第186話 ナイトフィーバー

 別室へと招かれ、洗練されたフレンチ系統のコースの皿が次々に運ばれて来る。

 素材の持ち味を活かす工夫がされていて、どれも美味しい。

 特にステーキに掛けられたソースは絶品であった。


 そして、食後のハーブティーを飲みなら、情勢の話を始めるのであった。



「まず、何処までご存知か判らないので、ここ最近の話となりますが、この大陸には、クーデリア王国、イメルダ王国、マスティア王国があります。

 つい最近まではアルデータ王国と言う国があったのですが、去年滅んでしまいました。

 丁度この森も彼らにしてみれば、アルデータ王国の領土内と言う認識だったと筈です。」

 と告げると、ガッと目を見開き、「戦なのか?」と聞いて来た。


「あ、いえ、戦ではなく、神罰と言う事の様です。(俺がやったとは言えないしなぁ。女神様ごめんなさい)」


「神罰とな! アルデータ王国とは何をヤラかしたのだ?」


「ご存知の様にこの世界には、人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族が居りまして、ああ、魔族の存在を私は本日初めて知ったので、無視する訳では無いのですが――

 それで、他の3カ国では全くそんな風潮は無いのですが、このアルデータ王国だけは人族至上主義に凝り固まっていた様で、他種族への迫害が激しかった様で、お怒りになった女神様の神罰が堕ちた感じです。

 なので、現在この周囲には、殆ど誰も住んで居らず、街道とかも徐々に荒れてきましたね。」


「なるほど、人族至上主義か。ハハハハハ――

 いや、失敬。同じ様な事を先代がな。」


「ああ、そうだったね。魔族至上主義ですか? しかし、500年前の話ですよね? 既に人族の記憶からは抜けていると思いますよ。

 私は、魔族の存在すら知りませんでしたし、他からも聞いた記憶ないですからね。 そろそろ良い頃合いなんじゃないですかね?

 他種族や他国を侵略する意思が無い事を示せば、引き篭もる必要無いんじゃないかと。

 まあ国の扉を開くと、良い事も悪い事も起きるかと思いますが、貿易とかはした方が、人生が華やかになるんじゃないですかね?

 美味しい物も入って来るでしょうし。」

 と言いながら、自分の所を見ると、完全なステルス状態だなと内心苦笑するのだが。


「なるほど、そんな事になっておったとは、いや、全く知らなかった。」


「そう言えば、質問なのですが、どうやら普段はこの森一帯に結界を張られていると言う話をお聞きしたんですが、今は結界が切れているのでしょうか?

 我々は結界を破って入った訳ではないので、不思議に思っていたんですよ。」

 と疑問を尋ねてみると、魔王さんは苦い表情になりながらも説明してくれた。


「実はの、結界の魔道具に装着しておった魔力源が知らぬ間に尽きておっての。

 話では1000年程前に作られた物なんだが、当時でさえ貴重な魔力源であった故に、現在代替えの魔力供給源も無く、困ってしまっておる所なんだよ。」


「その魔力源とやらは、それほどレアの物なのですか? となると魔石とかじゃないのでしょうね?」


「うむ、ご存知かは知らないが、マギ鉱石と言う、魔石とは比べ物にならない程の魔力を持つ石じゃな。」


「え!マギ鉱石ですか!! どれ位の純度の物を使用されてたんですか? サイズはどれ位だったのでしょうか?」」


 意外な名前が出て来た事で、思わず前のめりになって聞いてみた。



「おや、もしやマギ鉱石をご存知か!? この時代、他国では手に入れる事が可能なのか?」

 と凄い勢いで聞いて来たのだ。


「いえ、残念ながらマギ鉱石の存在を知る人は少ない? いや、ほぼ居ないと思いますね。 何処の街でも色々散策しましたけど、魔石以外でそのような物は出回ってませんでしたから。」


 すると、見るからに落胆していた。


「ところで、先程も聞きましたがどれくらいの大きさのマギ鉱石が必要なのですか?」


「ああ、そうだったな。これ位のサイズなんだよ。」

 と直径20cmぐらいのサイズを手で作って見せてくれたのだった。


「ふむ、それは結界の発生源としてと言う事ですね?」


「ああ、そうだな……」

 と答えつつも心ここにあらずと言った放心状態に近い感じである。


 まあ、防衛と言うか、そう言う意味ではもしもの際に欲しい物なんだろうな。

 持ってるんだけどなぁ。どうしようか? あの巨大なブロックを見せるのは、拙いと思うし、どっかで20cmの球状に切り出して来れば良いのか?

 ふむ……。


「ちょっとだけ席を外して宜しいですかね? 10分ぐらい。」

 と俺が断りを入れると、頷いていた。


 そして、一度トイレを借りる感じで中に入り、ゲートで拠点の工房へと飛んだ。


 そして、詳細解析Ver.2.01の説明等を読み返しつつ、注意点を頭に入れ、ブロックから20cmの球を切り出したのだった。


「ふぅ~、これで一先ずはOKかな。」


 作業を終えると、ブロックと球を収納して誰にも会わずにそのままトイレの中に移動した。


 そして手を洗い、元の部屋へと入って行った。

 手には取りだしたマギ鉱石の球を持って――――


「ああ、お帰り。随分長かっ………  っ!!!!!」


 魔王様が、言葉途中で目を見開き、固まってしまったのだ。


「こんなサイズで良いでしょうかね?」

 と俺が聞くと、ピンクのアフロ頭がモゲそうな勢いでヘッドバンギングしながら「うぉーーー!!!」とシャウトしていた。



 もうそれからの魔王様は、凄かった。

 興奮具合が半端でなく、変な踊りまでご披露してくれていた。


 フフフ、まあこれだけ喜ばれると、悪い気はしないよね。


 その代わりと言ってはなんだけど、これを防衛用の結界以外には絶対に使わない事を約束して貰った。

 更にまた遊びに来ても良いかと聞いたら、


「ヘイヘイ!何を水臭い事を言うんだい、ブラザー! 俺達ぁ親友じゃないかぁー!」

 と親友に昇格してくれたのだった。



「さあ、今夜は朝までナイトフィーバーだyo!!」

 まあ、若干キャラの変貌っぷりに着いて行けない感じだったのだが……。


 昼飯直後と言うのに何やら街を上げてのお祭り騒ぎになったのだった。



 時々思うのだが、この俺の言語理解と言うスキル、優秀なんだけど、本当に翻訳が合ってるのかが微妙に気になるんだよね。

 まあ動作との違和感が無いから、多分俺が解釈している通りなんだろうけどね。

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