コロナ対策1兆円超、 底つく貯金懸念 不透明な財政見通し<都知事選>

2020年6月27日 13時15分

 東京都の2020年度予算規模は一般会計で7兆3500億円、特別会計などを合わせると15兆4500億円で、ノルウェー1国に匹敵する。だが新型コロナウイルス感染症対策で1兆円強を予算化し、財政面の懸念が浮上。貯金は底をつきかけ、3000億円以上ともされる東京五輪・パラリンピックの延期に伴う追加費用ものしかかる。今後の見通しは視界不良だ。(原昌志、松尾博史)

◆従来のように潤沢な税収は期待できず

 都は26日、都財政に関する有識者の会合を開いた。一橋大国際・公共政策研究部の辻琢也教授は「経済はかなり落ち込み、回復まで相当時間がかかるだろう。従来のような潤沢な税収は期待できない。我慢の財政運営をしていくことになる」と指摘した。

都財政について意見を述べた有識者ら(左側)=26日、東京都庁で

 都は新型コロナ対策で今年2月以降、1兆820億円を予算化。財源は主に貯金にあたる財政調整基金だ。不測の事態に備える自由度が高い基金だが、8500億円以上取り崩し、残高は一時、493億円まで落ち込んだ。その後、歳出の確定で807億円となったが、休業協力に応じた事業者への「感染拡大防止協力金」予算は一回あたり900億円以上。仮に感染第二波が来ても、あと1回分さえ払えない水準だ。
 財調残高だけでなく、より心配されるのが税収の落ち込み。都は企業からの法人税収を主体にしており、過去も景気の影響に左右されてきた。〇九年度にはリーマン・ショックで前年度比1兆円の減収となった。今回の「コロナショック」はリーマン以上の減収になるとの見方もある。多額の費用がかかるインフラや施設などハード系事業をはじめ、不急な政策は抜本的な見直しが迫られる。

◆バブル崩壊後の危機から再建に取り組む

 都はバブル経済崩壊後の1990年代に深刻な財政危機に陥った反省から財政再建に取り組んできた。一時は都債(借金)を1年で1兆円以上発行する状態だったが、近年は多くても2000億円台に抑制。都債残高は7兆6000億円規模から5兆円を切るまでになった。
 現在、借金する余力はあり、IT分野や環境施策などを目的とした特定目的基金も約7000億円規模で残っている。前年度に使い切らなかった予算も1400億円程度活用できる見込み。
 都の担当者は「かつてより体力はある。すぐに首が回らなくなるようなことにはならない」とするが、庁内では悲観的な声も漏れる。「どれだけ長引くか。独自の政策など何もできなくなってしまう」

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