では、風邪症状が発現してから、この高張食塩水による鼻うがいを1日に最大12回行ったところ、鼻うがいをしなかった群と比較して、なんと風邪症状の期間が1.9日短縮され、家庭内での感染が35%減少、投薬量も36%低下し、ウイルスの排出量も減ったというのです。従来のコロナウイルス感染症にしぼると2.6日の期間短縮、せきや ()(せい) 、鼻閉といった症状も早く改善しました。

 新型コロナウイルスでは、無症状でも鼻や喉からウイルスが検出されますが、この高張食塩水による鼻うがいの結果を考えると、ウイルスの排出を抑え、感染抑制に役立つ可能性が示唆されます。

※高張食塩水による鼻うがいのやり方

 人肌に温めた水道水200mlに食塩6gを溶かすと、3%の高張食塩水が出来上がります。これを片方の鼻をつまんで、もう一方の鼻からすすり上げ、鼻や口から吐き出します。刺激が強い場合は、食塩を5g(2.5%濃度)に減らしてください。

 (参考サイト)http://www.elvisstudy.com/nasal-irrigation-and-gargling.html

鼻うがいの効果 話題の次亜塩素酸にも関連

 では、どうして鼻うがいが効果を表すのでしょうか。大きく二つの理由が挙げられます。

 まず線毛機能が維持されることです。鼻粘膜上皮や気管支上皮にある線毛は電子顕微鏡でないとはっきりと見えないほどの細かい毛ですが、これが密集し、1秒間に10~15回くらい波打って異物を排除しています。線毛は、温度や湿度の低下でその動きが弱まり、喫煙や過度の乾燥では消失してしまいます。線毛機能に異常が出てしまう線毛機能不全症候群では、頻回の副 ()(くう) 炎や気管支炎になりやすいことからもその大切さが分かるでしょう。線毛機能を維持するには、生理食塩水での鼻うがいで良いです。

 二つ目の理由は、次亜塩素酸です。次亜塩素酸水の空間噴霧が新型コロナウイルスの消毒に使えるのかどうか議論がなされていますが、もともと私たちの体内の貪食細胞は次亜塩素酸を使って異物を消化しています。次亜塩素酸は、コロナウイルスを含むさまざまなタイプのウイルスに対して阻害作用を持っています。

 次亜塩素酸は、異物を攻撃する貪食細胞にのみあると思われていたのですが、実は上皮細胞でも生成され、抗ウイルス作用を生み出していることが分かったのです。塩化物イオンがあると、上皮細胞であっても次亜塩素酸を生み出して体を防御しているので、この塩化物イオンの供給源になる高張食塩水の鼻うがいが有効なのでしょう。

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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