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2004年に三菱電機が導入した裁量労働制は、経営側にとって「残業代定額で労働者使い放題」だったため、同社の際限なく働かせるカルチャーのなかでは、過度な長時間労働を促進し、被害者を生み出す結果となった。2013年4月に入社し、当時2年目だった研究職の三菱電機社員(当時31歳)が、違法な長時間残業で2014年4月に適応障害を発症したとして、神奈川労働局藤沢労働基準監督署が2016年、労災認定した。ただでさえ労災が続出するカルチャーを持つ三菱電機に、「無限労働&定額働かせ放題」。まさに「気違いに刃物」で、最も与えてはいけない道具を与えてしまった必然の結果だった。
【Digest】
◇「キチガイに刃物」な裁量労働制をやっと廃止
◇年功序列的に月収60万円弱までいく
◇一時金は、D職12段階・T職10段階の個人評価で差がつく
◇一度は課長になれるが降格もアリ
◇基本年俸3700万+ボーナスで億が21人
◇派手さはないが薄く広い福利厚生
◇「キチガイに刃物」な裁量労働制をやっと廃止
この男性社員は、情報技術総合研究所(鎌倉市)で医療用半導体レーザーの研究開発などを担当。研究職は、裁量労働制の適用職場だった。入退室記録によると、約160時間もの残業をした月まであったという。労基法は週40時間労働と定めているため、残業だけで4週間分の労働に相当する。働いた時間に応じて残業代を支払わなくてよいからと、入社1年目が終わったばかりの若手に、丸々2人分の労働時間を課していたことになる。奴隷的な扱いだ。
同社はこの事件を受け、2018年春季の労使交渉の結果、裁量労働制を、2018年3月をもって廃止。新たに、「裁量月俸適用者」という、三菱電機独自の名称を無理やり捻り出し、労働時間実績を管理する対象に変更しつつ、みなし時間労働制は維持した。従来と何が違うのかというと、労組資料によれば、以下のとおりだ。
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月俸の25%相当というのは、週40時間労働で計算すると、概ね月あたり50時間程度である。これを超えて残業した実績があった場合にのみ、超過分も支払います、ということだ。
実際の運用では、電通事件や三菱電機社内の労災事件をきっかけに、2018年から残業時間が厳しく制限された結果、現状では一時的に18~19時に帰れるようになっているため、25%分を超えることは、ほぼなくなった。
ただ、企業カルチャーは簡単に変わるものではない。電通で新入社員の過労自殺が繰り返されてしまったように、時を経て元に戻る可能性は高い。現状では、企業側に対する罰則がほとんどないに等しく、法律に基づく歯止めが存在しないことも大きい(再犯となった電通過労死事件でも、罰金50万円だけ)。
◇年功序列的に月収60万円弱までいく
三菱電機のキャリアパスと報酬水準
三菱電機「賃金の支給基準」(労組資料より、2018年版)
三菱電機D職(30代)の給与明細
一時金の支給基準(労組資料より)。個人査定結果で数十万円の差はつく。事業本部業績でプラス加算がある。
30代D職の賞与。なぜか「郵便はがき」形式で、6月と12月に明細が配布され、はがきの裏面には同社製品の広告が印刷されている。
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