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 7月5日投開票の東京都知事選の候補者たちは、動画配信やテレビ会議システムを積極的に活用した選挙戦を繰り広げている。新型コロナウイルスの感染が収まらない中、街頭での選挙活動を見直し、ネット選挙に活路を見いだす陣営もあれば、ネットやSNSでの訴えにどこまで効果があるのか不安視する声もある。

 「『(街頭演説を)ユーチューブで見てます』って方、東京にお友達いませんか?」。れいわ新選組代表の山本太郎氏(45)は街頭演説で、ネット中継を見ている都外在住者も意識し、支持拡大を呼びかける。

 ネット選挙が解禁された2013年の参院選で初当選した山本氏は、街頭演説をネット中継し、演説を文字に起こしてサイトに掲載している。街頭とネットの双方にアピールする戦略だ。陣営幹部は「ネットによる『空中戦』だけでなく、草の根も重要。街頭や電話かけといった『地上戦』にも力を入れている」

 「3密対策」で街頭演説をしない方針の現職小池百合子氏(67)はオンライン選挙を宣言している。

 「一番多かった質問はこちらです。『七つのゼロの公約がほとんど未達成だがどうなっているのか』」

 小池氏はユーチューブにアップした動画でそう述べると、「ゼロ」の一つに掲げた待機児童の減少を強調した。ツイッターで質問を募る企画「#小池ゆりこに物申す」を展開し、回答を動画で配信している。陣営幹部は「批判に耳を傾ける姿勢を見せるのが狙い。ネットが頼みの綱で試行錯誤が続いている」と話す。

 ツイッターで5月に立候補表明をした元日弁連会長の宇都宮健児氏(73)は、オンラインイベントを繰り返す。弁護士や労組関係者、大学教授らとネットを通じて雇用や教育問題など都政の課題について語り合ってきた。

 立候補した12年と14年の都知事選は「大群衆を集める選挙だった」と宇都宮氏は振り返る。だが、街頭演説に訪れる人の多くは元々支援者だとも感じてきた。「演説に来ない人に届く運動をやらないと勝てないと思っていた。ネットはそれを乗り越える手段になるかもしれない」と話す。

 元熊本県副知事の小野泰輔氏(46)は21日夜、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、大学生約80人と交流会を開いた。ユーチューブでも生配信し、約1時間、コロナ対策や教育無償化などについて話し合った。

 他候補に比べて知名度で劣る分、陣営は「街頭での地上戦が基本」とする。一方で、選挙カーでの遊説ができない午後8時以降は、オンラインでの発信にも力を入れる。小野氏は「たくさんの人の顔を見られる貴重な機会。集会が開けない今は、大事な選挙戦術の一つ」と話す。

 NHKから国民を守る党の党首、立花孝志氏(52)は街頭演説は「1日1カ所」と決め、毎回、ユーチューブでライブ配信している。選挙事務所も構えず、チラシを各戸にポスティングするといった従来型の選挙はそもそも想定していない。

 元々、ネット動画で注目を集めて国会で議席を得た。立花氏のユーチューブのチャンネル登録者数は46万人超に上る。スタッフは「ネットが一番お金がかからないやり方」と話す。「選挙に行かない人」をターゲットにして、支持拡大を図る。

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