花街「吉原」…140店のうち3割が閉店も、「チャットレディ―」鞍替えも模索

国内 社会 2020年6月28日掲載

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4月の収入は10分の1

 1日の新規感染者数が50人を超える日もあるなど、東京都内では6月下旬以降、新型コロナウイルス再流行の兆しが出始めている。中でも、飲食接待を伴うキャバクラやホストクラブなどで集団感染が相次ぎ、夜の街で生計を立てる人々は苦境に立たされている。出口の見えないコロナ禍の影響は、都内最大級の花街「吉原」をも直撃する。

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「今までこんなひどいことはなかった。影響はリーマンショックなんて比にならない。界隈では140店舗くらいあるソープのうち、40店舗近くが閉店するんじゃないかとささやかれています」

 吉原で20年近くソープランドを経営する男性店長はため息混じりに漏らす。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、他の繁華街と同じように吉原でも、本来ならかき入れ時の3月の時点で、客足が遠のき通りは閑散としていた。女の子が出勤しても「お茶を引く(客がつかない)」店舗などは、早々に一時的な休店に追い込まれ、人気店でも売り上げは3割ほどに減っていた。

 さらに、4月10日には政府の緊急事態宣言を受け、東京都がキャバレーやナイトクラブと共に、「個室付浴場業に係る公衆浴場」つまりはソープランドにも休業を要請した。従業員の女性と男性客が濃密な時間を過ごすソープランドなどの性風俗店も、新型コロナウイルスの流行が広がるにつれ、主要な感染源の一つになることが危惧されていたのだ。

 男性が経営する店も要請に従い休業したが、吉原では1店舗の家賃だけでも、相場は100万円以上。東京都は休業に協力した事業者に対して、原則50万円、2店舗以上であれば100万円の「感染拡大防止協力金」で補償するが、休店中も光熱費や水道代の基本料金などは支払わねばならない。男性は「協力金だけではとうてい維持に必要な経費をペイできない。少しでも稼ぐために自分自身が、夜の店で運転手のアルバイトをしていますよ」と嘆く。

 一方で、ゴールデンウィークの頃から、密かに営業を再開する店が増え始めたという。ただし、「シャッターを下ろして、灯りを消した状態」での営業だったため、フリー(新規)の客はほとんど足を運ばず、店で働く女の子についた常連客がちらほら訪れる程度。

「これまでなら2月の閑散期でも、1日あたり5万円以上は手取りがあったんだけど。今年に限っては、4月の収入は大げさでなくて10分の1になった。インフルエンザならどこでうつったかは追及されないけど、仮にコロナにかかって、家族や職場に吉原に行ったことがばれたら困るもんね」

 客が支払う相場が「120分6万円」程度のとある「高級店」で働く、20代の女性はそう苦笑いする。

 そもそも、吉原は近年、警察当局の取り締まり強化の結果、以前は黙認されてきた深夜帯の営業が厳しく規制されたことに加え、ホテルに女性が派遣されるデリバリーヘルスや表向きは「抜き」サービス無しのメンズエステなど性産業が多様化したことによって、景気は右肩下がりが続いていた。

「出会い系などで、無登録の業者が女の子のバックにつき、“素人”を装って男を誘い、女の子に仕事を割り振る『裏デリヘル』も横行しています。相場は1回ホテルで会って1万5000円くらいで、女の子と業者の取り分が半々。パパ活にしても、短い時間でサクッと稼ぎたいという風に、女の子の性に関する考え方も変わってきているんでしょう」(風俗業界関係者)

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