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「新型コロナは集団免疫ができない」という新説と自衛隊の防護体制

 上記の論文により、「新型コロナウイルスに罹患してできる免疫(抗体)は長くもたない、つまり集団免疫に期待することはできないということが示されているのです。
 さらに専門的な話をしますと、「一人の患者が何人に感染させるのか」を表すR0という指標があります。R0=1未満であれば感染者は減っていきますから、病気は勝手に収束していきます。集団免疫を成立させるための方程式はH=(1-1/R0)×100%です。新型コロナウイルスのR0=1.5とすると、理論上は33%が抗体を獲得すれば感染は拡がらなくなることになります。(ただし、一度獲得した免疫が長く続けばという話ですが……)。  そこで、その抗体を獲得するためには、何人が感染しなければならないか。日本の総人口を1億2500万人とすると、4000万人が感染する必要があります。4000万人が感染すると死亡率1%だとしても40万人が死んでしまうことになります。繰り返しますが「集団免疫を成立させるためには(理論上)40万人の死亡者が必要」なのです。しかも、終生免疫でないとこの理論は成り立ちません。

結局、地道な感染対策が一番の近道……

 先にも述べましたが、現時点では自衛隊が行ってきた「どんな場合でも最大級の防護体制でこの病気に対処する」という地道なやり方が正しかったということです。  これから気温が上がります。防護具を着用すると暑さで一層大変だと思います。できる限り冷房を効かせるなど対応を考えていただき、一度終息した病気だからと気を緩めることなく対処していただきたいと思います。  そして、自衛隊の持つ統率の取れた医療体制がこのまま続けられるよう、国にはさらなる支援をお願いしたいと思います。それは将来に必ず発生するであろう、また別の新興感染症への対策にも繋がります。自衛隊の医官や衛生職員の防護具や消耗品、医薬品の補充は現行の予算内では収まらないはずですから、先回りして国が予算を付けてほしいものです。何より医療スタッフが健康でなければ困ります。長期戦の準備とバックアップをしっかりとお願いしておきたいと思います。国防ジャーナリスト。関西外語大卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動を開始。2009年、ブログ「キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)」を開設し注目を集める。2014年からは自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」を主宰。自衛隊が抱えるさまざまな問題を国会に上げる地道な活動を行っている。月刊正論や月刊WiLL等のオピニオン誌にも寄稿。日刊SPA!の本連載で問題提起した基地内のトイレットペーパーの「自費負担問題」は国会でも取り上げられた。『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)を上梓

自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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