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 新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所から拡散したとする米国の主張に対し、真相を知る立場にあると見られていた同研究所研究員が25日、中国国営メディアに登場しウイルス流出の可能性を否定した。米国を含む国際協力の舞台だった研究所は、激しい情報戦の渦の中にある。

「科学が政治化されている」

 中国国営の中国国際テレビ(CGTN)のインタビューに応じたのは、コウモリを宿主とするウイルス研究が専門の石正麗研究員。フランスの大学で博士号を取り、米国の微生物学アカデミーの会員にも選ばれている。コウモリを求めて雲南省の洞窟などに通う姿から、「バットウーマン」とも呼ばれる著名研究者だ。

 石氏は新型コロナウイルスについて、昨年12月30日に原因不明の肺炎患者の検体として初めて研究所に持ち込まれたとし、「遺伝子配列を調べ、我々が知っているどのウイルスとも違う未知のものだとわかった」と説明。それ以前に新型ウイルスの存在は知らなかったとの立場を強調した。

 石氏は「伝染病の研究は透明性を持ち、国際的に協力していかなくてはいけないものだ」と強調。新型ウイルスの起源をめぐり米中が対立する現状について、石氏は「政治と科学が混ざり、科学が政治化されている。全世界の科学者が望んでいない状況だ」と述べた。

 石氏は2002~03年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の起源を探る研究を続け、18年にSARSがコウモリから人に感染した可能性が高いとの研究結果を発表した。

 新型コロナウイルスの起源について、海外で「武漢の研究所から流出した」との説が流布され始めた2月、石氏は自らのSNSで新型ウイルスは自然由来だと主張。同研究所に所属し真実を知り得る立場にあることから発言が注目されたが、米中の対立が激しくなるにつれ、発信の機会を減らしていた。

 国営メディアが石氏の発言を報じたのは、米国の圧力をはね返し、国際世論を取り込もうとする情報戦の側面がありそうだ。

 今月開かれた世界保健機関(WHO)の年次総会で、習近平(シーチンピン)国家主席は「各国の科学者がウイルスの発生源と感染ルートを研究することを支持する」と述べた。しかし、外務省報道官は「直ちに始めるのは時期尚早」と留保をつけ、米国の影響が及ぶ形での調査には応じられないとの構えを崩していない。

実は米国も研究協力

 米中の応酬の渦中にある武漢ウイルス研究所とはどんな機関なのか。

 武漢市中心から南におよそ30…

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