障害者控除とは?所得税・住民税の手続きや実際にいくら戻るかの計算方法などを説明します

2019/09/24
障害者控除とは、働いている本人または同じ家計で生活している配偶者や扶養親族に障害がある場合に受けることが出来る税制上の制度です。生活や仕事に障害のある人に障害のない人と同じ税負担がかかると、障害のある人の負担が相対的に重くなってしまう可能性があるため、一定額が所得から控除されるようになっています。この記事では、障害者控除の内容や対象者、申請方法について解説し、具体的な計算方法なども紹介します。

目次

  1. 障害者控除とは
  2. 障害者控除の控除される金額は?
  3. 障害者控除でいくら戻る?
  4. 障害者控除の対象者の要件は?
  5. 所得税・住民税の障害者控除の手続き
  6. 相続税の障害者控除
  7. まとめ
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障害者控除とは


課税の対象となる所得(収入から必要経費などを引いた額)を計算するときに、一定額を差し引くという税制上の制度を、所得控除といいます。納税者のさまざまな事情を考慮し、税負担を軽減することが目的です。

所得控除の代表的なものには配偶者控除や扶養控除、医療費控除などがありますが、障害者控除もこの所得控除のうちのひとつです。障害のある人本人や、配偶者・扶養親族に障害がある場合、障害者控除の対象となり、所得金額から一定額が控除されます。

また、障害者控除の制度は、所得課税に対するもの(所得税と住民税)のほかに、相続税にも設けられています。


障害者控除の控除される金額は?


2019年9月現在、所得税・住民税における障害者控除の額は、障害の程度などによって以下のように区分されています。


特に障害が重い場合が「特別障害者」にあたり、控除額が多く設定されています。また、同じ家計で生活している配偶者や扶養親族と同居している特別障害者は「同居特別障害者」にあたり、さらに控除額が多くなります。


障害者控除でいくら戻る?


障害者控除が適用された場合、控除がなかった場合に比べて納める税額はどの程度異なるのでしょうか。世帯により控除額も税率もさまざまなため単純に述べることはできませんが、控除額と税率がわかれば、おおよその減免額を計算することができます。ここでは例として以下のような世帯をモデル(2019年度の場合)に考えてみます。

【モデルAさん】

  • 本人が障害者(精神障害者保健福祉手帳3級)の1人世帯
  • 年収300万円(給与のみ)

(1)税率を確認

所得税は累進課税(所得が高いほど税率が上がる)になっています。Aさんの場合、給与所得控除額108万円、基礎控除額38万円を差し引いた154万円が課税所得金額です。



課税所得金額が195万円以下の場合、所得税率は5%です。


住民税は一律10%です(ただし、分離して税率を計算する分離課税の対象となる所得がある場合や自治体によっては税率が異なることがあります)。

(2)控除額に税率をかける

次に、控除額に税率をかければ、減免される税額がわかります。このモデルの場合、納税者は「障害者」の区分にあたり、所得税で27万円、住民税で26万円が控除されます。 したがって、

所得税では27万×5%=1万3500円

住民税では26万×10%=2万6000円

が減免されることになります。


障害者控除の対象者の要件は?


障害者控除の対象者について詳しく見ると、おおむね以下の要件に当てはまる場合が障害者控除の対象となります。


実際の詳しい要件は国税庁のホームページをご覧ください。

参考文献
国税庁「障害者控除」


所得税・住民税の障害者控除の手続き


障害者控除は、納税者が自ら申請しない限り、受けることができません。ここでは、所得税・住民税における障害者控除の申請方法について説明します。

会社員の場合

勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、対象者の障害の状況を記入します。年末調整の時期に記入するのが一般的です。また、下記の「個人事業主の場合」と同様に、確定申告によって申請することも可能です。

個人事業主の場合

確定申告にて申請します。確定申告書に、対象者の氏名および控除額など必要事項を明記します。
なお、いずれの場合にも、障害者手帳などの書類を添付する義務はありません。ただし、税務署が役所に対し障害者控除の対象かどうか確認するため、障害者手帳の種類と番号などを記入する必要はあります。

相続税の障害者控除


障害者の生活費などに配慮し、相続税にも障害者控除の制度が設けられています。相続人が障害者かつ法定相続人であるときは、その人が85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者のときは20万円)を相続税額から控除することができます。

申請は、相続税の申請の際に「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」という書類を添えることで行います。この際、障害者手帳なども必要となります。

参考文献
国税庁「障害者の税額控除」


まとめ


出典:amanaimages

税金のこととなると苦手意識を抱える人もいますが、申請方法自体はそれほど難しくはありません。障害者控除の減免額は少なくなく、また毎年のことなので、生活における経済的な不安を解消することにも役立ちます。手続きなど分からないことがある場合は、国税庁の相談窓口や近くの税務署に問い合わせてみてください。

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参考文献
「国税庁」
監修 : クリフィックス税理士法人
2003年1月設立、社員・職員数約100名。
クライアントは主に上場企業とそのグループ会社、上場予定のベンチャー企業(業種は大手金融機関、総合商社、ITなど多岐に及ぶ。)。税務・会計顧問業務のほか、M&A、株式公開支援、連結納税コンサルティングなどのサービスを提供している。
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